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うにゅほとの生活を書き連ねた日記が十三年と十ヶ月分たまった(2025年9月後半)

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



620 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:30:27 ID:8hF9gf0A0

2025年9月16日(火)

今日は、月に一度の定期通院だ。
眠気を押して病院へと向かい、しばしぼーっと時を過ごす。
気が付けば、うにゅほが俺の手を使って遊んでいた。
「楽しい?」
「ひま」
「わかる」
病院の待合室は、概ね退屈だ。
俺とて、傍らにうにゅほがいなければ、きっと爆睡こいていただろう。
「◯◯、てーかたい」
「そうか?」
自分の手のひらを自分で撫でる。
「硬いかなあ……」
「わたしより」
「××に比べたら、そりゃな」
うにゅほの手を取り、撫でる。
家事万能とは言え、すべての仕事をひとりでこなしているわけではない。
そのため、うにゅほのぷにぷにおてては維持されていた。
「やわい」
「やわいしょ」
「いいなあ……」
「いいのかな」
「……まあ、男はどっちでもいいか」
「そういうもの?」
「そういうもの」
怒る人々がいそうだが、関係ない。
うにゅほと手を揉み合っていると、あっと言う間に名前を呼ばれた。
診察を受け、受付で会計を済ませ、薬局で薬を待つ。
見るからに混んでいたため、呼び出しブザーを借りて車内で待つことにした。
「きょうも、すーごいこんでるね」
「別の病院からも流れて来てるのかな……」
そう考えれば辻褄が合うことも多い。
二、三十分ほど待たされて、ようやく薬を受け取った。
時刻は午前十時になっていた。
まあ、そんなものか。








621 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:30:53 ID:8hF9gf0A0

2025年9月17日(水)

「……書くことが、ない!」
「ないの」
「ない」
「そかー……」
TRPGのセッションがあるため早めに日記を書くことにしたのだが、何も思いつかない。
まあ、たまにはそういうこともある。
慌てたりすることはないが、困るは困る。
「がりがりくん、あたんなかったはなし、する?」
「当たった話にしようぜ」
「あたってない……」
「あと三本はきついか」
「うん……」
やはり、同時に二本当たったのは奇跡だったんだな。
そりゃそうか。
「あたったはなし、したいね」
「読者的には、知らんがなって感じなんだろうけど」
「でも、したい」
「まあ……」
あと三本。
無駄なことを頑張れるのは、人間だけの特権だ。
最近、ブルーピリオドを再読しているので、そういったことに敏感なのだった。
うにゅほと軽く言葉を交わしながらタイピングをしていると、日記が徐々に埋まってきていた。
「お、八割書けた」
「おー」
筆が進まないときは、やはりうにゅほに頼るべきだろう。
文字数は少々少ないが、これで終わりで構うまい。
「ありがとな、××」
「うん」
こういう日があっても、たまにはいい。





622 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:31:16 ID:8hF9gf0A0

2025年9月18日(木)

「……──んがっ」
かくん。
首が上を向き、ヘッドレストに当たる。
相変わらず俺の膝に腰掛けていたうにゅほが、こちらを振り返った。
「おきた」
「寝てた……?」
「ねてた」
「なんか、眠くて……」
「つかれてるのかなー……」
「疲れること、べつに、してないんだけど」
「それはうそ」
「ええ……」
嘘をついているつもりはなかったのだが。
「◯◯、ずっと、なんかつくってる……」
「まあ」
「そうさくかつどうって、あたま、つかうんだって」
「まあ……」
「つかれないのは、おかしい」
「──…………」
否定できない。
「べつに、言うほど疲れは」
「◯◯は、まひしてる」
「そうかな……」
「かんがえてみて」
「ああ」
「わたしが、おんなじくらいのことしても、つかれないとおもう?」
「……あー」
なかなか上手い言い方だ。
「絶対疲れると思う」
「でしょ」
ここで"慣れてるから平気"のカードを出しても、既に反論は用意されていそうだ。
「……わかった。知らんうちに疲れてたんだな」
「そう!」
「寝るかあー」
「ねよねよ」
無理をしない。
これが大切なのである。






623 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:31:41 ID:8hF9gf0A0

2025年9月19日(金)

