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うにゅほとの生活を書き連ねた日記が十三年と十ヶ月半分たまった(2025年10月前半)

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
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636 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:20:34 ID:I9m.2PP20

2025年10月1日(水)

「××」
「──…………」
「……××さん?」
「んー」
膝の上のうにゅほが、ぎゅーっと俺に抱き着いたまま動かない。
「トイレ行きたいんだけど……」
「ん」
のそりと腰を上げる。
ほっと息を吐き、トイレへ向かおうとすると、うにゅほが俺の腕を抱いた。
「××?」
「──…………」
無言の圧を感じる。
トイレの前では離してくれたが、小用が終わるまで廊下で待っていた。
うにゅほの気持ちは理解している。
入院と手術が確定しているため、不安だし、嫌だし、俺から離れたくないのだろう。
「どんなに早くても、まだ一ヶ月はあるから……」
「ん」
わかっている。
わかっていて、これなのだ。
二年前の検査入院のときも大変だった。
しかも、今回は、すこし長めの入院と手術付きだ。
片時も離れたくないのだろう。
「しゃーない……」
膝の上のうにゅほを、子供をあやすように抱き締める。
こうなれば、徹底的に付き合う以外にない。
「◯◯……」
うにゅほが、ぼそりと、耳元で俺の名を呼ぶ。
「どした」
「しなないで……」
「死なんて」
そこまで飛躍していたのか。
「死ぬ手術じゃないから。失敗するような手術でもないし」
「まんいち」
「考えない考えない。無駄どころか悪影響が出てる」
「うん……」
「ほら、前向いて。一緒に動画見よう」
「ん」
心配してくれるのは嬉しいのだが、少々困る。
すこしは慣れてもらわないとな。






637 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:20:52 ID:I9m.2PP20

2025年10月2日(木)

小腹が空いたとき、こんにゃくを田楽みそで食べている。
美味しいし、ダイエットにもなって一石二鳥だ。
だが、
「──うわ、こんにゃく凍ってる!」
自室の冷蔵庫は、最上段の右奥が冷凍庫並みに冷える。
そのことを忘れて奥に突っ込んでしまったため、こんにゃくがカチンコチンになってしまった。
「とかさないと」
「しゃーない。常温でしばらく置いとくか」
「そだね」
腹は減ったが、我慢である。
小一時間が経ち、解凍が済んだかを確認する。
「……?」
こんにゃくの袋を握ると、普段とは違う感触がした。
「××、これどう思う?」
「なにー?」
うにゅほにこんにゃくの袋を渡す。
「あれ、なんか、へん……」
「凍らせたら萎むのかな」
「たべてみる?」
「腹減ったしな……」
洗面台でこんにゃくを開封し、キッチンペーパーで包む。
「──…………」
胸中で、やべ、と呟いた。
明らかに質感が変わっている。
こんにゃくのぷるもち感は一切なく、押せば押すだけ内部の水分が溢れ出る。
ある程度こんにゃくを絞ったあと、自室へ戻った。
「どうだった?」
「こんなんなった……」
うにゅほにこんにゃくを見せる。
「わ」
「これ食えるのかな……」
「たべれるとはおもうけど……」
「──…………」
田楽みそをつけて、萎んだこんにゃくを囓る。
瞬間、こんにゃく水が噴射された。
「うお!」
「ぎゃ!」
うにゅほの顔面にこんにゃく水がぶっかかるが、特にエロくはない。
「こんにゃくくさいー……」
「悪い」
「たべれる?」
「えーと……」
改めて、こんにゃくと向き合う。
「これ、スポンジ化してるわ……」
「すぽんじ」
「こんにゃくってゼロカロリーでもともと食べ物とそうでないもののライン際ギリギリにいるのに、これ完全に食いもんじゃないよ……」
「すてる……?」
「いや、もったいないからいちおう食うけど」
「たべるの」
「食べる」
なんとか囓り、喉の奥に押し込んでいく。
一度吐き気に負けそうになったが、ギリギリで胃に収めることに成功した。
読者諸兄も、間違ってこんにゃくを冷凍しないように。





638 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:21:15 ID:I9m.2PP20

2025年10月3日(金)

