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うにゅほとの生活を書き連ねた日記が十三年と十一ヶ月分たまった(2025年10月後半)

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



652 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:32:26 ID:q83wGaAo0

2025年10月16日(木)

弟からノートPCを借りてきた。
デスクの隅に置き、電源を入れる。
「なにするの?」
「入院用にな。万全に使えるようにしておかないと」
「──…………」
俺が入院することを思い出したのか、うにゅほの表情が曇っていく。
「にゅういんしないで……」
ストレートに来た。
「そんなわけにもいかないだろ」
「うー」
「……イヤリング、似合ってるぞ」
「うへー……」
そこはちゃんと喜ぶんだ。
軽くうにゅほを慰めたあと、作業を始める。
「どうするの?」
「まず、俺のアカウントを作る。IDやらパスワードやら個人情報の塊を扱うから、(弟)でもアクセスできないようにPINコードも設定して」
「ふんふん」
Microsoftアカウントと同期させ、ChromeやEdgeを十全に使えるようにもしておかねばなるまい。
デスクトップPCの環境を、なるべくノートPC上で再現する。
それが、快適な入院生活のコツというものだ。
「そうだ、マウスジェスチャーも入れとかないと」
「まうすぜすちゃー」
「そうだな……」
デスクトップPCのマウスを手に取り、右クリックしながら、下、右とマウスを移動させる。
すると、画面に赤い線が引かれ、Chromeのタブが閉じた。
「これがマウスジェスチャー」
「いつもやってるやつ」
「Windows標準の機能じゃないんだよ。AutoHotkeyってツールで、後から入れてんの」
「へえー」
「右クリしながらホイールでタブ切り替えも、これでやってるんだよ」
「え、ふつうできないの?」
「そういう拡張機能はあるはずだけど、俺のだと、どのブラウザでも同じように使えるから」
「すごい」
「すごかろ」
随分昔に自作したものだが、もう作り方を覚えていないので、もはやオーパーツである。
「データはDropboxから移動させればいいし──」
思ったほど作業量はなかった。
「よし、おしまい」
「おつかれさま」
「……どうでもいいけど、デスクすごいことになってるな」
トリプルディスプレイに液晶タブレット、ノートPCで五画面状態になっている。
「しゃしんとっていい?」
「いいぞ」
まるで、デイトレーダーか、そうでなければ配信者のようなデスクだった。
ぜんぜん違うんだけども。







653 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:32:49 ID:q83wGaAo0

2025年10月17日(金)

今日も今日とて、のんびりと一日を過ごしていた。
「へいわだねー……」
「平和だな」
「あっちーねー……」
「暑いな……」
ぺたりとひっついているのも間違いなく理由のひとつだが、単純に室温が29℃ある。
外気温は15℃ほどのはずだ。
どう考えても暑すぎる俺たちの部屋だった。
「エアコンつけるか」
「じゅうがつなのに」
「十月だけど、暑いじゃん」
「うん……」
なお、窓を開けるという選択肢はない。
理由は単純、虫が入るのが死ぬほど嫌だからである。
「じゃ、つけてくるね」
「おー」
うにゅほが膝から下り、エアコンのある自室の寝室側へと向かう。
そのとき、
「ひぎゃ!」
うにゅほの叫び声が室内に響いた。
「どうした!」
慌てて立ち上がる。
「むし!」
「虫!?」
「かめむし!」
いや、どこから入ったんだよ。
俺は、キンチョールを引っ掴み、寝室側へと駆け付けた。
「あそこ!」
うにゅほが指差したのは、レースカーテンだ。
角張ったシルエットの虫が、カーテンの上部に貼り付いている。
俺は、無心で、カメムシにキンチョールを噴射した。
「がんばれ!」
「おう!」
ひたすら噴霧し続ける。
幸いにも、カメムシは飛び立つことなく、そのまま徐々に弱っていった。
やがて、ぽたりとフローリングの床に落ちる。
「やた!」
「ふー……」
よかった。
被害は最小限に抑えられた。
「やっぱ、室外機から入ってきてんのかなあ……」
「わかんない……」
カメムシの死骸を割り箸でつまみ、窓から外へと投げ捨てる。
俺たちの部屋へと立ち入らなければ、殺されることもなかったろうに。
合掌である。






654 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:33:19 ID:q83wGaAo0

2025年10月18日(土)