うにゅほと共に、最後の二本のガリガリ君を開封する。
「あたるかなあ……」
「わからん……」
九月も後半に雪崩れ込み、すこしずつ気温が落ち着いてきた。
いくらなんでもガリガリ君の季節は過ぎただろう。
だが、
「この二本のうち、片方でも当たりが出たら、もう一度だけ買い込もう」
「うん」
当たり棒十本まで、残り三本。
ここまで当ててきたのだから、目標は是非達成したい。
しかし、夏を終えてまでガリガリ君を購入し続けるのは避けたい。
それでは本末転倒だ。
故に、"ここで一本当てれば"が落としどころなのである。
軽く緊張しながら、しゃくしゃくと水色のアイスを食べ進めていく。
俺は、うにゅほよりひとくちが多い。
あっと言う間に棒が露出する。
「ハズレだ……」
「あー……」
こうなれば、うにゅほに賭けるより他にない。
「××、当ててくれ!」
「あてたいけどー……!」
しゃく、しゃく。
小さい口でガリガリ君を囓る。
やがて見えた棒の先端には、何も書かれていなかった。
「……だめかー」
「一夏で十本は、さすがに厳しすぎたか。なんか行けそうだったんだけど……」
「かくりつてきには、どうだったの?」
「ガリガリ君の当たる確率を4%──つまり1/25とすると、250本食べればだいたい六割程度の確率で十本揃う計算になる」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
「よく、ななほん、あたったね……」
「確率の上振れは引いてるよな。続かなかったけど」
「じゅっぽんは、らいねんかな」
「当たり棒、大切に取っておけよ」
「うん!」
今年のガリガリ君チャレンジは終わりを告げた。
来年は三本でいいから、今年よりは随分と楽なはずだ。
とは言え、75本は食べる必要がありそうだけれど。






624 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:32:01 ID:8hF9gf0A0

2025年9月20日(土)

「せんじょうこうすいたい、くるって……」
「ああ、ニュースで言ってたな」
「こわいねー……」
「怖いけど、さすがに大丈夫だろ。たぶん」
「たぶん」
「断言はできないし……」
「そだけど」
ふと想像する。
家の前の公園は、周囲から一メートルほど低い凹構造となっている。
線状降水帯によって雨水が流れ込めば、広めの池になるのではないだろうか。
「……見たい」
「?」
「家の前の公園が池になるところ」
「──…………」
しばし思案し、うにゅほが口を開く。
「みたい」
「見たいよな」
「みたい……」
「線状降水帯には頑張ってもらわないと」
「がんばりすぎ、だめだよ。あぶない。かわ、ちかいし……」
「そうなんだよな……」
我が家から2kmと離れていない場所に、そこそこの太さの川がある。
川が増水し、氾濫したとすれば、被害はかなり甚大になるはずだ。
最悪の場合、床上浸水まであり得る。
「何事もなく済めば、それがいちばんだな。池は見たいけど」
「いけはみたいけど、ぶじにすぎてほしいね……」
公園が池になるところを見たいのは、やはり共通の願望らしい。
うにゅほが小首をかしげる。
「いけになったら、ずっといけなの?」
「そんなことないだろ。すこしずつ水が地面に吸収されていくはずだぞ。蒸発もするだろうし」
「なるほどー」
「世の湖沼は、川やら湧き水やらで水を補給し続けないとすぐに枯れる」
「こしょう?」
「漢字博士気取りました。湖と沼のことです」
「むつかしい……」
さて、明日の朝に公園池は姿を現すのだろうか。
不謹慎ながら、すこし楽しみなのだった。





625 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:32:29 ID:8hF9gf0A0

2025年9月21日(日)

