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うにゅほとの生活を書き連ねた日記が十四年分たまった(2025年11月後半)

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
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685 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:50:51 ID:TwK1MHwU0

2025年11月16日(日)

「きたよー!」
「おう、いらっしゃい」
病室に駆け込んできたうにゅほを全身で受け止める。
両親が根負けしたらしく、うにゅほは毎日お見舞いに来られることになった。
行きはタクシー、帰りは両親のどちらかが迎えに来るのだと言う。
さすがはうにゅほだ。
普段はわがままを言わない良い子だから、両親も止めるに止められなかったのだろうな。
「うへー……」
うにゅほはニコニコだ。
「やっぱ、家だと寂しいか?」
「さみしい……」
「そっか」
正直、嬉しい。
「◯◯も、さみしい?」
「そりゃ寂しいさ。来てくれて嬉しいし」
「ふへ」
「病室はだいぶ快適にしたけどな……」
「まえのにゅういんのときより、すごい」
「入院中にデュアルディスプレイにするアホって、そんなにいない気がする」
「あほなんだ」
「アホだとは思う……」
だが、もう、マルチディスプレイでなければ満足できない体になってしまっているのだ。
一画面だと狭いこと狭いこと。
「早く帰りたいよ」
「わたしも、はやくかえってきてほしい……」
「あと十日くらいか」
「あと……」
うにゅほが目を伏せる。
「ながい」
「でも、ほら、毎日会いに来てくれるんだろ?」
「そだけど……」
「帰ったら、お詫びにサービスするからさ」
「!」
うにゅほが目をまるくし、嬉しそうに微笑む。
「どんなさーびすかなー」
「乞うご期待ってことで」
一時間少々の逢瀬ののち、うにゅほは家に帰っていった。
明日も楽しみだ。







686 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:51:22 ID:TwK1MHwU0

2025年11月17日(月)

今日も今日とてうにゅほがお見舞いに来ている。
有言実行、本当に毎日来る気なのだろう。
うにゅほの財布が心配になるが、考えてみたら、ほとんど使う機会がない。
たまにはいいのかもしれない。
「♪~」
機嫌良さそうに、うにゅほが左腕に抱き着く。
「あ、××。右側にしない?」
「?」
うにゅほが俺の腕を離したので、入院着をまくって見せる。
「わ」
「留置針が入ってるんだよ」
「りゅうちばり……」
「何度も血を抜いたり点滴したりするために、刺しっぱなしにしとくんだ。見たことはあるだろ」
「あ、(弟)もしてた」
「それ」
「こわいね……」
腕を変に曲げたりしたら、筋肉や他の血管を傷つけてしまいそうな気がする。
だが、それは誤解なのだ。
「看護師さんに聞いたんだけど、これ、入ってるのは針じゃないんだって」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「針をカテーテルと一緒に刺して、カテーテルだけ残して抜くんだよ。だから、針が入ってるわけじゃないらしい」
「へえー!」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「あたまいい」
「俺もそう思った」
そりゃ、針入れっぱなしは危ないもんな。
一時間ほど話したあと、うにゅほは寂しげに帰っていった。
すこしは俺のいない部屋に慣れただろうか。





687 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:52:09 ID:TwK1MHwU0

2025年11月18日(火)

「──…………」
「──……」
雪が降っていた。
窓から見える駐車場が、おしろいを振ったかのように白く染め上げられている。
実家のほうは、さらに雪が深いらしい。
「……どうしてだろうな」
「──…………」
「どうして、あいつなんだろうな」
「──…………」
弟の病状が悪化した。
今すぐにどうこう、ではないが、だからと言って楽観的になれるはずもない。
わかっている。
弟だけでは、ない。
入院していれば、よくわかる。
俺たちの目に見えない場所に、病気は、不幸は、いくらでも転がっている。
ただ、目につかないだけなのだ。
うにゅほは泣いていなかった。
必死に泣くのを我慢していた。
「こら」
抱き着くうにゅほの頭を撫でる。
「我慢しなくていいから」
このまま行けば、うにゅほは、部屋でひとりで泣くだろう。
それは嫌だった。
「……う、……ああ」
入院着の胸元が熱くなっていく。
涙が染み込んでいく。
俺もまた、つられて泣いた。
泣き終えると、すこしだけすっきりしていた。






688 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:52:39 ID:TwK1MHwU0

2025年11月19日(水)

