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うにゅほとの生活を書き連ねた日記が十三年と十一ヶ月半分たまった(2025年11月前半)

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



669 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:23:41 ID:UKKyf4As0

2025年11月1日(土)

ふと気付く。
「お、十一月だ」
「じゅういちがつだー……」
「テンション低いな」
「◯◯、にゅういんするつき……」
「ああ……」
俺も相当嫌なのだが、うにゅほはそれ以上らしい。
「思えば、あと二週間もないのか」
「うう」
「特別個室、また取れればいいけど……」
「うん……」
「でも、難しいかもって言われたんだよな」
「そなの?」
「どーすっかなー……」
「だって、◯◯、ねれないから」
「そう。大部屋だと死ねるのよ。消灯って、九時とか十時だぞ」
「◯◯、ねるの、よじとか、ごじとか」
「七時間とか八時間、眠れずに悶々と……」
「うう……」
俺への共感性が著しく高いうにゅほが、苦しげな表情を浮かべる。
「わたしと、らいんする……?」
「ずっと?」
「ずっと」
「さすがに言うことなくなるだろ……」
「そかな」
「家でだって、ずっとは話さないだろ」
「ずっとは、うん」
「まあ、くっついてるのはずっとくっついてるけど」
そう口にし、膝の上のうにゅほを抱き締める。
「ついてきたい……」
「……病室でずっとくっついてるのか」
「うん」
「大部屋で……?」
「うん」
「さすがに恥ずかしいんだが……」
「せにはらはかえられない」
「そうなんだ……」
「うん」
覚悟決まってるなあ。
まあ、実際にその状況になったとしたら、想像の通りにはできないだろうけれど。
そもそも俺が無理だし。







670 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:24:12 ID:UKKyf4As0

2025年11月2日(日)

動画制作用の素材を漁っていると、Adobe Stockにちょうどいいものを見つけた。
「これいいじゃん」
「どれ?」
「これこれ」
マウスカーソルをくるくる回す。
「ほー」
「ニキシー管の素材。使えそう」
「にきしーかんっていうんだ」
「カッコいいだろ」
「うん、かっこいい」
「30日間の無料体験版があるみたいだから、サッと入ってパッとダウンロードしてサッと解約しちゃおう」
手早くクレジットカードの入力などを済ませ、目的の画像ファイルを入手する。
「よし」
「かいやくだ」
「解約解約。月に三千円も払ってられるか」
「けっこうたかい……」
しかし、
「──あれ?」
膝の上のうにゅほが、iPadから顔を上げる。
「?」
「解約できない……」
「え」
「なんかエラーが出る」
「やめれないの……?」
「待て。ブラウザ変えて試してみる」
Chrome、Brave、Edge、Firefox、すべてのブラウザでエラーが出た。
この事実が意味するのは、Adobe側の問題だということだ。
「……無料で誘って加入させて解約はさせないって、ギリギリ犯罪じゃないか?」
「やめれないの……?」
「いや、明日か明後日にでもサポートに連絡入れる。解約できないわけがない」
「そか」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「ただなあ……」
「?」
「ネット詳しくない人がここで諦めて、毎月永遠に搾取され続ける。実在しそうじゃないか?」
「しそうすぎる……」
「Adobeくんさあ……」
なんらかの法に引っ掛かるぞ。
とにかく、無料体験版の期間が終わるまでに、なんとしてでも解約しなければ。






671 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:24:37 ID:UKKyf4As0

2025年11月3日(月)

母親のiPhoneの調子が悪いらしく、機種変更のためにソフトバンクへ行くと言う。
ひとりでは寂しかったのか、母親がうにゅほを連れて行ったのが、おおよそ一時間前のことだった。
唐突にiPhoneが鳴り響く。
「──っと」
確認すると、うにゅほだった。
慌てて出る。
「どした?」
『あのね、◯◯。うち、ひかりかいせんって、どこ?』
「あー……」
察する。
「……ソフトバンク光に変えろって?」
『!』
「わかるよ、そんくらい」
前にも似たようなセールストークされたことあるし。
『なんか、なにもしなくてもかえれて、つきよんせんえんくらいやすくなるって……』
「俺、なんで××が電話してきたかも当てられるぞ」
『?』
「母さんじゃ俺を説得できないから、頼まれたんだろ」
『すごい』
「auひかりに変えたとき、すンげえ手間が発生して、それ全部俺がやる羽目になったんだよ。××まだいないときだけど」
『そなんだ……』
「ああ」
『でも、てまかからないし、やすくなるって』
「手間掛からないなんて、あり得ない。必ず何かの手間は発生するし、それはすべて俺が被ることになる」
『あー……』
「それに、月四千円安くなるってのも怪しい。そもそもauひかりだって、せいぜい月五千円くらいだろ」
『あ』
「月千円になると思う?」
『おもわない……』
「たぶん、キャッシュバックとか、条件付きで一年限定とかだよ。トータルで安くなるかは怪しいもんだ」
『なるほどー……』
「いいことだけ言ってんだよ。俺、今から行って、条件全部確認してやろうか?」
数秒ほど時間が空いて、
『いいってー』
「母さんが?」
『うん』
会話が聞こえていたらしい。
店員、そこにいたら、居心地悪かっただろうな。
「セールストークには気をつけろって言っといて」
『わかった』
通話が切れる。
読者諸兄も、上手い話にはご注意を。