起床し、不謹慎にもわくわくしながら窓の外を見る。
そこには、すこし水溜まりができただけの、普段通りの公園の姿があった。
「あー……」
喜ぶべきだ。
日本各地で線状降水帯による被害が報告されている。
何事もなかったことに感謝すべきだ。
感謝すべきなのだが──
「……うーん」
「いけ、なんなかったね」
いつの間にか隣にいたうにゅほが、すこし残念そうに言う。
「いいことなんだけどな……」
「うん……」
こんな会話を聞かれると、被災者に怒られてしまいそうだ。
「あ、たんさんすいきてたよ」
「マジ?」
現在時刻、午前十一時過ぎ。
普段は午後以降に来るので、少々早い。
「何時ごろに来た?」
「わかんない……」
「まあ、わかんないか」
「でも、たぶん、よるとおもう」
「夜?」
「わたしおきたら、もうあった」
配達の仕事はたいへんだなあ。
ふと気付き、自室のPCで新着メールを確認する。
「うわ、五時半に届いてる……」
「はや!」
配達の仕事はたいへんだなあ。
絶対やりたくない。
「ともあれ、無事にやり過ごせてよかったな。床上浸水なんてされた日には……」
「おとうさん、おこりそう」
「ブチ切れるだろうな」
目に見えるようだ。
床上浸水。
決して取りたくない人生のトロフィーだ。
あとシロアリも取りたくない。
どちらのトロフィーも持ってる人、けっこういるんだろうな。





626 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:32:54 ID:8hF9gf0A0

2025年9月22日(月)

「♪」
自室でのんびり過ごしていたところ、うにゅほが深皿を一枚持って戻ってきた。
「どしたー?」
「なし!」
「梨?」
「なしね、おくられてきてね。ひやしてきったの」
「おー」
「◯◯、おいしいなし、たべたことないって」
「梨って、なんか、最初だけ甘くて、だんだん砂を噛むような感じになってくイメージがあって……」
「そんなことないよ……」
「そんなことないのか」
「うん」
なら、俺の記憶にある梨とはいったい。
「とにかく、たべよ。おいしいよ」
「ああ」
爪楊枝の刺さっていた梨を口に入れる。
シャキッと快い、リンゴにも似た食感。
そして、リンゴのような風味に、リンゴのような味──
「……これ、リンゴじゃない?」
「なしだよ?」
「リンゴっぽい酸味がある」
「んー」
うにゅほが梨を食べる。
「たしかに……」
「よく味わうと、リンゴよりみずみずしい気はする」
「それはする」
「リンゴに似た品種なのかな。近縁種だろうし」
「そうかも……」
目を伏せ、うにゅほは落ち込んだ様子だった。
「あー、いや。リンゴに似てても美味いよ。まずリンゴが美味いんだから」
「でも、なし」
「梨はまた、今度食べよう。買ってもいいし」
「うん……」
梨のひとつやふたつ、大した額でもないだろう。
今度、スーパーに立ち寄ることにした。






627 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:33:16 ID:8hF9gf0A0

2025年9月23日(火)

「お」
「?」
俺の膝の上でこれ以上ないほどくつろいでいたうにゅほが、軽く顔を上げた。
「どしたの?」
「Google検索にAIモードが搭載された」
「えーあいもーど」
わかったような、わかっていないような口調で、うにゅほが俺の言葉をオウム返しする。
「それなに?」
わかってなかった。
「AIが検索補助をしてくれるんだよ」
「えーあい、すごいねえ」
「すごいんだ」
「どうつかうの?」
「試してみるか」
うにゅほのおなかに肘を乗せながらキーボードを叩く。
まず、"梨"で検索してみよう。
エンターキーを押すと同時に、梨に関するさまざまな記述がズラリと表示されていく。
「わ、すごい」
「まだわからんぞ。普通のGoogle検索のほうが使いやすい可能性もあるし」
「なるほどー……」
次に、"梨を使った料理"で検索してみる。
梨のコンポート、タルトにケーキ──それらの情報が見やすくまとめられていた。
情報量こそ少ないものの、ソースとなるページへのリンクが含まれているため、詳しく見たければそちらを参照すればいい。
まず概要を知るという意味で、AIモードはかなり優れていると言えそうだ。
「なし、こんなにいろいろなるんだね」
「リンゴの仲間だもんな」
「うん」
「最後に──」
札幌駅から我が家の住所(条まで)の経路を、公共交通機関なども考慮した上で教えてほしいと入力した。
「わかるかな」
「わかりそうな気がする……」
わかった。
あっと言う間だった。
「わかるんだ……」
「突拍子なくても行けそうだな」
我が家からアンコールワットへの経路を尋ねてみるが、問題なく出力される。
「こりゃ便利だ」
「せいかつ、かわりそう……」
「既にだいぶ変わってるよ」
「そうかも」
AIの進化は止まらない。





