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うにゅほとの生活を書き連ねた日記が十三年と九ヶ月半分たまった(2025年9月前半)

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



604 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 18:58:34 ID:I9m6G89k0

2025年9月1日(月)

「はふ……」
午前一時過ぎ、うにゅほがあくびをした。
「寝な?」
「ねるー」
うにゅほが自分のベッドへ向かうのを横目に、ふとあることを思い出した。
「ガリガリ君買いに行かないと」
「あ」
ちょうど備蓄がなくなったのだ。
「明日、車検らしいし……」
「いまのうち!」
うにゅほがすぐさま着替え始める。
「いや、俺だけで──」
「わたしもいく」
目が爛々と輝いている。
止めても無理だな。
「わかった、わかった。一緒に行こう」
「うん!」
実を言えば、うにゅほと深夜のお出掛けは久し振りだった。
用事があるときでも、うにゅほが寝静まったあとに一人で出ることが多いからだ。
「♪っ」
愛車の助手席に乗り込んだうにゅほは、実に楽しそうだ。
「明日、ちゃんと昼寝するんだぞ」
「ねるよー」
「ならよし」
近所のセイコーマートへ向かい、ソーダ味、コーラ味、梨味のガリガリ君を、それぞれ十本ずつ購入する。
合計三十本だ。
「あと、なにかう?」
「甘いもん食いたいな……」
「ひとつだけだよ」
「はい」
俺は、セイコーマートの店内で焼いているチョコチップメロンパンを。
うにゅほは、クッキー生地のシュークリームをそれぞれ購入した。
車でセイコーマートへ向かい、アイスを買って帰ってくるだけの、ほんの十分少々のお出掛け。
それが楽しかったらしく、帰宅してからもうにゅほは随分とごきげんだった。
「……寝ないの?」
「ねむくない」
目が爛々と輝いている。
寝ないな、これは。
仕方がないので、うにゅほが眠くなるまで一緒に遊ぶことにした。
うにゅほが眠りについたのは、実に午前三時を過ぎた頃のことだった。
明日眠いぞ、うにゅほ。







605 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 18:58:54 ID:I9m6G89k0

2025年9月2日(火)

父親が、俺たちの部屋の丸椅子を持っていった。
ベランダにハチの巣があるのだそうだ。
「はち……」
「大丈夫かな」
「おとうさん、さされないかな……」
「刺されるだけなら、まあ」
「まあじゃないよー……」
俺が懸念しているのは、刺された拍子に庭へと落下することだ。
嫌な想像が容易にできる。
ハラハラしながら自室から見守っていたところ、いやにあっさり作業が完了した。
聞けば、ハチの巣は空き家だったらしい。
父親から丸椅子を受け取ったあと、パソコンチェアに腰掛ける。
うにゅほが膝に座るのを待って、口を開いた。
「からっぽでよかったな」
「よかったー……」
「そう言えば、ずっと前、職場のすぐ傍にスズメバチの巣ができててさ」
「わ」
「さすがに無理過ぎるから、区に連絡して駆除してもらったことがあったよ」
「さされなかった……?」
「むしろ気付かなかった。中にスズメバチいたらしいんだけど、何度も下通ってるのに一度も見たことなくて」
「ぎゃくにこわいかも」
「実際そう。いつ遭遇してもおかしくなかった、と言うか、遭遇して然るべき位置に巣があったわけだから」
「うん、よかったね」
「そこだけ抜き出せばそうなんだけど、そもそも職場にスズメバチの巣ができてる時点で運が悪い気もする」
「さされなかったから、よし!」
「まあな」
「◯◯、すずめばち、さされたことある?」
「たぶんないかな。だから、まだ一回刺されても大丈夫」
「あなひらきしー」
「フィラキシーな。アナフィラキシー」
「それ」
「とは言え、刺されても大丈夫だから刺されていいってことにはならないしな。絶対嫌だ」
「さされないでね!」
「スズメバチに言ってくれ」
そもそも見た記憶すら一、二度ほどしかない。
この調子で行けば、スズメバチに刺される前に寿命で死ぬだろう。
AIが寿命を延ばす薬でも開発してくれないだろうか。
期待しています。





606 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 18:59:13 ID:I9m6G89k0

2025年9月3日(水)