「──……ぁふ」
漏れたあくびを噛み殺しながら、炊飯器からご飯をよそう。
半端な時間に目が覚めたため、半端な時間の昼食だ。
「××、ふりかけある?」
「ふりかけー……」
棚の扉を開き、うにゅほが答える。
「ないけど、にたのある」
「似たの?」
「まぜて、おにぎりにするの」
「あー」
ふりかけと大差あるまい。
「それでいいや」
「はーい」
うにゅほから混ぜ込みわかめを受け取り、適当にご飯にかける。
混ぜ込む前提だから、すこし塩辛いんだよな。
だが、カリカリのわかめは嫌いじゃない。
「おいしい?」
「わりと」
「そか」
もそもそとご飯を食べ進めていると、
──ガリッ!
とても、とても、嫌な感触がした。
舌で、それを確認する。
硬い。
恐らく金属だ。
辟易しながらそれをつまみ、指の上に乗せた。
「どしたの?」
「なんか、銀歯が──」
確認する。
指に乗せたそれは、やたらと黒かった。
「ぎんば?」
「……銀歯かこれ」
「くろいよ?」
「黒いな……」
もしかして。
前歯で、その黒い物体を噛み潰す。
カリッ。
「わかめじゃん!」
ただ単に、でかくて超硬い乾燥わかめだった。
「よかった。マジでよかった」
歯医者なんて行きたくもない。
「ぎんばじゃなくて、よかったねえ」
「マジでな……」
背筋が冷えた出来事だった。






655 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:33:41 ID:q83wGaAo0

2025年10月19日(日)

俺は、サコッシュを財布にしている。
長財布より盗まれにくいし、スマホを入れるポケットもあるし、利便性は高い。
問題があるとすれば、背面の小銭入れだ。
大きく広がらないため、小銭が取り出しづらく、いくら入っているかもパッと見でわからない。
「──さて、と」
出掛けるためにサコッシュを肩に提げたところで、うにゅほが目をまるくした。
「あれ?」
「どした」
「こぜにいれるとこ、あいてる」
「小銭入れるとこ……」
サコッシュの背面を確認すると、ファスナーが開いていた。
「やべ」
慌てて小銭入れを確認する。
ない。
小銭が、ほとんどない。
確実に入っていたはずの五百円玉も、影も形もなかった。
「あー……」
やってしまった。
前に出掛けた際に、ファスナーを閉じ忘れ、気付かぬうちに小銭をバラ撒いてしまったらしい。
「おかね、ない……?」
「だいぶ減ってる」
「わたし、きーつかなかった……」
「大丈夫だ。俺も気付かなかったから」
「だいじょうぶ、ではない」
「それはそう」
とは言え、何ができるわけでもない。
「前の財布に戻すか。やっぱ、小銭出しにくいよ」
「ずっといってたもんね……」
「小銭入れだけ別に持つのも一度は検討したけどさ」
「それなら、ねえ」
「普通の長財布使うよな」
「うん」
「……まあ、とりあえず出掛けるか」
「そだね」
前に使ってた長財布、どこにやったかな。





656 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:34:08 ID:q83wGaAo0

2025年10月20日(月)

「──…………」
もう、二十分ほども自室を漁っている。
「ないねー……」
「ない……」
「どこいったんだろ」
「わからん……」
探しているのは、以前に使っていたCOACHの長財布だ。
サコッシュから普通の財布に戻そうと気楽に探し始めたのが、これがまったく見つからない。
「すててない?」
「捨ててない。さすがに捨てないって」
「だよね……」
「どっかで見掛けた気がするんだけどなあ……」
「わたしも、みたきーする」
「でも、わからない」
「わかんない」
「困ったな……」
今すぐに絶対必要というわけではないのだが、戻すと決めたら戻したい。
すると決めたことを放置し続けるのがストレスなのだ。
「あ、そだ」
「心当たりあった?」
「ちがくて」
うにゅほが首を横に振り、口を開く。
「たんじょうびプレゼント、おさいふにする?」
「あー」
探すのは諦めて、新しいものを買うというアプローチか。
「……いや、さすがに早くないか? 俺の誕生日、一月なんだけど」
「おそかれはやかれだし……」
「まあ、そうだけど」
軽く思案する。
考えてみれば、願ってもない申し出だ。
「──んじゃ、頼めるかな」
「いいよ!」
パソコンチェアに深々と腰掛け、自分の太股を叩く。
「一緒に決めようぜ」
「うん!」
うにゅほを膝に乗せ、Amazonや楽天でいろいろな商品を眺めていく。
この時間が、また楽しいのだ。