672 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:25:00 ID:UKKyf4As0

2025年11月4日(火)

「──……んが」
自分のベッドで目を覚ます。
あくびを噛み殺しながらベッドを下り、自室の書斎側へと向かう。
「おはよう」
「おはよ」
顔も洗わぬうちからパソコンチェアに腰掛け、マウスに手を伸ばす。
「……ん?」
何かがおかしい。
なんだろう。
あって当然のものがないような──
「──って、キーボードがないんだけど!」
「きづいた」
「××の仕業?」
ふるふると、うにゅほが首を横に振る。
「たぶん、◯◯……」
「俺?」
「うん。わたし、きーぼーど、どこにあるかしってる」
「どこさ」
「◯◯のベッドの、まくらもと」
「──…………」
寝室側へ戻り、枕元を調べる。
あった。
TURTLE BEACHのVulcan II TKL Proが、枕元にぽつんと置かれていた。
記憶を辿る。
「……なんか、自分で置いた気がする」
「わたしじゃないし……」
「寝ぼけてたのかな」
「わかんない」
ただ、こんな寝ぼけ方は初めてだ。
酒は飲んでいないし、極限まで起きていたわけでもない。
マイスリーを服薬したわけでもない。
「まあ、いいか……」
「いいの?」
「病院案件じゃないだろ」
「そだけど」
「それより、Adobe Stockの解約しないと。昨日が祝日だから、サポート今日からだろ」
すこし心配そうなうにゅほを横目に、キーボードを繋いでAdobe Stockのサイトにアクセスする。
物は試しと普通に解約してみたら、なんかできた。
一時的なものだったらしい。
無事に解約できて、ほっと胸を撫で下ろすのだった。






673 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:25:20 ID:UKKyf4As0

2025年11月5日(水)

今日も今日とて病院であった。
ただ、予約が午後三時だったため、時間や眠気に余裕がある。
「うし、行くか」
「いこ」
うにゅほにプレゼントしてもらった財布を尻ポケットに仕舞い込み、家を出る。
ちなみに、うにゅほはイヤリングをしていない。
落とすのが怖いらしく、家でしか着けてくれないのだ。
「──あ、きゅうきゅうしゃだ」
「避けないとな」
「うん」
後ろから迫る救急車を、車線変更して避ける。
「びょうきかなあ……」
「事故かもよ」
「こわいね」
「安全運転しないとな」
そんな会話を交わしていると、
「あ、またきゅうきゅうしゃ」
「多いな……」
交差する形での遭遇だから、今度は避ける必要はない。
「おおきいじこ、あったのかな」
「いや、目的地違うっぽいし……」
「たまたま?」
「たぶん」
珍しいこともあるものだ。
「あ」
うにゅほが反対車線を指差す。
「きゅうきゅうしゃ……」
「三台目かよ」
たったの十分ほどで、三台の救急車を目撃する。
珍しいという言葉では足りないほど珍しい。
珍しいが、
「なんか縁起悪いな……」
「うん……」
「いや、しっかり働いてくれてる救急隊員には悪いんだけどさ」
「でも、なんかね」
「なんかな……」
病院で診察を済ませ、帰途につく。
「あ、きゅうきゅうしゃ!」
「四台目!」
やたら救急車と遭遇した一日だった。





674 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:25:40 ID:UKKyf4As0

2025年11月6日(木)