628 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:33:41 ID:8hF9gf0A0

2025年9月24日(水)

「明日、大学病院かー……」
仕方ないとは言え、面倒なものは面倒である。
「◯◯、しちじおきだよ」
「起こして」
「いいよ」
うにゅほの起床時間は、概ね午前六時ピッタリだ。
体内時計バッチリである。
「大学病院、そこそこ遠いんだよな。朝だから道混むし」
「みちこむの、やだよね」
「だいぶ焦る」
「わかる」
「採血が八時だから、すこし遅れても問題ないんだけどな」
「うーん」
「前も問題なかっただろ?」
「そだけど」
いくら早く行ったところで、受付は八時にならなければ開かないのだ。
整理券が配布され、その番号の通りに並び、診療開始時間になってようやく人の波が動き始める。
そこまでして早く入ったところで、採血を早く終わらせられる程度のメリットしかない。
どうせ、診察が始まるまで一時間は待たされるのだ。
二十分、三十分と遅れれば多少は問題だろうが、十分程度ではなんの影響もあるまい。
「でも、いちおう、まにあうようにでよ?」
「真面目ちゃんだなあ……」
「いちおう」
「まあ、無理に遅れて行く必要はないし。わかったよ」
「うん」
「七時半だとちょっと怪しいから、七時十五分か二十分程度だな」
「それならまにあうね」
「道の混み具合にもよるけどな。今はまだ雪がないから、渋滞には巻き込まれないと思うけど」
「ゆきあるとき、ひどかったねー……」
「ぜんぜん進まねえ」
「ゆき、すきだけど、みちのゆきはきらい」
「色からして汚いしな」
「うん……」
「まあ、雪自体も決して綺麗なもんじゃないけどな。雪が解けた雪捨て場見たろ」
「すごかった」
雪にはチリなどの不純物が含まれている。
北海道の雪捨て場は十メートル以上の高さの雪山となるのだが、雪は解けるがチリは解けない。
そのため、最終的に泥が残るのだ。
「冬場は通いたくねえなー」
「ねえねー」
北海道、試される大地である。





629 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:34:03 ID:8hF9gf0A0

2025年9月25日(木)

午前七時。
うにゅほに肩を叩かれて起床し、あくびを漏らしながら身支度を整える。
「行くかー……」
「いこ」
手早く愛車に乗り込む。
「ねむ……」
「ねたらだめだよ」
「わかってますって」
パン、と両頬を叩き、愛車のアクセルを踏み込んだ。
向かうは大学病院だ。
「朝メシどうする?」
「わたし、たべた」
「食べたんかい」
「たべるよー……」
「まあ、そうか」
俺と違い、うにゅほは午前六時に起きている。
食べていないほうが変だ。
「コンビニ寄ろうかな」
「じかん、だいじょぶ?」
「余裕だと思うけど……」
そんな会話を交わしながら幹線道路沿いを運転していると、何かが道に落ちていることに気が付いた。
「……?」
道の端だったので、避ける必要はない。
横を通る際に視線をやると、それは、狐の死体だった。
「あー……」
「?」
うにゅほは気付いていない。
「いや、なんでもないよ」
「なにー……?」
「なんでもないです」
「──…………」
あ、不満げだ。
「……狐が死んでたんだよ」
「え」
「愉快な話じゃないだろ」
「そだね……」
「見なくてよかったな」
「……うん」
うにゅほが目を伏せる。
だから言いたくなかったのに。
「──よし、マック寄るか。マック」
「じかんは?」
「余裕」
「おー」
「今は朝マックの時間だぞ」
「おー!」
ドライブスルーで月見マフィンを購入し、セットのハッシュドポテトと共に車内でたいらげた。
そこそこ美味しかった。





630 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:34:25 ID:8hF9gf0A0

2025年9月26日(金)