657 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:34:27 ID:q83wGaAo0

2025年10月21日(火)

「──寒ッ!」
思わず両手で二の腕を擦る。
「きょう、すーごいさむい……」
「布団足りたか?」
「ぎり」
「ギリか……」
そろそろ厚手の布団に取り換えたほうがいいだろうか。
そんなことを考えつつ、温風も出る送風機の電源を入れる。
「ふいー……」
「ふー」
温風が、裸足の爪先を温めていく。
俺とうにゅほは、自室では靴下を履かない主義だ。
「これから、どんどん寒くなってくな」
「うん」
「まあ、この送風機と、天井のサーキュレーターがあれば戦えるだろ」
「きょねん、すとーぶ、いらなかったもんね」
「びっくりだよな」
「びっくり」
うにゅほを膝に乗せつつ、日常を過ごしていく。
三十分ほどした頃、気が付いた。
「──あッつ」
「あついー……」
あっと言う間に室温が上がっていた。
「去年、ストーブいらなかったわけだよ……」
「すごい」
「このコンボ、秋には過剰だな。サーキュレーターだけ止めるか」
「そうしよ」
秋には秋の、冬には冬の、防寒対策がある。
大は小を兼ねると言うが、強が弱を兼ねるとは限らないのだ。
「常に室温を快適に保つシステムが欲しい……」
「そかな」
「欲しくない?」
「わたし、あついとか、さむいとか、◯◯といってるの、すき」
「あー……」
そうかもしれない。
「ちょっと、風情なかったな」
「うへー」
「秋は秋で、冬は冬で、楽しまないと」
「うん!」
うにゅほから教えられることは、案外多いのだ。






658 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:34:45 ID:q83wGaAo0

2025年10月22日(水)

鬱陶しくなってきたので、腋毛を剃ることにした。
愛用のボディトリマーを片手に、姿見の前に立つ。
「わきそるの?」
「暑苦しいし……」
「そんなきーするね」
「××は生えないからいいよな」
「うへー」
「なんで生えないの?」
「わかんないけど……」
成人男性が腋毛を剃る描写を延々しても仕方がないので、省略する。
「すうよー」
「おうよ」
うにゅほが、ハンディクリーナーで、床に落ちた腋毛を吸い込んでいく。
「きれいにそれた?」
「雑でいいんだよ。どうせまた生えるんだし」
「そか……」
無駄毛の処理は、実に面倒だ。
俺はスネ毛が濃いため、二週間に一度のペースで足の毛も剃っている。
その代わり、ヒゲはあまり生えない。
スネ毛よりはヒゲの対処のほうが大変そうなので、マシなほうではあるのだろう。
対して、うにゅほは、無駄毛がそもそも生えない。
腋も足も実に綺麗なものだ。
女性も羨む体質である。
「スネ剃ると、腕とかも剃りたくなってくるんだよな。面倒だからしないけど」
「◯◯、うで、そんなこくない」
「濃くはないけど、生えてはいるからさ」
「そだねえ」
「ボディトリマーでヒゲも剃れたらいいんだけど……」
「それないかー」
「さすがにな。ヒゲにはヒゲ剃りだ」
「うん」
とにかく楽して暮らしたい。
全身脱毛なんて憧れるけど、痛い上に何度も通う必要があるらしいしな。
人生、楽だけできるようにはなっていないのだろう。





659 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:35:04 ID:q83wGaAo0

2025年10月23日(木)

目玉焼きを作るのが面倒だ。
そのため、電子レンジを使って、似たようなものを作ることが多い。
うにゅほに頼めばすぐに作ってくれるのだが、甘えすぎも良くはないだろう。
それに、油を使用しないため、ヘルシーですらあると言える。
小皿にふたつの卵を落とし、軽く掻き混ぜる。
俺は、目玉焼きを焼くときも、黄身をぐちゃぐちゃに混ぜる派閥である。
かなりの泡沫政党だと思うが、そういう人もいなくはないだろう。
そんな様子を、うにゅほが不満げに見つめてくる。
「わたしやくのに……」
「そうなんだけどさ」
頼めば嬉々としてやってくれる。
俺の役に立つのが嬉しいのだろう。
だが、便利だからと言って、うにゅほを道具扱いしたくない気持ちがあるのだ。
「じゃま、チンするか」
半端に混ぜられたふたつぶんの生卵を、小皿ごと電子レンジに入れる。
「なんか、いつもこわい」
「そうか?」
「ばくはつしそう……」
「……あー」
殻がなくても爆発するのだろうか。
よくわからなかった。
そんなことを考えていたとき、

──ぼんッ!

