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うにゅほとの生活を書き連ねた日記が十三年と九ヶ月分たまった(2025年8月後半)

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



587 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:17:06 ID:mZ3ievxU0

2025年8月16日(土)

駿河屋からメールが届いた。
「査定終わって、入金するってさ」
「なんか、すーごいじかんかかったね」
「駿河屋自体にトラブルがあったらしい」
「そなんだ」
「急いでないから別にいいけど、千円くらいおまけしてくれないかな」
「くれなさそう……」
「たぶん、してくれない」
「だよね」
そんな会話をしながら、ふとあくびを漏らす。
「ねむい?」
「まあ、うん」
俺の反応に何かを感じ取ったのか、膝の上のうにゅほがこちらを振り返る。
「……ねた?」
「寝た寝た」
「なんじかんねた?」
「──…………」
「はい」
うにゅほにiPhoneを渡される。
睡眠管理アプリで確認しろ、ということだ。
「えー……」
アプリを開き、読み上げる。
「……一時間半、ですね。はい」
「ねてない!」
「ちょっとは寝た」
「なんでねてないの……」
「歌詞書くのが楽しくなっちゃって」
「いいけど、だめだよ。ねないと」
膝から下りたうにゅほが、俺の手を引く。
「ねる!」
「はい……」
「まったくもう」
「すいません……」
作詞にしろ、執筆にしろ、動画制作にしろ、創作活動を行っていると睡眠時間が削れていく傾向にある。
気を付けなければ。







588 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:18:20 ID:mZ3ievxU0

2025年8月17日(日)

日曜の午後。
うにゅほを膝に乗せたまま、怠惰の限りを尽くしていた。
「そう言えばさー」
「んー?」
「俺、日記書いてるじゃん」
「かいてる」
「もうすぐ五千回なんだよね」
「ごせん!」
うにゅほが目を回す。
「すーごいかいたね……」
「自分でも引く」
「いちまんかいまで、おりかえしかー」
「……あんま想像したくないな」
「うん……」
十四年後の自分はどうなっているだろう。
もしここにタイムマシンがあったとしても、俺はきっと乗ることはないだろう。
いや、未来変えていいなら乗るか。
我ながら現金である。
「ごせんかい、なにかやるの?」
「特に考えてないな……」
「もったいない……」
「俺の日記は、××と過ごす日常を垂れ流すものだからさ。××にとっては日記の回数なんて関係ないわけだし」
「かんけいなくないよ、わたしのにっきでもあるもん」
うにゅほが苦笑し、目を逸らす。
「ぜんぜん、ぜんぶ、よめてないけど……」
「いいのいいいの。そもそも誰かが全部読むってことを想定してないフォーマットだし」
「ぜんぶよんでるひと、いるのかな」
「いるよ」
「いるんだ!」
「ありがたいことに……」
「すごい」
「物好きとも言う」
「こら」
冗談めかしたこぶしで、頭をこつんと叩かれた。
そんなことの一つ二つに、俺は幸せを感じるのだ。






589 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:18:37 ID:mZ3ievxU0

2025年8月18日(月)

「──あ、やべ」
「?」
「明日、病院じゃん……」
うにゅほが小首をかしげる。
「やばいの?」
「家の前、下水管工事してる」
「あ!」
「出られっかなあ……」
「どうかなあ……」
よりにもよってのタイミングで工事を始めてくれたものだ。
とは言え、絶対に必要な工事ではある。
現場の人々に文句を言うつもりは毛頭ないが、車を出せなかったらどうしよう。
「……まあ、なんとかなるか」
「なる?」
「なるなる。たぶん。ならなかったらそんとき考えよう」
「らっかんてき……」
「考えるのを放棄したとも言う」
「ほうきしないで」
「でも、考えてどうにかなることでもないからなあ」
「それは、うん」
「明日になってみないと」
「だせなかったら、どうするの?」
「タクシーとか……」
「たくしー」
「お金はかかるけど、仕方ない。背に腹は代えられないからなあ」
「そだね……」
「××って、タクシー乗ったことあったっけ?」
「んー」
しばしの思案ののち、うにゅほが答える。
「ないかも」
「ないんだ」
「たぶん……」
「明日が初めてのタクシーにならないといいな」
「ほんとに……」
無事に病院へ行けたかどうか、明日の日記で報告しよう。