「あ」
フローリングの床についた足が、べたつきを感知する。
恐らく、俺とうにゅほのどちらかが、ガリガリ君の一部が剥離したことに気付かなかったのだ。
「××、いったん下りて」
「はーい?」
くつろぎの化身となっていたうにゅほをどかし、足元を調べる。
案の定、変色している部分があった。
ホコリなどを吸着しているのだ。
「がりがりくん、おとしたやつだ」
「たぶんそう。落ちるときはどうしたって落ちるからな……」
「しかたない」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「ぞうきんもってくるね」
「おっと」
きびすを返すうにゅほの手を取る。
「わ」
「必要ないって。これ一ヶ所のためだけにさ」
「じゃあ、どうするの……?」
「こうする」
冷蔵庫を開き、炭酸水を取り出す。
そして、フローリングの変色部分に軽く垂らした。
「あ、みずだから」
「そうそう。二酸化炭素がたっぷり溶けただけの、ただの水。よってベタつかない。すこしもったいないけどな」
「わかる」
とは言え、ほんのすこしだ。
現金に換算したとしても、一円にすら届かないだろう。
一分ほど放置してふやかし、ティッシュで一気に拭い去る。
指で確認する。
「よし、大丈夫だ」
「おー!」
うにゅほが、ぱちぱちと手を叩く。
「がりがりくん、おとさないようにしないとね」
「いちおう気は払ってるつもりなんだけどな……」
だが、つもりはつもりだ。
落ちてしまっている以上、現実を受け止めなければならない。
まあ、落としたのはうにゅほかもしれないけれど。





607 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 18:59:43 ID:I9m6G89k0

2025年9月4日(木)

午前九時ごろ、来客があった。
「んが」
ふらふらとベッドから下り、半分しか開かない目でインターホンに出ようとする。
「あ、わたしでる」
「んー……」
まあ、いいか。
「頼むう……」
「はーい」
ベッドに戻り、再び目を閉じる。
次に気が付いたとき、時刻は既に正午を過ぎていた。
顔を洗い、軽く歯を磨き、自室に戻る。
「××、さっきの誰?」
「めいじさん」
「めいじさん……」
「なんか、もらった」
うにゅほが冷蔵庫を開く。
そこには、瓶のR-1や、見知らぬ乳製品が入っていた。
「あ、meijiか」
「めいじさん。はいたつするんだって」
「ああ、それでか。お試しくださいってやつ」
「そう」
「R-1飲む? 二本あるし」
「のむー」
ふたりで瓶のR-1を飲みつつ、うにゅほから話を聞く。
「他に何か言ってた?」
「いってた」
「なんて?」
「おとうさん、おかあさんは、って」
「──…………」
まあ、言われるか。
実年齢はともあれ、うにゅほ見た目は中学生だからな。
「なんて答えた?」
「しごとです、って」
「ふんふん」
「そしたら、せつめいして、あーるわんとかくれた」
「なるほど」
「びん、かようびにかいしゅうするから、げんかんにおいといてって」
「あー」
そのとき、今度は契約の話をするわけか。
「……××。火曜日はピンポン鳴っても出なくていいぞ」
「そなの?」
「断るの面倒だし」
「そか」
良い商品は良い商品なのだろうが、契約するかどうかは別問題だ。
こちらにその気がない以上は、変に顔を突き合わさないほうが向こうさんも気楽だろう。





608 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:00:02 ID:I9m6G89k0

2025年9月5日(金)

こんにゃくを田楽みそで食べるのにハマっている。
最初は律儀にこんにゃくを薄切りにしていたのだが、だんだん面倒になってきて、今は切らずに丸かじりだ。
うにゅほは、
「わたしきるのに……」
と呆れ顔だったが、田楽みその減りが少なくなるという理由もいちおうある。
今日もおやつにこんにゃくを丸かじりしようと冷蔵庫を開いたところ、田楽みそを切らしていたことを思い出した。
「あー……」
「どしたの?」
「田楽みそがない。あとで買ってくるか」
「あ、わたししってる!」
「何を?」
「うーとね。だいどこの、ひきだしに、あけてないのある」
「マジでか」
「もってくるね」
「頼んだ!」
うにゅほが階下に駆けていく。
ちょうど愛車を車検に出しており、あまり代車を使いたくないのだ。
理由は、軽自動車ではないからである。
駐車にあまり自信がないため、買い物に行かずに済むのであれば、そのほうがいい。
「ただいまー」
「おかえり」
「はい、これ」
「ありがとな」
「うへー」
うにゅほから、未開封のパウチを受け取る。
「……?」
何か違和感があった。
ゴミ箱を漁り、空のパウチを拾い上げる。
「どしたの?」
「なんか、デザインが違う」
「でざいん」
並べて見ると一目瞭然だ。
同じ会社の同じ商品であるにも関わらず、微妙に異なっている。
「ほんとだ」
「んー……?」
ふと、未開封の田楽みその賞味期限を確認する。
2020年6月。
「ええ……」
「?」
「××も、ここ見てみな」
「──あ!」
「出たよ、母さんの不精癖」
そのおかげで、我が家には、賞味期限の大幅に切れた飲食物が点在しているのだ。
「……これ、たべれないね」
「五年前のはな」
「かいものいく?」
「行くかあー……」
と言うわけで、近所のスーパーで向かう俺たちだった。
賞味期限切れの田楽みそは捨てた。