「!」
「み!」
電子レンジの内側で、明確な破裂音が響いた。
「やべ!」
電子レンジの扉を開く。
一言で言うのなら、
「大惨事……」
皿の半分ほどが飛散し、上下左右前後を問わず卵が電子レンジの内側に貼り付いている。
「わあ……」
「なんで今回だけ……」
「いままでが、うん、よかったのかも」
「あー……」
あり得る。
「こんどから、わたしやくね」
「頼む……」
キッチンペーパーを濡らし、レンジの内側を掃除してから気が付いた。
何か袋をかぶせてチンすればいいのではないか。
でも、うにゅほと約束してしまったしな。
レンジで目玉焼きは諦めよう。






660 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:35:32 ID:q83wGaAo0

2025年10月24日(金)

「◯◯、なんかとどいたー」
「なんかって、財布?」
「わかんないけど、そうかも」
「だとしたら早いな……」
注文してから既に四日が経過しているが、お届け予定日が日曜になっていたのだ。
二日ほど早い。
包みを開けると、BEAMZ SQUAREの黒い箱が現れた。
「おー……」
「開けていい?」
「?」
何故いちいち許可を取るのかわからない様子だったが、数瞬ののち思い出したようだ。
「いいよ! たんじょうび、おめでと!」
そう。
二ヶ月半ほど早いが、うにゅほから俺への誕生日プレゼントなのである。
「ありがとうな」
「うへー」
箱を開封する。
細々としたものを取り外していくと、丈夫そうなカーボンレザーの長財布が姿を現した。
「おおー」
「素材いいな、これ。撥水性ありそう」
「あるある」
「オイルレザーとかだと、水の染みで終わることあるからな……」
「うえ」
長財布を開き、機能を見ていく。
カード用のポケットは多く、それ以外でも大容量だ。
何より、小銭入れが広く取られており、サコッシュよりも確実に小銭の額を確認できる。
これに関しては、サコッシュ側がひどすぎたと言うべきかもしれないが。
「きにいった?」
「ありがとうな。気に入りました」
「あの、えるじのやつじゃなくてよかった……?」
「あー」
この商品より二回りほど値段の張る財布が、最終候補にまで挙がっていた。
そこで、俺が遠慮してこちらを選んだのだと、うにゅほは勘違いしているのだろう。
「あのL字のファスナーのやつな。考えてみたら、いちいちファスナー開けるのめんどくない?」
「それは、まあ……」
「だから、こっちを選んだんだよ」
「……そか!」
納得していただけたらしい。
改めて、うにゅほに感謝を。
ふたりとも、何もかも忘れて、俺の誕生日にふたつめのプレゼントを用意する可能性が微粒子レベルで存在するため、気を付けよう。





661 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:35:52 ID:q83wGaAo0

2025年10月25日(土)

「さむーい……」
「随分と冷え込んだな……」
ぺたり。
うにゅほが俺に抱き着く。
密着するのが日常なので、ドキドキしたりはしない。
「あったかい」
「俺も」
「うへー」
冬は、やっぱり密着である。
秋も密着だし、春も密着だし、結局夏だって密着なのだった。
「──とは言え、そろそろ半纏とか出さないとな」
「たしかに……」
「もっこもこになろう」
「なるなる」
「どこ入れたっけ……」
「うーと、ベッドのしたの、いしょうケースだったとおもう」
「どれどれ」
ベッド下の衣装ケースを幾つか開ける。
「あった」
「あった!」
「××、よく覚えてるな。天才かも」
「そこまでは……」
「まあ、俺の物忘れが激しいだけかもしれないけど……」
「それは、うん」
うにゅほにまで思われているらしい。
まあ、数分前に頼まれたことを忘れて部屋に戻ることとかあるからな。
何はともあれ、
「よし、着るか」
半纏を羽織ると、うにゅほが俺の前に立ち、体重を預けてきた。
そして、半纏の袖に腕を入れる。
「ににんばおりー」
「おらッ!」
「わふ!」
抱き締めて頭頂部を顎で撫でてやると、うにゅほはけらけらと笑っていた。





662 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:36:08 ID:q83wGaAo0

2025年10月26日(日)