590 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:19:40 ID:mZ3ievxU0

2025年8月19日(火)

「よし、行くか」
「はーい」
午前八時、家を出る。
下水管工事はまだ始まっていない。
愛車をガレージから出すことはできそうだ。
「ただ、問題は帰りなんだよな……」
「こうじ、はじまってるもんね」
「しゃーない。工事が終わるまで、どっか適当なとこに停めよう」
「いいの?」
「このへん、駐車禁止じゃないしな」
「そか!」
愛車に乗り込み、病院へと向かう。
いつものように待たされ、薬局で薬を受け取ったのは午前十時のことだった。
「づがれだー……」
「おつかれさま」
「××は疲れてないのか……?」
「つかれたけど……」
「じゃあ、お疲れさま」
「うん」
来た道を戻り、帰途につく。
家の前の道が封鎖されていたので、適当に駐車して帰宅した。
「こうじ、おわったら、くるまとってこないとね」
「だなあ」
そんな会話をしていると、うにゅほがふと小首をかしげた。
「ね、◯◯」
「うん?」
「げすいかん、こうじしてるのに、といれながしていいの……?」
「──…………」
なるほど。
「たぶん、大丈夫なんだよ。ダメだったら言うだろ」
「そだけど」
「下水の迂回路を作るんじゃないかな。迂回させてるあいだに下水管を交換して、また下水の流れを戻す」
「あー」
「それくらいしか思いつかないな……」
「あってるきーする」
「かもな」
しかし、大変な工事だ。
こんな夏場にする仕事じゃないよな。
工事に従事する人たちに心の中で敬礼を送り、俺はガリガリ君を貪るのだった。






591 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:20:00 ID:mZ3ievxU0

2025年8月20日(水)

「んご」
午睡から覚め、目を開く。
気配に気が付いたのか、たまたまか、うにゅほが自室の寝室側を覗き込んだ。
「あ、おきてる」
「おはよう……」
「おはよ」
三十分。
午睡と言うより仮眠だから、頭はスッキリしている。
ゆっくりと身を起こそうとして、
「いだだだ」
背中に鈍痛のようなものが走った。
「それはいたいよ……」
うにゅほが、呆れたように言う。
鋭いトゲが無数に付いたシャクティマットを敷いて仮眠をとっていたのだった。
「みして」
うにゅほが俺のシャツをまくり、背中を見る。
「わ」
「どうなってる?」
「ぽつぽつへこんであかくなってる……」
集合体恐怖症には厳しそうだ。
「いたくないの?」
「シャクティマットにもだいぶ慣れてきてな」
「なれるんだ……」
「シャツがないと無理だけど」
「むりしたらだめだよ」
シャクティマットとのファーストコンタクトがよほど痛烈だったのか、うにゅほはやたらと心配してくれる。
「大丈夫だって。むしろ、気持ちいいって思える境地に入ってきたかも」
「えー……」
「いやマジで」
「ほんとになるんだ」
「腰とか背中痛いとき、恋しくなる」
「あ、それはわかるかも」
「なんだかんだ、買ってよかったかもな」
「うん」
「……××はやらない?」
「やらない」
決意の固いうにゅほなのだった。





592 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:20:47 ID:mZ3ievxU0

2025年8月21日(木)