「やっと届いた……!」
佐川急便から受け取った荷物を、うにゅほに見せる。
「これ、いってたきーぼーど?」
「たぶん」
「すーごいまったね……」
「購入型クラファンだからな。三ヶ月くらい待った」
ダンボール箱を開封していくと、緩衝材の内側に、待ちに待ったKeychron K8 HEの箱がお目見えする。
「これ、まえのとそっくりだよね」
「ああ、K2 HEだろ。あれ結局、キー配列がダメだったんだよな……」
「うちにくいっていってたもんね」
「でも、打鍵感は最高だったんだよ。コトコト感が強くて」
「きーはいれつ、これはいいの?」
「K8 HEは普通のテンキーレスだからな。前のよりすこしデカいけど、持ち運ぶわけでもなし」
「なるほどー」
ちなみに、K2 HEは売り払ってしまった。
良いキーボードなのは間違いないが、75%キーボードは俺には向いていなかった。
「よいせ、っと」
開封したK8 HEをデスクに置く。
「××、ちょっと持ってみ」
「?」
うにゅほがK8 HEを手に取ろうとして、
「わ、おもい!」
「重いよな。この重量感がいいんだよ……」
「まって」
うにゅほが、これまで使っていたTURTLE BEACHのVulcan II TKL Proを手に取る。
「かるい!」
「軽いよなあ、これ。病院持ってくんだ」
「おもさ、こんなにちがうんだ」
「重さイコール質の良さではないけど、まったく関係ないかと言えばそうじゃないからな」
メンブレンとかアホみたいに軽いし。
「◯◯、このきーぼーど、ずっとつかう?」
「……わからん。わからんけど、たぶん、しばらくはこれ以上のキーボードは見つからないと思う。そんくらい好きな打鍵感だったんだ」
「そか」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「◯◯、きーぼーど、すぐかいかえるから……」
「すみません」
ちなみに、今欲しいのはキーボードではない。
ロジクールのMX Master 4──つまりマウスだ。
次に買い替えるとしたら、マウスになるだろうなあ。





675 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:26:02 ID:UKKyf4As0

2025年11月7日(金)

「──さーて、っと」
キーボードの上に指を乗せる。
「××、今日なんかあったっけ」
寝る準備を進めていたうにゅほが、こちらを振り向いた。
「にっき?」
「ああ」
「ゆきふった!」
「すこし積もったよな」
「ひる、かみなりもすごかったね……」
「正直怖かったな」
うにゅほが目をまるくする。
「◯◯、かみなりこわいの?」
「怖いぞ」
「そんなかんじ、いままでなかった……」
「停電したら、PCの未保存データ飛ぶかもしれないし」
「あー」
うんうんと、納得したように頷く。
「一回、めっちゃ近くに落ちたじゃん。あのとき背筋冷えてたよ」
「うん。すーごいごろごろした……」
「××、めっちゃ俺に抱き着いてたけど」
「こわい」
「怖いの、理解はできるけどな」
「◯◯、こわいのないの?」
「怖いのねえ……」
「ゆーちゅーぶも、よく、こわいちゃんねるみてる」
「オカルトとか怪談とか大好物だからな」
「こわくないの?」
「怖いときもある」
「あるんだ」
「君は俺のことをなんだと思ってるんだい」
「◯◯、こわがってるの、みたことないから……」
「そうだっけ」
「そうだよ」
「──…………」
そうかもしれない。
「ジャンプスケア──音とか怖い映像でいきなり驚かしてくるのは苦手だけど」
「それ、こわいのかな。おどろいてるだけ……」
「……たしかに」
「はがねのしんぞう」
「それは言い過ぎ」
怪談などで怖さを感じることは、たしかにある。
だが、もともと顔に出るほうではないし、うにゅほの手前、余計に出すことができない。
うにゅほが俺にそんな印象を持つのは、ある意味では必然と言えた。
「今度一緒にホラー映画でも観る?」
「う」
「う?」
「みー、……み、み」
「み」
「……ほりゅう!」
保留された。
まあ、観るとしたら何にするか、考えておこう。






676 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:26:23 ID:UKKyf4As0

2025年11月8日(土)