「そろそろハロウィンか」
「ね」
「まあ、何かするわけでもないけど……」
「かそうする?」
「してどうする」
「わかんないけど」
「わかんないんかい」
「だってー……」
「そもそも、ハロウィン自体よくわからん文化だしな」
「それは、そうかも」
「トリック・オア・トリートでトリック選んだら玄関に生卵ぶつけられることしか知らない」
「ほんばのやつだ」
「日本でやったら警察沙汰だな……」
「うん……」
しかし、暑い。
うにゅほを膝に乗せて抱き締めていることも理由のひとつかもしれないが、そもそも室温が29℃ある。
「……なんか今日、暑いな」
「あついー……」
「最高気温、一桁じゃなかったか?」
「たぶん」
「まあ、いつものだな」
「うん」
俺たちの部屋は、いつも暑い。
冬はともかくとして、春でも秋でも普通に30℃を超えてくる。
「なんで暑いんだろうなー……」
「わかんない」
「まあ、寒いよりいいか」
「さむくてもいいよ?」
「くっつけるから?」
「うん」
「でも、俺もうちょっとしたら入院するけど」
「!?」
うにゅほが目をまるくしてこちらを振り返る。
忘れていたらしい。
「やだ」
「入院します」
「はい……」
すっかり意気消沈してしまった。
悪いこと言ったかな。
でも事実だしな。





663 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:36:27 ID:q83wGaAo0

2025年10月27日(月)

弟から借りたノートPCと、モバイルディスプレイとを接続する。
問題なく画面がついた。
「──よし、と」
これで、入院中でもデュアルディスプレイ環境を整えることができる。
「やっぱし、がめんふたつないと、だめなんだ」
「ダメだな。どう考えても狭すぎる」
「なるほどー……」
「一昨年検査入院したときは、iPad Proに無線マウスと無線キーボードを繋げることで無理矢理なんとかしたからな。だいぶ厳しかった」
「のーとぱそこんあるなら、そのほういいもんね」
「まあ、安物だから、ゲームなんかは軽いものしかできないだろうけど……」
「でも、あってよかったね」
「ああ。買うとなれば、やっぱそこそこするからな」
「じゅうまんとか?」
「妥当なとこじゃないか。良くも悪くもないラインだ」
「たかいの、どのくらい?」
「高いのは高いぞ。百万以上とかのも普通にある」
「ひゃくま!」
「手の届かない世界の話だな。べつに欲しいとも思わんけど」
「だれか、くれるっていったら?」
「もらう」
「ふんふん」
「そんで売る」
「うる!」
「お金に早変わりというわけさ」
「せっかくくれたのに……」
「宝の持ち腐れだよ。デスクトップメインなのに、ノートPCだけ良いのがあってもさ。持ち運ばんし」
「それはそう」
「それとも、××が使うか?」
「あー」
うにゅほが軽く思案する。
「……いいかも」
「俺が入院から帰ってきたら、そのまま××が使ってみてもいいんじゃないか。あいつも使う予定ないし」
「してみたいかも」
「そうしよう」
「うん」
と言うわけで、うにゅほ専用のPCができそうな予感があるのだった。





664 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:36:49 ID:q83wGaAo0

2025年10月28日(火)

銀行で所用を済ませ、帰途につく。
「コンビニ寄っていい?」
「いいよー」
近くにあったセブンイレブンへと立ち寄り、軽い昼食を購入する。
車内でそれを食べながら、ふとあることが気になった。
「××」
「んー?」
「下見て」
「した?」
助手席のうにゅほが、足元へと視線を落とす。
「そのままで、iPhone出して」
「はい」
怪訝そうにしながらも、うにゅほが従順に従う。
「だしたー」
「では問題です」
「ててん」
「セブンイレブンを、英語で書きなさい」
「えいご……」
「セブンとイレブンの綴り、わかるかな」
「わかるよー……」
「本当か?」
「ほんとほんと」
「信じてるぞ」
「しんじてて」
うにゅほがiPhoneを操作し、メモアプリに英単語を入力していく。
「はい」
「はい」
それを受け取り、確認した。
"SEVEN ELEVEN"
「正解だ……」
「ね?」
「意外」
「しつれい……」
「××、意外と英語行けるんだな」
「えいご、しらないけど、せぶんいれぶんくらいわかるよ」
「偉い」
「うへー」
基礎的な常識は、案外しっかりしてるんだよな。
「……そう言えば、英語の数とかの綴りって、むかーし教えた気がする」
「おもいだした?」
「思い出しました」
そうだ、俺が教えたんだ。
十年以上前のことだろうに、よく覚えてるよな。
実は頭のいいうにゅほなのだった。