浴室から戻ってきたうにゅほが、背中の半分ほどまである長い髪を乾かしている。
何気ない光景だ。
だが、今日は、何故かうずうずしてしまった。
「××。今日、××の髪乾かすの手伝っていいか?」
「え、してくれるの?」
「いいぞ」
「やた!」
単に、うにゅほの髪に触れたくなっただけだし。
ドライヤーを受け取り、うにゅほの隣に腰掛ける。
しっとり濡れた髪の毛の感触に官能的なものを感じながら、冷風で乾かしていく。
「♪~」
面倒な作業が省けたからか、それとも俺が髪に触れるのが嬉しいのか、うにゅほが上機嫌で足をパタパタ動かしている。
「相変わらず長いな」
「◯◯、ながいのすき」
「好きですね……」
「それに、みじかくはできるけど、ながくはすぐにはできないから」
なるほど、理に適っている。
概ね乾かし終わり、うにゅほに言う。
「こんなもんでいいか?」
うにゅほが髪の毛を確認し、頷いた。
「いつもより、いいかも」
「そうか?」
「うん」
褒められて嬉しくないはずもない。
「なら、また今度乾かしてあげよう」
「あした!」
「毎日は勘弁してくれ……」
「しかたない……」
うにゅほが、あっさりと引き下がる。
「たまにの、ごほうびだね」
「まあ、そんなもんだ」
だが、なんだかんだと、うにゅほに頼まれればイヤとは言えない俺である。
すぐに見破られて、ほぼ毎日手伝わされそうだ。






631 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:34:45 ID:8hF9gf0A0

2025年9月27日(土)

「……今日、なんか暑くないか?」
「あついー……」
九月も末となり、夏の暑さはどこかへ行ってしまった。
そのはずだった。
「窓開けても暑い……」
「かぜない」
外へ出れば涼しいのだが、その空気が室内へ入ってこないのだから仕方がない。
「エアコンだな」
「うん」
「ガリガリ君食いてえー……」
「かいいく?」
「やめとこう」
「はーい」
暑さと勢いにまかせて、また買い占めてしまいそうだ。
エアコンをつけてしばらくすると、室温が31℃から28℃まで下がった。
「ふー」
俺の膝の上で、うにゅほが息を吐く。
「すずしー……」
「九月も終わりになって、またエアコンを使う羽目になるとはなあ」
「なつ、おそるべし」
「今年の夏は特に……」
「うん」
「そう言えば、でかい蛾あれから見なかったな」
「くすさん?」
「そう、クスサン」
「みなかった」
「道東に住んでる友達は、朝になると道に枯れ葉が落ちてるって言ってたな」
「?」
会話に繋がりが見出せなかったのか、うにゅほが小首をかしげる。
「枯れ葉に見えたのは、鳥に食われたクスサンの羽だったんだってさ」
「ひ」
「鳥って蛾食うんだな。んで羽は残すんだな」
「えいようなさそう」
「たしかに……」
「くすさん、もうでない?」
「あいつらすぐ死ぬから、もういないはずだぞ。たぶん」
「ならよかったけど……」
やはり、でかい蛾のインパクトはすごい。
北海道ではまず見ることのできないサイズの虫だものな。
見たくもないが。
来年は発生するんじゃないぞ、クスサン。





632 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:35:05 ID:8hF9gf0A0

2025年9月28日(日)

従弟が、五ヶ月前に産まれたばかりの赤ん坊を連れて遊びに来た。
慣れない場所に来たせいか、赤ん坊は泣きじゃくるばかりで、結局二十分程度の滞在で従弟は帰っていった。
「はー……」
うにゅほが溜め息をつく。
「あかちゃん、かわいかったねー……」
「まあまあかな」
「まあまあなの?」
「赤ん坊、怖くない?」
「◯◯、あかちゃんこわいの……」
不思議そうな表情で、うにゅほがこちらを見上げた。
「怖いって言うか、苦手。抱っこしてるとき、落としたらどうしようとか、常に"責任"の二文字が頭をよぎる」
「あー……」
多少は共感してくれたらしい。
「だから、出来る限り関わり合いたくないんだよな」
「さんさいくらいは?」
「赤ん坊よりは、まあ」
「ふんふん」
「でも、ちょっとした会話でその子の人生が大きく変わってしまうかもしれないから、やっぱり近付きたくない」
「おおげさ……」
「大袈裟じゃないぞ。絵の大好きな子だったとして、俺がその子の絵をベタ褒めしたとする。どうなると思う?」
「そのこ、うれしい」
「正解」
「?」
「その子は嬉しくなる。でも、動機の純度が明らかに変わるんだ。それまで、ただ好きだから描いていた絵を、褒められるために描くようになる──かもしれない」
「だめなの?」
「一概には言えないけど、褒められるために絵を描くようになった子は、褒められなくなったらどうすると思う?」
「あ」
「そう。絵を描くのをやめる場合がある」
「なるほど……」
「いま話したのは、ほんの一例だ。実際には、影響の与え方は無数にある。何がどうなって運命が決まるかわからないんだよ」
「──…………」
うにゅほが、神妙な顔をしている。
「あかちゃん、ほしかったけど」
「ダメダメ。うちには子育てをする余裕なんかありません」
「そかー……」
すこし残念そうなうにゅほだった。