「最近、ブラウザの調子が悪いんだよな……」
「あー」
膝の上のうにゅほが、うんうんと頷く。
「なんか、たまにかたまるね」
「そうなんだよ」
「こわれた……?」
「ChatGPT先生に聞いてみるか」
「うん」
聞いてみた。
「──なるほど、GPUか」
「なおる?」
「ドライバ消してから入れ直せば直るって」
「おー」
「さっそくDDUをダウンロードして──」
手早く準備を進めていると、うにゅほが尋ねた。
「どうやるの?」
「PCをセーフモードって状態にして、ドライバを完全に削除する。そんで新しく入れ直せばOKらしい」
「ふんふん」
「じゃ、セーフモードで起動するぞ」
「うん」
PCを再起動し、回復環境に入る。
「……ん?」
マウスを動かす。
キーボードを叩く。
だが、何も動かない。
「どしたの?」
「あ」
思い出した。
「そうだ! 回復環境でマウスとキーボードが反応しなくなるバグあったんだ!」
「えー!」
「やっべ、どうしよ」
「さいきどう?」
「……再起動しても、またこの画面になったら」
「──…………」
うにゅほの顔が青くなる。
俺も、胃がキュッとなっていた。
「とにかく、強制再起動しよう」
PCの電源ボタンを長押しし、電源を落とす。
そして、祈るように再び電源を入れた。
回復環境から抜け、通常のサインイン画面が表示される。
「こッ、わ……」
「ふひい……」
既にこのバグは修正されているらしいが、WindowsUpdateを行う気にはなれなかった。
ドライバの再インストールは、そのうちやろう。そのうち。





677 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:26:45 ID:UKKyf4As0

2025年11月9日(日)

「んァー……」
うにゅほを膝に乗せながら、天井を見上げる。
「入院したくねえー……」
「うん……」
「どんどん近付いてくる」
「よっかご?」
「四日後!」
思わず溜め息が漏れた。
「したくねえー……」
「……しない?」
「する」
「するかー……」
「××だって、必要なのはわかるだろ。べつにしなくたって死にゃしないけどさ」
「……うん」
「だから、我慢する。××も我慢してくれ」
「うん、わかってる。わかってる……」
うにゅほもまた、切なげに溜め息をつく。
俺と同様に、うにゅほも我慢を強いられる。
だが、仕方のないことだ。
「とくべつこしつ、とれたらいいね」
「そこが生命線だよ」
睡眠障害の俺は、夜に寝ることができない。
大部屋なんかに押し込まれた日には、まんじりともせず眠れぬ夜を過ごすことが確定している。
入院生活がマシになるか地獄になるかは、特別個室を取れるか否かにかかっていると言っていい。
「でも、難しいって言われたんだよな……」
「うん……」
「なんで難しいんだろ。いざ行かないとわからないって話なのに」
「うーん」
システムがよくわからん。
長期滞在の患者でもいるのだろうか。
「まあ、何かの手違いで特別個室があてがわれるのを祈るしかないな」
「わたしもいのるね」
「ああ、頼む。××の祈りだったら効きそうだな」
「がんばる」
ふんす、とうにゅほが頷いた。
マジで頑張って祈ってくれそうなうにゅほなのだった。





678 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:27:06 ID:UKKyf4As0

2025年11月10日(月)

カレンダーを見る。
入院は三日後に迫っていた。
「荷作りしないとな……」
「わすれもの、わたしとどけるよ」
「忘れる前提かい」
ぺち、とうにゅほの額を叩く。
「いちおう、忘れそうなものはメモってあるんだけど……」
「なに?」
「主にケーブル類だな。こればかりは、忘れたら終わりだから」
「わたし……」
「××、ケーブルの種類言ってわかるか?」
「……わかんないかも」
「他はともあれ、ケーブルに関しては××を頼れないからな。絶対に忘れられない」
「たとえば?」
「モバイルディスプレイの接続ケーブルとか。なければ一気にただのお荷物だ」
「たしかに……」
「問題なのは、前日まで使うものが混じってるってことなんだよな……」
「あいふぉんのじゅうでんとか?」
「そう。それに、アップルウォッチ用の充電ケーブルもだな。12日に充電終えたら、速攻で荷物に突っ込まないと」
「ふんふん」
「それ以外のは、まあ、とっとと詰めちゃうか」
「まかして」
うにゅほが、ふんすと気合いを入れる。
「ぱんつに、シャツに、くつしたでしょー」
「寝間着はいらないぞ。入院セット借りられるから」
「そういえば」
「あとは、マスクとか」
「ますく、ますく」
「薬も必要だけど、これは明日病院から帰ってきてからだな。七日分持ってこいって言われてる」
「そだ。むこうでよういしてくれるんだもんね」
「薬の服用は病院側で管理したいってことなんだろうな」
「たぶん?」
そんな感じで荷作りを終える。
PC関連以外は、さほど詰めるものもなかった。
入院は三日後だ。
とにかく、二週間が早く過ぎ去ることを祈るばかりだった。