665 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:37:14 ID:q83wGaAo0

2025年10月29日(水)

カレンダーを見て、呟く。
「明日、大学病院かあ……」
「あさはやいね」
「七時半には出ないとな」
「しちじにはおきないと」
「遅くとも五時には寝ないと……」
「おそい!」
「普通にツッコまれた」
「おそいもん」
「それはそう」
二時間睡眠になるしな。
とは言え、俺は睡眠障害であり、生活サイクルが生活サイクルなのである程度は仕方がないのだ。
「よじにねよ」
「頑張ります……」
「かえってきたら、ひるねしようね」
「ああ」
病院へ行く日の常である。
「つーか、そろそろ十一月か……」
「そだよ」
「あと二ヶ月で今年も終わりか」
「えっ」
「え?」
「あ、うん。そだね」
「何故驚いた」
「さんかげつくらい、あるきーしてた……」
「あー……」
そういった感覚の不一致は、わからんではない。
「そか、あとにかげつなんだ」
「びっくりだよな」
「びっくり」
「間違ってまた夏来ないかな」
「ちきゅう、こわれちゃう」
「地球壊してまでは、あれか」
「うん、あれ」
「我慢するかあー……」
冬が来る。
ああ、嫌だ嫌だ。
引きこもりたいのだった。






666 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:37:33 ID:q83wGaAo0

2025年10月30日(木)

薬局で薬を受け取り、帰途につく。
「はー……」
助手席のうにゅほが、何十度目かの溜め息をついた。
「幸せ逃げるぞ」
「にげてる……」
「まあ、なんだ。あと二週間あるから……」
「──…………」
入院日が、11月13日に決まったのだった。
「……はぁー……」
溜め息が深い。
「よし、パスタ食って帰ろう。パスタ」
「ぱすた……」
「久し振りだろ」
「うん」
「決まりだな」
時刻は午前十一時を大きく回り、昼時になっていた。
帰路にある行きつけのパスタ屋へと立ち寄り、ボックス席に案内される。
当然、俺の隣に座るうにゅほである。
ふたりでメニューを開きながら、今度は俺が溜め息をついた。
「──しっかし、高くなったなあ」
「なったきーする……」
「カルボナーラ、1,350円だと」
「まえ、いくら?」
「1,000円」
「たか!」
「で、大盛りが100円だったんだよ」
「いまは?」
「250円」
「たか!」
「つまり、1,100円だったものが1,600円に──」
と言い掛けて、気付く。
「違うわ。これ税抜価格だから、もっとだわ」
「えー……」
「物価、上がってるんだな……」
「うん……」
なんというか、世知辛いのだった。
結局、俺はカルボナーラの大盛り、うにゅほはたらこマヨネーズを注文し、舌鼓を打った。
味は相変わらず、良い。
すこしだけいい気分になって帰宅する俺たちだった。






667 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:37:54 ID:q83wGaAo0

2025年10月31日(金)

「とさいの日」
うにゅほが小首をかしげる。
「とさい……?」
「とさい」
「とさいって、なに?」
「知らんけど……」
「しらんの」
「適当に語呂合わせしてみました」
「あ!」
膝の上のうにゅほが振り返り、カレンダーを確認する。
「じゅうがつさんじゅういちにちだ」
「だから、とさいの日」
「じゅっさいのひじゃ、だめだったの?」
「──…………」
しばし沈黙し、
「生産量一位は島根県なんだぞ」
「とさいの?」
「ああ」
「とさい、あるの……?」
「たぶんない」
「ありそうにいう……」
「まあ、本当のこと言うと、今日はハロウィンなんだけどな」
「あ、そだった」
「トリックオアトリート!」
「おかしない!」
「お菓子がなければ、いたずらをするしかないなあ……」
「してー」
してー、と来たもんだ。
「今年も渋谷、混むのかな」
「こみそう」
「仮装して騒ぐのも楽しそうではあるんだけどな」
「めずらしい……」
「××は何が似合うかな」
「なに?」
「包帯巻いてマミーとか」
「ぜんぶぬぐやつ!」
「エロ仮装」
「ほかには?」
「デンジャラスビーストとか……」
「でんじゃらす?」
検索して画像を見せてみた。
「わ」
「どうよ」
「そとできるのはむり……」
「部屋で着るのは?」
「かう?」
「いや、さすがに……」
「そか」
すこしチキンな俺なのだった。






668 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/11/02(日) 00:38:39 ID:q83wGaAo0

以上、十三年十一ヶ月め 後半でした

引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
 



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