「ね、ね」
「んー?」
膝の上のうにゅほが、マウスを握っていた俺の手を取る。
「はなしきいて」
「聞くって」
「うん」
「なんかあった?」
「あさごはんのとき、めだまやいたの」
朝ごはん。
俺とは縁遠い言葉である。
「そんで?」
「たまごわって、フライパンにおとしたんだけどね」
「ああ」
「ちーでてきたの!」
「血?」
「ち!」
「血が混じってる卵がたまにあるとは聞くけど……」
「びっくしした」
「血まみれ?」
「そこまでじゃないよー……」
うにゅほが苦笑する。
「なんか、ところどころ、ち」
「あんま食いたくないな……」
「わたしも……」
「食べたの父さんか」
「うん」
「あの人、食に関してこだわりない──と言うか、警戒心がないからな……」
どれほど賞味期限がヤバかろうと、気にせず食べる。
そして、やたらと胃腸が強いため、概ね腹を壊すことがない。
「血の混じった卵って、どのくらいの確率なんだろうな」
「しらべて!」
「じゃあ、GoogleのAIモードで調べてみるか」
調べてみた。
「血斑卵の発生頻度は、一般的に0.1%から0.5%程度──だって」
「そんなひくいんだ」
「いや、もっと低い。そこから検卵って工程で弾くから」
「もっとひくいの?」
「そうなるな。もしかすると、ラッキーだったのかも」
「らっきー、かなあ……」
「ラッキーって思っとけ」
「はーい」
しかし、思えば血斑卵って見たことないな。
この人生で卵を千個は割っているはずだが、一度も見掛けたことがないのは、やはり絶対数が少ないからだろう。
まあ、出会いたくもないけれど。





639 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:21:36 ID:I9m.2PP20

2025年10月4日(土)

「あ」
ふと何かを思い出したのか、うにゅほがメモ帳とボールペンを手に取った。
「かいていい?」
「いいけど」
「まってね」
うにゅほが、家らしきイラストを描く。
その左に四人の棒人間が、その右にはカタカナで「ル」と書かれている。
「クイズ?」
「うん。テレビでやってた」
「ほう」
「このかぞく、どんなかおしてるでしょうか」
「どんな顔と言われてもな」
棒人間と家を、何かに言い換えるのだろうか。
「◯◯も、とけない?」
「××は解けたのか?」
「わたしも、おかあさんも、わかんなかった」
「なら、俺がわからなくても恥ずかしくないな……」
「◯◯なら、わかるきーする」
「うーん……」
実を言うと、まったくピンと来ていない。
ハウスルだの、ホームルだの、意味のない言葉ばかりが脳裏をよぎる。
それに、四人の棒人間の問題も解決していない。
謎が渋滞していて、どこから手を付けていいものか。
五分ほど悩み、
「──ダメだ、降参。わかりません」
「わかんなかった」
「そういうときもあるよ」
「うへー」
「何故喜ぶ」
解いても喜びそうだが。
「こたえはねー」
うにゅほが得意げに解答を披露する。
「すまいる」
「住まいと、ル?」
「そう」
「……え、棒人間は?」
「ぼうにんげんは、かぞく」
「えー……」
作問に失敗している、と感じた。
住まいの横に描かれた家族は、明らかにノイズだ。
家族、家、ルで、ひとつの暗号、ひとつの言葉であると勘違いさせてしまう。
「この棒人間って、テレビでもいた?」
「いらすとやで、いたよ」
「……負け惜しみじゃないけど、この問題、ちょっとダメだな」
「わたしも、そんなきーした」
「うん」
確実にダメである。
この問題を作ったやつは誰だ!





640 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:21:55 ID:I9m.2PP20

2025年10月5日(日)

入浴後、自室のドライヤーで髪を乾かし、パソコンチェアに腰掛ける。
「あ」
座椅子でくつろいでいたうにゅほが、目ざとく俺の爪先を指差した。
「つめ、すーごいのびてる」
「バレた」
「きーつかなかった」
「人の爪先なんざ、そうそう見たいからな」
「それはまあ」
「そろそろ切るか……」
「はーい」
うにゅほが爪切りを手に取る。
体の硬い俺は、うにゅほに足の爪を切ってもらっているのだ。
うにゅほの爪も切ってあげているので、Win-Winの関係である。
ゴミ箱の上に足を乗せ、
「頼むー」
「はーい」
まずは、親指の爪から大胆にカットしていく。
ぱち、ぱち。
伸びてはいるが、長すぎないこともあって、比較的切りやすそうだ。
「──…………」
うにゅほが、大きくカットされた親指の爪を嗅ぐ。
「くさい」
何故か嬉しげだ。
「臭いんだから嗅ぐなって……」
「うへー」
そんな一幕もありつつ、最後の左足の小指を切ったときだった。

──パチッ!