679 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:27:27 ID:UKKyf4As0

2025年11月11日(火)

iPadを病院に持っていくにあたり、すこし懸念があった。
何故か4G回線に繋がらなくなっていたのだ。
Wi-Fiは普通に繋がるから、気付くのが遅れた。
入院先は大きめの大学病院だから、契約すればWi-Fiは普通に使える。
だが、どうにも気に掛かるということで、月に一度の定期受診の帰りにソフトバンクショップへ立ち寄ることにした。
結果──
「まさかの結末だったな……」
「びっくりした」
助手席のうにゅほが、膝にiPadを乗せながら神妙に頷く。
「母さんが原因だとは」
「うん……」
「あのとき××も母さんと一緒だったから、立ち会ってたんだよな」
「ぜんぜんわかんなかった」
「わかったらすごいって」
つまり、こういうことだ。
俺のiPadは、もともと母親の名義で契約されていた。
母親は、iPhoneを機種変更する際に、新しいiPadも同時に機種変更していた。※1
そう、"機種変更"なのだ。
母親の元のiPadは通信契約をしていなかったため、俺のiPadから母親のiPadへと契約が移された。
そのため、俺のiPadが、ネットに繋がらなくなっていたのだ。
「謎が解けたらスッキリしたよ」
「あんしんして、あいぱっど、もってけるね」
「ほとんど××のiPadだけど、借りてっていいのか?」
「うん、いいよ」
「そっか。代わりにPC好きに使っていいからさ。あんま変なとこいじらないでほしいけど……」
「へんなとこ?」
「設定画面とか」
「いじったら、へんになりそうだから、いじんない」
「偉い」
「うへー」
「あと、変なサイトも開かないように」
「はい……」
うにゅほの好奇心が自制心を上回らないように祈ろう。
ちなみに、HDD内のエロいブツはもうすべて把握されているので、いまさら隠すようなものは何もない。
俺の性癖も丸裸である。
それでも引かないのだから、大した子だ。
これからも大切にしたいのだった。

※1 2025年11月3日(月)参照





680 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:27:48 ID:UKKyf4As0

2025年11月12日(水)

「──…………」
うにゅほが膝の上にいるのは普段通りだが、今日に限っては対面で俺に抱き着いていた。
それも無理からぬことかもしれない。
入院は、明日からだ。
二週間のあいだ、うにゅほは、この部屋でひとりきりなのだから。
「ごめんな、××」
「──…………」
うにゅほが、ふるふると首を横に振る。
「毎日通話しような」
「……うん」
「毎日来るのは、さすがに、難しいだろうけど」
「まいにちいく」
「父さん母さんにあんまり負担かけるなよ」
「だいじょぶ」
何が大丈夫なのかは、よくわからないが。
「ふー……」
うにゅほが顔を上げる。
「◯◯ぱわー、だいぶ、ちゃーじした」
「チャージしてたのか……」
「うん」
「じゃあ、俺もチャージしようかな」
そう告げて、うにゅほを正面から抱き締める。
「わふ」
「寂しいのは、××だけじゃないってことだよ」
「……うへー」
そうだ。
毎日毎日飽きずにひっついている最愛の女の子と、二週間も引き離されるのだ。
寂しいに決まっている。
主に膝の上が。
「二週間、長いなあ……」
「うん……」
「でも、必要なことだから」
「うん」
「お互い、頑張ろうな」
「……うん」
寂しいのは、どちらも同じこと。
なんとか耐えきって、また、この部屋でいちゃいちゃすることにしよう。






681 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:28:15 ID:UKKyf4As0

2025年11月13日(木)

母親の運転で大学病院へと向かい、概ね手続きを済ませて腰を落ち着ける。
「……はぁ」
思わず溜め息が漏れた。
何故なら、そこは、四人用の大部屋だったからだ。
特別個室が空いていなかったのである。
「◯◯……」
「大丈夫、大丈夫。そのうち空くかもしれないし」
「うん……」
うにゅほが、俺より悲しみに暮れている。
共感能力が高いのだ。
「じゃ、私たち行くからね。忘れ物あったら届けに来るから」
「わかった、ありがとう」
母親に礼を言うと、うにゅほが俺にぎゅっと抱きついた。
「らいん、するからね」
「楽しみにしてるよ」
「……うん」
「今生の別れじゃないんだから……」
母親が呆れる。
だが、二週間も離れるということは、うにゅほにとっては似たようなものだ。
うにゅほが名残惜しげに手を振り、病室を出ていく。
入院生活の始まりだった。
特別個室は取れなかったが、弟のノートPCを借りられたのは僥倖だ。
今はWi-Fiが使えるから、ネットもし放題。
二年前の検査入院の際は、わざわざモバイルルーターを契約して持っていったものだ。
それに比べれば、今回の入院は、天国とまでは言わずとも、かなりマシな部類に入るだろう。
昼食をとると、眠気が湧いてきた。
昨夜はほとんど寝ることができていない。
CPAPをカバンから取り出し、組み立てようとしたところ──
「……ない」
CPACと顔とを繋ぐチューブが、見当たらなかった。
「やべ」
あれがないと、大いびきをかいてしまう。
大部屋でそれは致命的だ。
慌てて母親に連絡すると、届けに来てくれるそうだった。
しばらくデイルームで待っていると、
「──◯◯!」
うにゅほが俺に駆け寄り、抱きついた。
「また会えた……」
「大袈裟な」
母親を待たせているということで、うにゅほは惜しみながらも帰っていった。
初日からいろいろあった気がする。