609 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:00:22 ID:I9m6G89k0

2025年9月6日(土)

「……──やっちまった」
体温調節の効かない体と、異常に冴えた意識。
間違いない。
「薬、飲むの忘れた……」
「え!」
うにゅほが目をまるくし、壁掛けのお薬カレンダーを見上げる。
「ほんとだ!」
「お薬カレンダーまでわざわざ買ったのにな……」
結局飲み忘れているのだから、世話もない。
「眠い……」
「ねる?」
「寝れないのわかってる」
「だよね……」
「お薬カレンダー、意味なかったかもな。わざわざ買ったのに」
「んー……」
思案し、うにゅほが口を開く。
「いみあるとおもうよ」
「そうか?」
「のみわすれたか、いつのみわすれたのか、わかる」
「あー」
なるほど、たしかに。
お薬カレンダーは、薬の飲み忘れを完全に防ぐことはできないかもしれない。
だが、飲み忘れの可視化はできる。
それだけでも十二分に価値のあるツールと言えるだろう。
「くすりって、じかんずらして、のんだらだめなの?」
「基本的に、薬を飲み忘れたら、その回の薬はスキップするって考え方みたい。病気にもよるけど」
「そなんだ」
「飲み忘れたぶんを合わせて飲むのは絶対ダメなんだってさ」
「ごはん、いちにちたべれなくても、つぎのひ、ばいはたべないもんね」
「わかりやすいな」
「うへー」
「気付いたのが午前中だったら、ワンチャンあったけど……」
時計を見上げる。
午後七時を過ぎていた。
「さすがに無理だ」
「さすがにむりだー……」
ああ、気分が悪い。
早く薬を飲みたい。
言ってることはアレだが、切実である。





610 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:00:42 ID:I9m6G89k0

2025年9月7日(日)

「たんさんすい、おそいねー……」
「遅いなあ」
Amazonの定期おトク便で、二週間に一度、炭酸水が届くように設定している。
だが、午後五時を過ぎても荷物が届くことはなかった。
「また、ちえん?」
「発送はされてるし、今日中に届くとは表示されてるんだけど……」
「そなんだ」
「まあ、来るだろ。そのうち」
楽観的にそう告げ、汲み置きの水を飲む。
やはり物足りない。
完全に、炭酸水依存症になっていた。
Amazonからメールが届いたのは、七時半のことだ。
「──あ、配達されたって」
「きた?」
「来た来た」
「よかったー」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
置き配を回収するために玄関を出ようとして、異常に気が付いた。
「……あれ?」
「?」
玄関扉が、半分までしか開かない。
理由は明白だった。
「扉の前に荷物置いていきやがった……!」
「えー!」
完全に開かないわけではないが、俺の幅だと出られない。
「……ベランダから出るか」
「あ、まって」
うにゅほがサンダルを履き、扉の隙間からするりと外に出る。
「おー!」
さすがの細さだ。
「はこ、どかすね!」
「頼んだ!」
「んにににに……」
扉の向こうから、うにゅほの頑張る声がする。
一分後、うにゅほが得意げに扉を開いた。
「あいた!」
「ナイス、××。ありがとうな」
「うへー」
「まったく、なに考えてんだ業者……」
なんとかなったし、まあいいか。
二度目があればクレームを入れてやろう。





611 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:01:03 ID:I9m6G89k0

2025年9月8日(月)