「た!」
うにゅほが目元を押さえる。
「××!?」
もしかして、飛んだ爪が目に入ったのだろうか。
「らいじょぶー……」
うにゅほが、すぐに手を下ろす。
目は傷ついていないようだ。
「めのした、あたった」
「危ねー……」
「あぶなかった」
「……悪いな、俺の爪が」
「◯◯、わるいこと、ないんだけど……」
不思議そうに小首をかしげるが、それでも責任を感じてしまうのだ。
目に当たらなくて、本当によかった。





641 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:22:15 ID:I9m.2PP20

2025年10月6日(月)

自室の扉が開いた。
「◯◯ー」
「んー?」
「なんか、これ、とどいた」
うにゅほから、ごく小さなダンボール箱を受け取る。
軽い。
空っぽでもおかしくないほどの軽さだ。
「これなに?」
「──…………」
概ね、何かはわかっている。
だが、言えない。
うにゅほにだけは言えないのだ。
「ま、ま、いいじゃん」
「えー……」
口を尖らせたうにゅほの肩に手を置き、やわやわと揉む。
「きになる」
「気になるのはわかるけどさ」
「んー」
うにゅほが、しばし思案する。
「あ」
「気付くな!」
「──…………」
にんまり。
恐らく、思い至ったのだろう。
うにゅほが嬉しそうに微笑んだ。
「そっかー」
「……そういうことだよ」
「うん。たのしみにしてるね」
「ああ」
ダンボール箱の中身は、うにゅほへの誕生日プレゼントである。
10月15日までは、その中身を教えることはできない。
むろん、読者諸兄にもだ。
うにゅほが喜んでくれればいいのだが。
そんなことを考えながら、ダンボール箱を引き出しに仕舞う俺なのだった。





642 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:22:36 ID:I9m.2PP20

2025年10月7日(火)

「うあー……」
うにゅほが、抱き着いたまま離れてくれない。
発作のようなものだ。
俺が手術を終え、退院するまでは、おおよそこんな感じだろう。
入院が近付くにつれ、密着度が上がっていくことは予想されるが。
「らいしゅうの、いまごろ……?」
「来週?」
「らいげつ」
言葉すらままならないらしい。
「たぶんだけど、来月の中旬くらいじゃないかな。入院は」
「うー……」
不満げだ。
そりゃそうか。
「でも、意味のある入院だから……」
「たいてい、いみある」
「それはそう」
「しじつ……」
「べつに、開腹手術するわけじゃないんだからさ。××だって、外科医の先生の話聞いたろ?」
「あんまし」
聞いてなかったんかい。
「……腹に小さな穴を開けて、そこから腹腔鏡っていうのを入れるんだよ。それで手術するんだ」
「おなか、きらないんだ」
「切らない切らない。最近は、余程じゃないと切らないよ」
「それはよかったけど……」
うにゅほが逡巡し、俺の顔を見上げる。
「◯◯、こわくないの……?」
即答する。
「めっちゃ怖い」
「めっちゃこわいんだ……」
「当然だろ。大きな手術って初めてだし……」
「……そか」
俺の頭を撫で、うにゅほが言う。
「こわがったって、いいんだよ」
「──…………」
優しい子だ。
甘えたくなる。
だが、自尊心というものがある。
「……本当にきつくなったら、そうさせてもらおうかな」
「うん」
手術前日とか、気持ち悪くなってそうだな。
メンタルが強いほうではないし。






643 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:22:52 ID:I9m.2PP20

2025年10月8日(水)