今日も今日とてお見舞いに来たうにゅほを、病室へと招き入れる。
「(弟)、どうしてる?」
「ふつうにしてる……」
「……そっか」
それなら大丈夫、とはとても思えない。
「××は大丈夫か?」
「──…………」
うにゅほが目を伏せる。
「わたしは、ぱそこんで、ずっとゆーちゅーぶみてる……」
「そっか……」
弟は、部屋で一人で過ごしたいタイプなので、心配だからと構い過ぎるのも気が引けるのだろう。
「俺の入院も、タイミング悪かったな」
必要な入院とは言え、もっと早いか、もっと遅くてもよかった気がする。
だが、どうしようもない。
知らなかったのだから。
「はァ……」
「はー……」
溜め息が同時に漏れる。
「いろんな意味で、早く帰りたいよ。昨日からずっと落ち着かない」
「うん……」
「でも、またすぐに入院だからな。今度は手術のために」
「……うん……」
ぎゅ。
うにゅほが、入院着の袖を握る。
「俺のほうは大丈夫だよ。簡単な手術だし、三時間で終わる」
「しってる、けど」
「……そうだよな。それでも心配だよな」
「うん……」
悪いことが重なるのが、怖い。
その気持ちは、痛いほどわかった。
「……一緒に動画見る?」
「みる……」
面会時間いっぱいを使って、うにゅほと日常を演じた。
うにゅほのケアも必要だ。






689 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:53:12 ID:TwK1MHwU0

2025年11月20日(木)

「きたよ」
「ああ、いらっしゃい」
立ってうにゅほを出迎える。
ぽす、と、うにゅほが胸に飛び込んできた。
「んー……」
すんすん。
うにゅほが残念そうな表情を浮かべた。
「◯◯、おふろはいってる……」
「さっきな」
「はやくきたらよかった」
「早く来ても、面会時間は三時からだぞ」
「いっかいの、ほーるのとこに、きてくれたら」
「どんだけ汗くさいのが嗅ぎたかったんだよ……」
「うへー」
人の多いホールで抱き着かれるのは、あまりに目立つので勘弁してほしいし。
でも、うにゅほって、そういうの気にしないんだよな。
「検査に呼ばれるかもしれないから、なるべく病室にはいないと」
「ざんねん」
「……俺と一緒にいる時間、長くしようとした?」
「した」
実にしたたかである。
「家はどうだ?」
「──…………」
うにゅほが、一瞬目を伏せる。
「いまは、ふつう」
「そっか」
うにゅほの頭を、ぽんと撫でる。
「なんかして遊ぼう」
「──うん!」
ここにいるときくらい、現実を忘れてほしい。
俺は、そう思っている。





690 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:53:36 ID:TwK1MHwU0

2025年11月21日(金)

今日も今日とて、うにゅほがやってきた。
「ただいまー」
「家じゃないぞ」
「うへー……」
立ち上がり、うにゅほを出迎える。
「つ」
そのとき、思わず声が漏れた。
「どしたの?」
「ああ、左足の小指打ったんだよ。思いっきり……」
「わ」
うにゅほが膝をつき、裸足の左足にそっと触れる。
「あかい!」
「ガッツリ行ったからな……」
「てあて、してもらお」
「いやー……」
言えばしてくれるだろうが、少々恥ずかしい。
「痛いは痛いけど、そのうち治まるしな。気にしない気にしない」
「でも、あかい……」
「治る治る」
「──…………」
うにゅほが、左足の小指を優しく撫でてくれる。
「なら、なでなでしとくね」
「ありがたいけど、体勢変えようぜ」
「うん。なら、◯◯、ベッドのってね」
「はいはい」
ベッドに横になると、うにゅほが俺の足をそっとさすってくれた。
「いたくない、いたくない」
手当てという言葉の通り、うにゅほに触れられていると痛みが治まっていくから不思議だ。
これ、プラシーボ効果なのだろうか。
誰か研究してくれませんか。





691 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:54:04 ID:TwK1MHwU0

2025年11月22日(土)