「──お、当たった」
ガリガリ君の当たり棒をうにゅほに見せる。
「やた!」
「あと三本か」
「いけるかも?」
「行けるかもしれないけど……」
九月に入り、気温も徐々に落ち着き始めている。
「大量に買うのは、次が最後かもしれないな」
「たしかに……」
一夏で、ガリガリ君の当たり棒を十本。
適当に決めた無茶な目標だったにも関わらず、気付けば実現可能なところまで来ている。
ここまで来たら達成したいものだが、さすがに難しいだろうか。
「がんばろうね」
「アイスって頑張って食うものじゃないと思うけどな」
「そだけど!」
「ははっ」
思わず笑みがこぼれる。
「アレクサ、今週の気温教えて」
デスク下のEcho Dotが返事をする。
「向こう一週間の──」
週間天気予報を確認し、呟く。
「さすがに真夏日はないか……」
「でも、まだ、あついね」
「暑いってほどではないけど、夏日はあるな」
「なつびあるなら、なつ」
「そうかな、そうかも……」
「なつ!」
意地でも当たり棒十本を達成したいらしい。
「十本揃ったら、何する?」
「うと」
うにゅほが、軽く思案する。
「ならべる……?」
「まあ、並べるな」
「それだけ……」
「コレクションなんて、そんなもんだよ」
「たしかに」
2025年の夏の思い出として、大切に取っておく。
それで十分だろう。





612 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:01:22 ID:I9m6G89k0

2025年9月9日(火)

病院からの帰途、スーパーマーケットへと立ち寄った。
散髪をするためだ。
「まえにきったの、いつだっけ」
「家出る前に日記で調べておいたんだけどさ」
「うん」
「四月末だったわ」
「よんかげつたってる!」
「道理でもさもさしてくるはずだよ……」
髪を切るたび、次は来月だ、来月来ようと心に決める。
だが、結局は毎回こんな感じだ。
カットハウスへと辿り着き、チケットを購入する。
俺は、ぼそりと呟いた。
「……千五百円になってる」
「ほんとだ……」
「じわじわ上がってるな……」
「うん……」
そのうち理容室と変わらなくなるのでは。
「じゃあ、××。悪いけど」
「はーい」
付き添いがブース内で待つことは禁じられている。
ここがスーパーマーケットでよかった。
おかげで、うにゅほが暇にならずに済む。
しばらく待つと順番が来たので、適当に注文を行う。
ある程度短ければ、それでいいのだ。
うとうとしていると、あっと言う間に散髪は終わった。
理容師が、モップで、俺の髪の毛を集めていく。
その毛量がとんでもなかった。
もっさもさである。
ふと視線を感じ、右を見る。
うにゅほが、ブースの中を窺っていた。
視線と顎で、まとめられていく髪の毛を指し示す。
うにゅほが微笑むのがわかった。
散髪を終え、うにゅほと合流する。
「俺の髪の毛、見た?」
「みた! すごかったー」
「あんだけ生えてたんだな……」
うにゅほが俺の後頭部を撫でる。
「さっぱししたねえ」
「次に切るのは来年かな」
「ありえる」
早めに散髪したいのだが、"したい"と"する"のあいだには大きな隔たりがある。
まあ、たぶん、来年くらいになるんだろうな。





613 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:01:42 ID:I9m6G89k0

2025年9月10日(水)

家事万能のうにゅほは、掃除も得意だ。
俺たちの部屋どころか、家中を掃除している。
同じく綺麗好きの父親と共に掃除機を掛けている姿をよく見掛ける。
だが、すべてを任せきりにするのは違うと思うので、二階のトイレだけは俺の分担ということにしている。
「──さて、と」
トイレがすこし汚れている気がしたので、今日は掃除をすることにした。
まずは水を空流ししたあと、陶器用の汚れ落としシートを手にトイレに右手を突っ込む。
トイレ掃除のコツは、躊躇しないことだ。
手は後で洗えばいい。
なお、怪我をしているときは厳禁である。
黒ずみをすべて除去したあと、新品のトイレクリーナーを開封する。
30枚入りのものだ。
さて、まずは一枚とばかりにトイレクリーナーを、
「……え?」
抜き取れなかった。
具体的に言えば、つまんだところから千切れてしまった。
「はァー?」
ちいかわのうさぎが潰れたような声を上げながら、トイレクリーナーを取り出そうと頑張る。
だが、ぶちぶちぶちぶち千切れに千切れる。
まるまる一枚を取り出すことすら、まったくできない。
「どしたの?」
扉を開けたまま掃除をしていたので、うにゅほが覗き込んで尋ねた。
「これ!」
うにゅほにトイレクリーナーを見せる。
「え、ぼろぼろ……」
「薄すぎるんだか脆すぎるんだか、ぜんぜん抜き取れないんだよ……」
「えー……」
「××も試してみ」
「うん」
うにゅほが試すが、やはりダメだ。
五枚ほど無駄にしたあと、ようやく一枚無傷で取り出すことができた。
「ぱんぱんでとれなかったんだ」
「パンパンでも取れる強度にしないとダメだろ」
「わたしもそうおもう……」
さては母さん、やっすいの買ってきたな。
「……ま、いいや。続きだ続き」
「がんばって」
「おう」
トイレ掃除をしたあと、嫌と言うほど手を洗い、自室に戻った。
うにゅほが膝に座るのだし、清潔にしなければ。