ダイエットのために、空腹をこんにゃくで誤魔化している。
「前から思ってたんだけどさ」
「?」
「こんにゃくの匂いって、何かに似てない?」
「なにか……」
「嗅いでみ」
うにゅほの鼻先に、切ることすら放棄した一塊のこんにゃくを差し出す。
すんすん。
「なんか、にてる。きーする」
「わかんない?」
「わかんない」
「……エビに似てない?」
「あー」
すんすん。
「わかる!」
「だよな。俺の気のせいじゃなかったか」
「えびのにおいだ」
「これ、一般的な感覚なのかな。なんか自信なくて」
「しらべよ」
「その手があったか」
軽く検索してみたところ、俺たちと同じようにエビを感じる声が幾つもあった。
「こんにゃく芋に含まれるトリメチルアミン──って物質が、エビの匂いの源泉らしい」
「へえー」
「こんにゃくまるまんま食べ始めたのって最近だから、マジで気のせいだと思ってた。こんにゃくからエビの匂いすると思わないじゃん……」
「わかる」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「わたしも、◯◯がいうまで、なんかににてるなってしかおもわなかった」
「先入観だよな。エビの匂いなんてするはずないって」
「たぶん……」
読者諸兄にも改めて伝えておこう。
こんにゃくは、エビの匂いがする。
是非、豆知識として披露してみては如何だろうか。





644 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:23:08 ID:I9m.2PP20

2025年10月9日(木)

うにゅほを膝に乗せたまま、ただなんとなく見つけたLSDのプレイ動画を見ていた。
ふと気が付けば、うにゅほも動画に見入っている。
「これなに?」
「LSDってゲーム──ゲーム?だよ」
「げーむじゃないの?」
「ジャンルがドリームエミュレータで、内容もサイケな夢の中を歩くだけのものだからなあ……」
「ゆめなんだ」
「そう。××も好きだろ」
「ゆめのはなしとか、ゆめのまんがとか、すき。つげよしはるすき」
「俺も」
唐突に渋いセンスを持ち出してきたのは、俺がそういう嗜好だからだろう。
完全に影響を受けている。
「なんか、こわーいねー……」
「PS初期の粗い解像度の作品だからこそ、独特の怖さがあるよな……」
「わかる」
「LSDって、幻覚剤のことなんだよ。完全に違法なやつ」
「うえ」
「だから、この夢はカオスでありながらも、かなり不気味に表現されてるんだろうな」
「くりあとか、あるの?」
「いちおう、ある。夢を見て起きると一日経過するんだけど、それが三百六十五日に到達するとエンディングムービーが流れたはず」
「ふんふん」
「まあ、大したムービーでもないし、終わらずに一日目に戻るんだけどな」
「なんか、ゆめにっきみたい」
「ゆめにっき以前の作品だから、因果が逆だな。ゆめにっきがLSDっぽいんだ」
「なるほど……」
「不気味だけど、魅力はあるよな」
「そんなきーする。わたしもすきだよ」
「仲間だ」
「なかま」
だからなんだというわけでもないが。
LSDの動画を見終わったあと、ゆめにっきのMAD動画を見て時間を潰した。
とても有意義だった。






645 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:23:36 ID:I9m.2PP20

2025年10月10日(金)

「──さッむ!」
「さむさむ」
唐突に冷え込んだ。
北海道の十月に相応しい寒さだ。
「冬が見えてきたな」
「みえてきたね!」
「嬉しそう」
「うれしいもん」
うにゅほは、四季のすべてが好きだ。
「秋は?」
「すき」
「冬は、秋が終わらないと来ないんだぞ」
「そだけど……」
「この短い秋を楽しもうと思わないのかね」
「なんのあき?」
「なんの……?」
「どくしょの、とか」
「あー」
そういう秋か。
「スポーツの秋は、違う」
「ちがう」
「読書の秋も、案外違うな。一冊くらいなら読んでもいいけど」
「わたしも、しょうせつ、よもうかな」
「どれ読んでもいいからな」
「うん」
「あとは、食欲の秋か」
「……うん」
「まあ、太らない程度にだな」
「うん」
「他にあったっけ……」
「うーと」
ふたりでうんうん唸りながら考え込むが、答えは見つからない。
結果、Googleで調べることにした。
「──ああ、芸術の秋と行楽の秋か」
「◯◯、げいじゅつしてるね」
「作詞のことか?」
「うん」
「まあ、芸術の秋と言えなくもないか……」
「こうらくって?」
「言ってしまえば旅行だな」
「あー」
「またどっか行きたいけどな」
「うん……」
こちらもまた、お預けだ。
頑張ろう。





646 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:23:53 ID:I9m.2PP20

2025年10月11日(土)