今日も欠かさず、うにゅほがお見舞いにやってきた。
看護師さんたちに何を思われているのか、少々怖いが、仕方がない。
俺の選んだ道である。
「そだ。たいいん、いつだっけ」
「あー。実はまだわからないんだよな……」
「わかんないの?」
「26日にいちばん大きな検査があるから、それが終わったら、らしい。終わったその日に帰れるのか、次の日に帰れるのか、そこはわかんないけど」
「そか……」
「まあ、一日でも早くって感じでもないから、俺は気楽にしてるけどな」
「ぱそこん、いえみたいだもんね」
「しっかりノートPCがあった上で、即席デュアルディスプレイにして、家の環境を可能な限り再現、特別個室で寝る時間も自由、××も毎日来てくれるとなれば、不自由は最低限だからな」
「ここまでするひと、いなそう」
「だろうな……」
逆に、ここまでしなければ、入院生活がつらすぎるとも言える。
「いずれにしても、あと一週間もないんだな。しばらくしてからまた入院するけど」
「はやくかえってきて……」
先にうにゅほが限界を迎えそうだ。
頑張って早く退院できるのなら頑張りたいが、そうではない。
うにゅほが帰ったあと、運動不足の体をほぐすために、ベッドの上でストレッチをするのだった。





692 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:54:23 ID:TwK1MHwU0

2025年11月23日(日)

左腕を軽く掻く。
なかば無意識の行動を、お見舞いに来ていたうにゅほが見咎めた。
「うで、かゆいの?」
「ああ……」
入院着を軽くまくり、うにゅほに患部を見せる。
線状に赤いぽつぽつができていた。
「わ」
「たぶん、あせもだと思うんだけど」
「おふろ、まいにちはいれないもんね……」
「入ろうと思えば入れるけど、ちょっと面倒でな」
「はいれるんだ」
「××が毎日来てくれるから、下着には事欠かないし」
「なら、はいったほういいきーする……」
「んー……」
ぽりぽり。
「……入るか」
「はいろ」
「わかった。××の言うこと、正しいからな」
「うへー」
「悪いけど、パンツ持って帰って洗ってくれ。で、来るときついでに頼むよ」
「まかして」
「あせもがあるときは、清潔にしないとな」
うにゅほが俺のために言うことは、たいてい正しい。
素直に聞いておくべきだ。
「そう言えば、タクシー慣れた?」
「うん、なれた。でも……」
「でも?」
「こどもにまちがわれる」
「あー……」
わかる。
「べつにいいけど……」
「まあ、若く見えるのはいいことだろ」
「うーん」
多少、思うことがなくもないらしい。
まあ、可愛いのだから、いいのだ。
可愛いは正義である。





693 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:54:46 ID:TwK1MHwU0

2025年11月24日(月)

「腰いてェー……」
とんとん、と腰を叩く。
「ベッドのせい?」
「ベッドより椅子だな。やっぱ、自室のチェアとは相性がぜんぜん違うから」
「それはそうかも……」
「ま、こんなときのために、わざわざ低周波治療器を持ち込んでるんだ。ありがとうオムロン」
ドラムバッグから低周波治療器を取り出す。
「あ、わたしはったげるね」
「頼むー」
ベッドでうつ伏せになり、入院着をまくり上げる。
「──…………」
うにゅほが、すこし動きを止めた。
「どした?」
「わたし、まっさーじしよっか」
「マッサージ……」
うにゅほのふわふわマッサージは、ハッキリ言って効かない。
効かないのだが、心地は良い。
一瞬迷ったが、
「いや、駄目駄目駄目!」
「えー」
「看護師さんに覗かれたら、俺、毎日お見舞いに来させてる女の子にマッサージまでさせてるオッサンになるだろ!」
「じじつ」
「事実だから問題なんだよ……」
「そか……」
「マッサージは退院してからお願いします」
「はい」
ぺたぺたとパッドが腰に貼られる。
低周波治療器の本体を操作すると、腰の筋肉が震え始めた。
「あー……」
「きもち?」
「痛気持ちいい」
「◯◯、よく、じゅうよんにできるね……」
「強くないと効いた気がしないんだよ」
なお、最大の15はさすがに痛すぎて耐えられない。
「わたし、ごーくらい」
「撫でられてるようなもんじゃん……」
「それがいいの」
そんな普通の会話をしながら、今日のお見舞いの時間は過ぎていった。





694 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:55:06 ID:TwK1MHwU0

2025年11月25日(火)

「♪っ」
俺の左腕を抱き締めたうにゅほが、肩口に頬ずりをする。
「機嫌いいなあ」
「だって、あしたたいいん」
「ようやくか……」
長いような、短かったような。
「よる、ひとりだと、よくないことばっかかんがえちゃう……」
「……そうだな」
よりにもよってのタイミングで入院してしまったものだ。
「でも、来月の五日には──」
「かんがえない!」
また入院と言おうとして、うにゅほに遮られた。
「あした、たのしみ」
「そっか」
あえて未来に目を向けない。
もしかすると、賢い生き方なのかもしれなかった。
「退院したら、何したい?」
うにゅほが即答する。
「らぶらぶ」
「ラブラブか」
「うん」
「じゃあ、ラブラブしような」
「うへー……」
具体性はないが、だいたいはわかる。
明日は、うにゅほがぺったりくっついて、寝るまで離れなさそうだ。
すこし大変そうだが、嬉しいのは俺も同じである。
再入院までの短い期間、うにゅほとたっぷりラブラブしよう。