633 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:35:26 ID:8hF9gf0A0

2025年9月29日(月)

たまたまスーパーに立ち寄ったので、ようやく梨を購入した。※1
冷蔵庫でキンキンに冷やしたあと、うにゅほに梨を切ってもらうのだった。
「♪~」
果物ナイフで綺麗に皮を剥いていくうにゅほに、思わず賛辞を送る。
「器用だなあ」
「◯◯、できない?」
「剥けるけど、××ほど繋がらないかな。最低限食えるって感じ」
「うへー」
嬉しそうだ。
梨を切り終え、深皿に盛る。
「はい、なし」
「じゃ、いただこうかな」
「どうぞ」
見目良くカットされた梨を手に、観察する。
リンゴより輝いており、明らかに水分量が多いのが見て取れる。
梨だ。
さくりと前歯で噛み切り、咀嚼する。
たっぷりの果汁が溢れ出て、口内が爽やかな甘みで満たされる。
「おいしい?」
「美味い」
「なし?」
「梨だな、梨。リンゴじゃないわ」
「でしょ」
「ほら、××も食べようぜ」
「うん」
ふたりで、しばし、梨に興じる。
三切れ目を口に入れたとき、気が付いた。
「……やっぱ、甘みに慣れてきたな」
「それは、うん。あじって、そういうものだから……」
その通りである。
「すな、かむみたいになる?」
「いや、そこまでは。多少甘みは薄れたけど、瑞々しくて美味しいし」
「でしょ」
「俺の思い出の梨が、あんま新鮮じゃなかったのかもな……」
「たぶん」
梨に対するイメージが、すこしだけ変わった。
ただ、ガリガリ君の梨味のほうが美味しい気がするのは秘密なのだった。

※1 2025年9月22日(月)参照





634 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:35:48 ID:8hF9gf0A0

2025年9月30日(火)

「──…………」
「……××?」
「──…………」
「××……」
大学病院の支払い待ちの椅子で、うにゅほが俺の腕に顔を押し付けたまま動かない。
「わかってたことだろ……?」
と言うのも、12月8日か15日に、俺の手術が決定したのだ。
命に関わるものでは決してないし、手術も簡単なものなのだが、うにゅほがこんな感じになってしまった。
うにゅほを引きずりながら支払いを済ませ、駐車場で愛車に乗り込む。
その頃になって、ようやく、うにゅほが復活してきた。
「ぶー……」
「前々から話は出てたんだし……」
「わかってるの。わかってるけどなの」
「まあ、うん」
「あと、にゅういんもする……」
「しますね」
「うー」
「お見舞いに来てくれたらいいから」
「まいにちいく」
「いや、それは父さんと母さんが大変だから」
「まいにちいく」
意志は固いようだった。
「特別個室、また取れたらいいんだけど……」
「うん……」
「あと、Wi-Fi繋げられるようになったらしいぞ」
「べんり」
「便利どころじゃない」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「LINEのビデオ通話がし放題」
「!」
「これなら、お見舞い来れなくても我慢できるだろ」
「まいにちいく」
意志が固い。
「ビデオつうわもする」
やりたい放題である。
「……まあ、入院するのはまだ先だから」
「うん……」
だが、時が経つのは早いものだ。
あっと言う間なんだろうな。






635 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/10/01(水) 18:36:34 ID:8hF9gf0A0

以上、十三年十ヶ月め 後半でした

引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
 



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