614 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:02:07 ID:I9m6G89k0

2025年9月11日(木)

「ねむーい……」
これは、うにゅほの言葉ではない。
残念ながら俺の台詞だ。
「スッゲ眠いんだけど、なんだこれ」
「ねる?」
「仮眠はするかな。シャクティマット敷いて」
「あのいたいの……」
「シャツ越しなら行けるって」
「いきたくない」
相当なトラウマを被ったようである。
うにゅほが話題を戻す。
「また、ねてないんでしょ」
「そんなこともないんだけど……」
「みして」
うにゅほにiPhoneを奪われる。
と言っても、自ら手渡しているのだが。
「あれ、すーごいねてる……」
「だろ。最低でも七時間は寝てるんだ。飛び飛びだけど……」
「なんでねむいのかな」
「……作業量かなあ」
「さぎょうりょう」
「今、投稿用の動画を作ってるじゃん。××が寝てるとき、たいてい作業してるから」
「しすぎ!」
「そうかな」
「◯◯、なんでもしすぎ。どうがつくるの、すきじゃないっていってたのに」
「完成したら達成感はあるけど、過程は普通だな。誰かに丸投げできるんなら、是非とも投げたい」
「やっぱし……」
「結局は、門外漢が独学でなんとかかんとか自転車操業してるだけなんだよな。かと言って、ちゃんとしてるところに頼めば、いくら飛んでいくか……」
「こわいね」
「怖いな」
結局、自分でMVを作るしか道はない。
最近は素材をAIで作ることができるようになったため、それでもかなり楽にはなった。
いずれ動画師に頼んでみたいものだ。




615 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:02:27 ID:I9m6G89k0

2025年9月12日(金)

「──Nano Bananaがヤバい」
「なのばなな?」
「そう」
「どんなばなな?」
「Googleの画像生成AIのことなんだけど……」
「ばななじゃなかった……」
「××、ほら」
Stable Diffusionで生成したTRPG用の立ち絵を見せる。
「これ、なのばなな?」
「これは違うやつ」
「ふんふん」
「これをNano Bananaに突っ込んで──」
雑にプロンプトを書き、二、三十秒ほど待つ。
すると、そのキャラクターが美味しそうに朝食をとっている画像が生成された。
「え」
「すごいだろ」
「すごい、けど、どのくらいすごいの……?」
「そうだな。まず、キャラクターの認識力と再現力が段違いだ。シャツの模様まで再現されてるだろ」
「うん」
「これは、俺がよく使ってるStable Diffusionでは難しいんだ」
「できないの?」
「不可能ではない。同じキャラクターを十数枚用意して、学習させて、LoRAってものを作れば再現はできる。でも、これはそういうレベルじゃないだろ」
「うん……」
「他にも──」
立ち絵に別の表情をさせたり、別のポーズを取らせたり、ちびキャラにしてみたりと、いろいろ試してみる。
「なんでもできる」
「画像をふたつ用意すれば、一緒にいるイラストも生成できるぞ」
「これ、しゃしんもできるの?」
「できるはず」
「じゃあ、わたしのしゃしんと、◯◯のしゃしん、よみこませたら」
「手を繋いでる写真とか作れるぞ」
「すごい!」
「すごいけど、普通に撮ればいいじゃん」
「そだけど!」
Nano BananaはAI画像生成界隈に革命を起こしたと言っていい。
どこまで行くのか楽しみだが、やはり怖くもあるのだった。




616 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:02:46 ID:I9m6G89k0

2025年9月13日(土)