695 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:55:26 ID:TwK1MHwU0

2025年11月26日(水)

「フー……」
自室の床に荷物を下ろし、伸びをする。
「帰ってきたー!」
「おかえり!」
父親と共に俺を迎えに来てくれたうにゅほが、真正面から俺を抱き締めた。
「◯◯だー……」
「◯◯だぞ」
「うへえー……」
すりすり。
まるで自分の匂いをつける仔猫のように、うにゅほが俺に擦り寄る。
「二週間、か。お互い頑張ったな」
「うん……!」
12月5日には、今度は手術のために再入院しなければならない。
僅かな期間とは言え、自室は本当に落ち着く。
「つーか、ディスプレイでっか!」
「のーとぱそこん、ちいちゃいもんね」
電源入れっぱなしのPCを待機画面から戻し、愛用のパソコンチェアに座る。
うにゅほが即座に膝の上に腰掛け、嬉しそうにこちらを振り返った。
その頭を軽く撫で、改めて二枚のディスプレイへと向き直る。
「でけえー……」
「そんなに?」
「軽くビビるくらいでかい。文字読みやすッ!」
「たいへんだったね……」
「本当にな……」
離れることで、初めて、自分の置かれている環境の素晴らしさに気付くことができる。
いいことだ。
まあ、二週間の入院でしか得られない知見だとすれば、さして気付きたくもないが。
「ね、ね、なにする? なにみる?」
「××の好きなのでいいぞ」
「じゃあね、うーとね、あぽろちょこをねじにするやつみよ」
「なにそれ面白そう」
「おもしろいよ!」
この二週間でうにゅほが見つけた面白動画を一緒に見ながら、ラブラブな時間を過ごすのだった。
まったく、家は最高だぜ。





696 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:55:48 ID:TwK1MHwU0

2025年11月27日(木)

「──……んが」
ふと、眩しさに目を覚ます。
レースカーテン越しに射し込んだ陽光が、目蓋を透かしていたらしい。
のそりと身を起こすと、すこし腰が痛かった。
「おはよう……」
「あ、おはよー」
パソコンチェアに腰掛けてYouTubeを見ていたうにゅほが、ヘッドホンを外してこちらに微笑みかけた。
「すーごいねてた」
「寝てたな……」
「びょういん、ねれなかったの?」
「まあ」
まだ動かない頭で入院中のことを思い出す。
「消灯と同時に寝れる人は、睡眠に関しては問題ないと思う」
「でも、◯◯……」
「ああ。俺は寝れないから、どうしたって昼間に睡眠時間を確保する必要がある」
「うん」
「でも、入院中の昼間って、個室でもひっきりなしに誰か来るんだよ……」
「かんごしさん?」
「あとは清掃の人とか、回診の先生とか。そこに検査も入るから、昼間に寝るのはけっこう難しい」
「そだったんだ……」
「起こされたかと思ったら、今日の当直は私ですって言われたときがいちばんだったな。知らんし……」
「たいへんだったんだ」
「大変でした。それに比べたら家は天国だよ。××、俺のこと起こさないし」
「おこさないよー……」
「その当たり前がありがたいんだよ」
「そか」
うにゅほが立ち上がり、パソコンチェアの座面をぽんぽんと叩く。
チェアに腰掛けると、当然、膝の上に乗ってきた。
「ねむくなったら、いってね」
「ああ」
だが、眠いと告げる前に、俺の意識はうにゅほの体温に刈り取られたのだった。
寝落ちには抗いがたい気持ちよさがある。






697 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:56:25 ID:TwK1MHwU0

2025年11月28日(金)