682 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:28:40 ID:UKKyf4As0

2025年11月14日(金)

「──…………」
暑い。
あまりにも、暑い。
代謝の低い老人に合わせる必要があることはわかるが、納得したからと言って涼しくなるわけもない。
「はァ……」
溜め息を漏らす。
とは言え、二年前の検査入院に比べれば月とすっぽんだ。
あのときは、iPadをノートPCとして無理矢理使っていたっけな。
そんなことを考えながら、弟のノートPCでブラウジングに励む。
しばらくすると、スマホが震えた。
うにゅほからのLINEだ。
『へいき・・?』
「平気平気。と言うか、二日目で潰れてたら手術以前の問題だろ」
『そだけど』
『お見舞い、きょう、だめだって・・』
そりゃそうだろう。
「二、三日に一度でいいよ。下着洗ってほしいし」
『あした、いくね』
「俺も会いたいけどさ……」
『ね?』
「ね、ではなく」
挨拶代わりの会話を交わし、やがて普段の会話が始まる。
声が聞きたくなれば、デイルームまで足を運べばいい。
『明日はいくからね』
そんな言葉で、今日の対話を打ち切る。
なんだかんだと明日が楽しみなのは、俺だけではないのだろう。






683 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:29:02 ID:UKKyf4As0

2025年11月15日(土)

ようやく、本当にようやく、特別個室へと移動することができた。
うにゅほにLINEでそれを告げると、我がことのように喜んでくれた。
ソファの前にテーブルを持ってきて、ノートPCとモバイルモニターを並べる。
即席デュアルディスプレイだ。
画面の狭さが改善され、一画面だったときよりも遙かに快適になった。
このためだけに、わざわざモバイルモニターを買って、病室に持ち込んだのである。
入院生活を快適にするためには、手段を選ばないのだ。
面会時間の午後三時が近づいてきて、うにゅほから連絡が入った。
『もすこしでつくよ』
歓迎の意を文章で示し、しばしうにゅほを待つ。
やがて、特別個室の扉が開かれた。
「──◯◯っ!」
「おっ、と」
コート姿のうにゅほが、俺に思いきり抱き着いた。
「◯◯ぃ……」
「いらっしゃい、××」
「うん」
うにゅほがソファの隣に座り、俺の肩に頭を乗せる。
「きた……」
「そっかそっか」
彼女の頭を優しく撫でる。
「ギリギリだったな……」
「ぎりぎり?」
「シャワー室使うの面倒だったから、風呂入ってなかったんだよ。でも、この部屋、ユニットバスついてるから」
「はいったんだ」
「ああ」
「かぎたかった……」
「やめてくれ……」
「うへー」
軽くいちゃいちゃしていると、ふとiPhoneが震えた。
母親からのLINEだった。
『もしかして××いない?』
「うん?」
よくわからない。
いると返信すると、
『よかった、姿見えなかったから』
「──…………」
うにゅほに尋ねる。
「今日、どうやって来たんだ?」
「たくしー!」
「マジで」
「だって、おかあさんも、おとうさんも、いけないっていうから……」
「どうやって呼んだんだ?」
「ねっとでしらべて、でんわした」
「……すごいな」
うにゅほ、そんなことできたんだ。
軽くデコピンする。
「た」
「すごいけど、ちゃんと言ってから出掛けなさい」
「はーい……」
帰りは父親が迎えに来てくれた。
けっこう怒られた、らしい。
それはそうである。






684 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/16(日) 16:30:03 ID:UKKyf4As0

以上、十四年め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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