「◯◯ー……」
「はいはい」
風呂上がりでほこほこしたうにゅほが、濡れ髪もそのままにこちらへやってくる。
「みみ、また、へんなった」
「耳?」
「みずはいったみたい……」
「あー」
まれによくある。
「自然に蒸発させるのが、いちばん安全な方法らしいんだけど……」
「きになる」
「気持ちはわかる。歯とかカチカチしたら、めっちゃ響くんだよな」
「ひびくー……」
本人がこう言っているのだから、仕方がない。
「じゃあ、呼び水するか」
「よびみず?」
「前にやった方法だよ。耳に水入れるやつ」
「あれ、よびみずだったんだ」
「そうだぞ」
「へえー」
なんでもない会話を交わしながら、うにゅほと共に洗面台へとやってくる。
「変なほうの耳を天井に向けて」
「はい」
うにゅほが右耳を上に向ける。
右手を濡らし、そのまま、うにゅほの右耳へと水滴を垂らした。
「うい!」
驚く声が可愛い。
「さ、これで大丈夫なはずだけど……」
うにゅほが顔を上げ、右耳を床に向けて頭を揺らす。
「お」
かちかちと歯を打ち鳴らす。
「なおった!」
「よかったよかった」
「なんで、なおるのかなあ……」
「文字通り呼び水だよ。たぶん表面張力かなんかで鼓膜にひっついた水を、より多くの水で巻き込むんだ」
「ふんふん」
「たぶん、だけどな。間違ってはいないと思うけど」
「なるほどなー」
豆知識おじさんなのだった。





617 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:03:06 ID:I9m6G89k0

2025年9月14日(日)

最後のガリガリ君を何度か囓り、棒の表面を確認する。
「ハズレだ」
「はずれかー……」
「残念だなあ」
「うん……」
夏のあいだに当たり棒を十本集めたかったのだが、そう上手くはいかないらしい。
「がりがりくん、まだかう?」
「まだ暑い日はあるし、買ってもいいけど」
「つぎ、さいごだね」
「最後だな……」
次の大量購入で三本当たらなければ、さすがに諦めるべきだろう。
九月の上旬までは夏だと言い張れても、それ以上は厳しい。
「あたるかなあ……」
「確率だけで言うなら、難しいかな」
「やっぱし」
「でも、俺と××とで同時に二本当たったこともあったじゃん」
「あれ、すごかった」
「あんな感じで奇跡が起これば、かな」
「きせき、おこってほしいな」
ガリガリ君の当たり棒を十本集めたところで、何があるわけでもない。
単なる自己満足だ。
だが、それでいいのだ。
それがいいのだ。
2025年の夏の思い出には、確実になるのだから。
「あのね」
「うん?」
「わたし、かんがえたの」
「ほう」
「がりがりくんのあたりぼうって、はこに、いっぽんしかないんじゃないかな」
「あー」
十分にあり得る仮説だ。
「だから、おなじおみせでおなじあじかうと、おおくていっぽんかもしれない……」
「別の店で半分ずつ買えば、それを避けられると」
「うん」
「なるほど。そうしてみるか」
「うん!」
くだらないことを真剣にやってみる。
大人には、きっと、そんな心の余裕が必要なのだと思った。





618 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:03:28 ID:I9m6G89k0

2025年9月15日(月)

近所で開店したばかりの丸亀製麺で、昼食をとることにした。
「ならんでる……」
「並んでるなあ」
開店直後だし、祝日だし、混み合うのは仕方がない。
「どうする?」
「ならぶ!」
男らしい宣言だった。
「よし、並ぶか」
「うん」
雑談しながら待っていると、案外すぐに自分たちの番が来た。
ふたりでお揃いの焼きたて肉うどんを注文し、トレイを滑らせていく。
「エビ天はいるだろ」
「いる」
「天ぷらでいちばん美味いからな……」
そう言えば、エビ天を十年間食べられなくなったYouTuberがいたっけな。
「わたし、おいなりさんたべる」
「丸亀の三角のいなり寿司、やたら美味い」
「わかる」
こうして代金がかさんでいく。
上手い商売形態を思いついたものだ。
肉うどんを堪能し、店を出る。
「美味かったなあ……」
「おいしかった!」
「今度は別の食べたいかもな」
「でも、はえいた」
「……いたな」
うどんに触れたわけではないのだが、どうしたってイメージは悪い。
「おみせ、やってるとき、たたけないもんね……」
「キンチョールも無理だな。成分がうどんにかかりでもしたら、評判落ちるってレベルじゃない。墜落だ、墜落」
「たいへんだ……」
「ほんとにな」
飲食店は本当に大変だ。
そう思った。





619 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/16(火) 19:04:15 ID:I9m6G89k0

以上、十三年十ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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