姿見を覗き込む。
「うお……」
寝癖が爆発していた。
「なかなかのもんだな、これは」
ここまで来ると直す気にすらならない。
用事があればシャワーを浴びてでも直すが、今日は外出の予定もないし。
「◯◯」
「ん?」
にまりと微笑みを浮かべたうにゅほが、背後から俺の名を呼んだ。
「それどこじゃないよ」
「……?」
「うしろのが、すごい」
「後ろ……」
後頭部に手をやる。
「おおう」
たしかにすごい。
すごいことはわかるのだが、逆に言えば、すごいことしかわからない。
「どうなってる?」
「ちょっとまってね」
うにゅほがiPhoneを取り出し、俺の後頭部を撮影する。
「こんなかんじ」
写真に写し出されていた髪型は、まるでドラゴンボールの孫悟空のようだった。
「やってんなあ……」
「やってんね……」
「まあ、今日はこれでいいや。夕方にはシャワー浴びるし、そのとき直るだろ」
「なおさないんだ」
「めんどい」
「たしかに、なおらなそう……」
うにゅほが手を伸ばし、俺の後頭部に触れる。
「つんつん」
「触って楽しいか?」
「たのしい」
「ならいいけど……」
しばらくのあいだ、うにゅほのおもちゃにされる俺の寝癖だった。






698 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:56:44 ID:TwK1MHwU0

2025年11月29日(土)

「いいにくのひ」
「いい肉の日だなあ……」
だからなんだ、ということもないが。
ふと、膝の上のうにゅほが振り返る。
「あのね」
「ああ」
「じんこうえんみりょう、ってないの?」
「人工塩味料か……」
言われてみれば、ない。
「俺の知る限りはないなあ。少なくとも、一般的にはない」
「なんでだろ」
「甘味料はいくらでもあるのにな」
「うん……」
「チャッピー先生に聞いてみるか」
「ちゃっぴー?」
「ChatGPT」
「かわいくなってる」
「チャッピーのほうが覚えやすいだろ」
「うん。わたし、じーぴーてぃーか、じーてぃーぴーか、わかんなくなっちゃう」
「まあ、わかる」
最近5.1に進化したChatGPTに尋ねてみる。
「ほうほう」
「よんで」
「自分で読みなさいよ……」
「むつかしい」
「じゃあ、××でもわかるように簡単に説明してもらうから」
「はい」
小学生にもわかるように要約してもらった。
小学生扱いされていることに、うにゅほは疑問を感じないらしい。
「なるほどー……」
「塩化カリウムとか、ないことはないんだな。ただ、甘味料ほど綺麗に置き換えられないから、人工塩味料って呼ばれ方はしない」
「あまさは、かんたんなんだね」
「しょっぱさは難しいと」
「べんきょうになる……」
「ほんと、AIの進化はすごいな。四、五年前にはなかったんだぞ、これ」
「たしかに!」
「スッと現れて、あっと言う間にここまで進化した。どこまで行くんだか」
「こわいかも」
「AIが人類を滅ぼしたりはしないさ。そういうものじゃない」
「そうなのかな」
「そうだぞ」
「そか」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
まあ、AIを悪用した人類が自滅する可能性は十分あるのだが。
未来は明るいのか、もしくは暗いのか。
人類は岐路に立たされている。





699 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:57:16 ID:TwK1MHwU0

2025年11月30日(日)

「11月30日だな」
うにゅほが小首をかしげる。
「?」
「11月30日だなって」
「そだね」
「気付いてるか?」
「なにに?」
「今年が、もう、あと一ヶ月だということに……」
「あー」
うんうんと頷く。
「もうかー……」
「もうだよ」
「はやいねえ」
「早いよ」
「はやい」
「ほんと、時間が止まればいいのにな」
「──…………」
うにゅほが、切なげに目を伏せる。
僅かな沈黙を、俺が破った。
「そして、5日はまた俺が入院するわけだけど」
「おもいださせないでー……!」
「8日には手術なわけだけど」
「うー……」
うにゅほが遠慮がちに尋ねる。
「……◯◯、しじつ、こわくないの?」
「今はまだ怖くないかな。近付けばまた違うと思う」
「そなんだ」
「ICL手術のときも似たような感じだったし……」
「あいしーえると、どっちこわい?」
「ICLのほうが怖い。確実に」
「めーだもんね……」
「今回は全身麻酔だから、寝てれば終わるし。楽なもんだ」
「ならよかったけど……」
「手術当日はお見舞いダメだと思うから、そのつもりでな」
「えー!」
「わかんないけどダメだろ、たぶん……」
「きいてみて!」
「わかったわかった」
今回の入院は、手術がある代わりに比較的短い。
二週間の入院を乗り越えた身には、あっと言う間に感じられることだろう。
たぶんきっと恐らく。





700 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/12/01(月) 22:57:57 ID:TwK1MHwU0

以上、十四年め 前半でした

引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
 



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