「ほんと、一気に冷え込んだなあ……」
温湿度計を覗き込む。
室温、25℃。
なんだ、暖かいじゃないか──読者諸兄はそんなことを思うに違いない。
だが、前提として、俺の部屋は日当たりが良い。
すこぶる良い。
あまりに良すぎて、つい数日前まで、深夜でも31℃を記録していたほどだ。
そこから一気に6℃も下がったのだから、そりゃ寒いってものである。
当然、昨日からうにゅほも長袖だ。
俺は半袖だから寒いのだった。
「◯◯、うえ、きればいいのに」
「そうなんだけどさ」
「わたし、もってくる?」
「いやー……」
寒いし、手間もない。
だが、明確な理由もなく、ただなんとなく着たくないだけなのだ。
我ながら不可解である。
「きないの」
「まあ、いいかな」
「そか……」
「ほら、××抱き締めて暖取れるし」
「それは、それ」
しっかりしている。
話をずらすことにしよう。
「××、萌え袖やってみて」
「もえそで?」
「こう──」
実践しようとして、できないことに気が付いた。
「こう、袖で手が隠れてる状態、というか」
「あー」
心当たりがあったのか、うにゅほが頷く。
「これだ」
うにゅほが、わざと袖を余らせ、膝の上でこちらを振り返る。
可愛い。
「可愛い」
心の声と実際の声とが完全に重なった。
「うへー……」
うにゅほが、すこしだけ照れる。
萌え袖女子と密着とは、俺も隅に置けないものだ。
自分が恵まれていることは、時折確認しておくべきだろう。





647 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:24:10 ID:I9m.2PP20

2025年10月12日(日)

「うぐぐ……」
腰が痛い。
どうやら、寝方が悪かったらしい。
「こしもむ?」
「頼むう」
フローリングにうつ伏せになると、うにゅほが太股を跨ぐように腰掛けた。
「もむよー」
「ああ」
なお、うにゅほのふわふわマッサージは、さっぱり効かないことで有名である。
ただただ心地良く、眠気を誘うだけだ。
「おわり!」
「ありがとな……」
立ち上がり、腰を伸ばす。
痛い。
やはり、うにゅほのマッサージではどうしようもない。
「低周波治療器、使うか……」
「はる?」
「頼むう」
シャツをめくり、腰をうにゅほに向ける。
「はるよー」
「ああ」
ぺた、ぺた。
パッドを腰に貼ったあとは、パソコンチェアに腰掛ける。
外付けのランバーサポートに腰を押し付け、パッドが外れないようにするのだ。
「よし」
低周波治療器の電源を入れると、ピリピリとした痛痒さが腰を襲った。
「あー……」
「きく?」
「効く効く」
「わたしのまっさーじと、どっちきく?」
「──…………」
「──……」
「××のほうが気持ちいいよ」
「うへー」
間違いではない。
気持ちいいのは、うにゅほのマッサージのほうだ。
低周波治療器での治療を終えると、腰痛はだいぶマシになっていた。
ありがとうオムロン。
ありがとううにゅほ。






648 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:24:28 ID:I9m.2PP20

2025年10月13日(月)

うにゅほが、俺の腰を撫でる。
「こし、へいき?」
「平気平気。治った」
「よかったー……」
ほっと胸を撫で下ろし、ほにゃりと笑う。
いつ見ても新鮮に可愛い。
「昨日は寝過ぎだったんだよな。ほら、見てくれ」
iPhoneを手に取り、睡眠管理アプリを開く。
「九時間寝てる」
「すーごいねてる」
「寝れないよりはいいのかな……」
「それは、うん」
「でも、それで腰痛めるのもな」
「それも、うん」
うにゅほが尋ねる。
「きょう、どのくらい?」
「あー、っと」
iPhoneを操作し、確認する。
「五時間くらい、だな」
「ねてないねー……」
「なんかな」
「あした、すーごいねるかも」
「反動で……」
「◯◯、そういうとこある」
「あるなあ……」
「でも、あした、びょういんだから」
「あ」
思い出した。
明日は、月に一度の定期受診の日だ。
「爆睡できないな、こりゃ……」
「はやくねないとね」
「──…………」
「ねないとね?」
「努力はします、努力は」
とは言え、俺は睡眠障害ゆえに、朝方にならないと眠れないのだ。
病院へは午前八時に出発するから、眠れたとしてもせいぜい二、三時間だろう。
「帰ってきて寝るしかないな……」
「おひるねだね」
「お昼寝だな」
サッと行ってパッと帰ってグウと寝たいのだった。





649 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:24:45 ID:I9m.2PP20

2025年10月14日(火)

月に一度の定期受診を終え、愛車に乗り込む。
「ねッむい」
「かえってねよ」
「……でも、腹減った」
「あさごはん、たべてないもんね……」
「××は?」
「たべた」
「だよなあ」
「コンビニよる?」
「んー……」
コンビニで手軽に済ませるよりも、すこしガッツリ食べたい気分だった。
「どこか寄っていい?」
「いいけど……」
時刻を確認すると、午前十時だった。
「この時間だと、たいていのメシ屋は開いてないな……」
「そなの?」
「午前十一時開店ってイメージある」
「あー」
「だったら、二十四時間開いてる店がいいかな」
「よしのやとか?」
「いいな、牛丼」
「ね」
「──あ、そうだ。松屋行こう松屋。近くにある」
「おー」
「たしか、一緒に行ったことあるよな」
「うん、ある。カレーたべた」
「カレー食いたいな……」
「わたし、どうしよう」
「腹減ってる?」
「へってない……」
「なら、悪いけど注文なしで付き合ってくれ。何口かあげるから」
「いいよー」
最寄りの松屋へ向かい、すこし迷ってカレギュウを注文する。
「カレーと、ぎゅうどん?」
「いいとこ取り」
「おとく」
「お得かどうかはわからんけど……」
ともあれ、松屋のカレーは美味い。
当然、行きつけのネパールカレーの店なんかとは比べられないが、手軽にカレーが食べられる店としては、ココイチよりも遥かに好みだ。
「おいしかったね」
「満足だわ。帰って寝る」
「ねよねよ」
帰宅し、すぐさま床に就いた。
牛を食べて牛になりそうな俺だった。






650 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:25:12 ID:I9m.2PP20

2025年10月15日(水)

今日は、うにゅほの誕生日だった。
家族でささやかなパーティを開いたあと、自室へ戻る。
「うへー……」
うにゅほが、待ちきれないといった様子で、俺の袖を引く。
「プレゼント……」
「わかってますって」
引き出しを開き、隠してあった小さな包みを取り出す。
「はい。誕生日、おめでとうな」
「ありがと!」
包みを受け取ったうにゅほが、逸る心を抑えつつも、丁寧に包みを開けていく。
出てきたのは、小指の爪ほどの大きさのガラス細工がふたつ。
ティアドロップのガラスは、角度によって、ピンクや黄色、緑色などに色味を変える。
「わ、きれい」
「綺麗だろ」
「でも、これなに?」
「イヤリングだよ」
「いやりんぐ!」
うにゅほが目をまるくする。
「えと、その。みみ、あなあける……?」
「それはピアス」
「ぴあす」
「ピアスは、耳に穴を開けて着ける。イヤリングは、耳に挟んで着ける」
「あ、そなんだ!」
ほっと胸を撫で下ろしながら、うにゅほがイヤリングをシーリングライトに翳す。
「きれい……」
「××も、イヤリングのひとつくらい、持っててもいいかと思ってさ」
「ふへ、うれしい……」
「着けてみるか?」
「うん!」
うにゅほが俺にイヤリングを渡す。
着けて、という意味だろう。
装着部のネジをゆるめ、開いていく。
「挟むぞ」
「うん」
耳たぶに挟み、今度はネジを締めていく。
「痛かったら言ってくれよ」
「いたくなーい」
大丈夫かな、と思う程度にまで締めて、うにゅほを正面から見つめる。
「──うん、似合うわ」
「ほんと?」
「ほら」
うにゅほを姿見の前まで連れていく。
「おー……」
鏡を覗き込みながら、うにゅほがにまにまと微笑む。
「すてき」
「これにして良かったよ」
「こっちもつけて!」
「はいはい」
化粧っ気のないうにゅほの、ささやかなおしゃれだ。
イヤリングを着けているうにゅほは、なんだか新鮮で、すこしドキドキしてしまう。
「きょう、ずっとつけてる!」
「そうしな。俺も嬉しいし」
「うん!」
家の中であれば、落としてもなんとかなるしな。
うにゅほが喜んでくれて、よかった。






651 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/16(木) 03:25:50 ID:I9m.2PP20

以上、十三年十一ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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