「──ああ、そうだ」
「?」
俺の膝に腰掛けたうにゅほの頭を優しく撫でる。
「日記、今日ので5000回なんだよ」
「おー!」
うにゅほが、ぱちぱちと手を叩く。
「きょうなんだ」
「今日です」
「きねんびだね!」
「8月21日か……」
軽く思案し、思い至る。
「××、バニーガールになってくれ」
「なんで」
「バニーの日だから……」
「あるの? あるならきるけど……」
「あるわけないだろ」
「うん」
当然だった。
「なにかしたいねー」
「正直、何も考えてない」
「かんがえよう……」
「だって、5000回も日記を頑張って書いたってより、普通に生きてたら勝手に5000回になってたって感覚なんだもん」
「あー」
「どこか他人事と言うか……」
「でも、ごせんかいだし」
「なら、そうだな──」
うにゅほを抱き締めるようにして、キーボードに指先で触れる。
「今からここに書くこと、読んでくれよ」
「うん」
コトコトと文章を入力していく。
「はい」
「よんだよ?」
「……音読してくれ」
「はい」
うにゅほが口をひらく。
「えと、ごせんかい、ありがとうございます。
 にっきをつづけてこられたのも、ひとえに、どくしゃしょけいが、ほんにっきをよみつづけてくれたおかげです。
 うにゅほとのせいかつは、どちらかがしぬまでつづきます。
 これからもごあいこのほど、よろしくおねがいします」
「よし」
「これでいいの?」
「ああ。これで日記に書ける」
「これしないと、かけないの、たいへんだね……」
「日記だからなあ」
ともあれ、5000回はひとつの区切りと言って差し支えない。
次は10000回を目指して頑張ろう。





593 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:21:15 ID:mZ3ievxU0

2025年8月22日(金)

午前五時半のことだ。
作業のために徹夜でPCに向かっていたところ、
──ぴんぽーん
「は……?」
不意にインターホンが鳴った。
「んに」
のたくたとうにゅほが起き出してくる。
「らにー……?」
「誰か来た」
「だれ?」
「わからんけど、母さんが出たっぽい」
「そなんだ……」
「──…………」
「?」
緊張した俺の様子に、うにゅほが小首をかしげる。
「どしたの?」
「ああ、いや」
「……?」
「警察は、早朝に来るって聞いたことがあって」
「けいさつ」
「警察」
「◯◯、なにかしたの……?」
「してない。してないけど、冤罪とかあるじゃん……」
「えんざい、こわいけど」
しばし一階の気配を窺うが、特に不穏な様子はない。
「けいさつじゃないね」
「だったら誰だろう。いくらなんでも常識ないだろ。五時半だぞ、まだ」
「◯◯、またてつやしてる……」
「……××と一緒に起きたのかもしれないじゃん」
「うそってわかる」
「嘘だけどさ」
「わたし、したいってみるね」
「ああ」
しばし待っていると、うにゅほがパタパタと戻ってきた。
「おとなりさんだった」
「何故こんな時間に……?」
「とうきびもらったって」
「何故こんな時間に……?」
「わかんないけど」
「わかんないんかい」
ボケてんじゃないだろうな。
ともあれ、何事もなくてよかった。
なお、茹でとうもろこしは甘くて絶品だった。





594 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:21:43 ID:mZ3ievxU0

2025年8月23日(土)

今日も今日とて、ふたりでガリガリ君を貪り食っていた。
「──あ、当たった」
「ほんと?」
「ほら」
うにゅほに当たり棒を見せる。
「よんほんめだ!」
「あと六本だな」
「うん!」
なんとなく、この夏のあいだに当たり棒を十本集めることになっている。
既に八月も下旬だから、難しいとは思うが。
「あ」
「?」
「あたった!」
「え、マジ?」
「ほら!」
確認する。
「マジだ……」
「どうじにあたるの、すごいね!」
「宝くじでも買うか?」
「あたんないとおもう」
「夢がないな……」
俺も当たらないと思うけど。
「ごほんめだ!」
急に、当たり棒十本の達成が現実味を帯びてきた。
「ちゃんと洗って干しておかないとな」
「うん。たべたらあらうね」
当たり棒を交換する際には、しっかりと水洗いし、干したあと、ラップやビニール袋に包んだ上で販売店に持ち込む必要がある。
俺たちは交換するつもりはないが、単純に不衛生だ。
「♪~」
うにゅほが、膝の上で、機嫌よさそうに鼻歌を歌う。
こんな小さなことで幸せを感じられるのは、実に素晴らしいことだ。
「……いや、二本同時はかなり珍しいか?」
「めずらしいよー」
ガリガリ君が当たる確率は、約4%だと言われている。
それが二本同時に当たるとなれば、約0.16%だ。
相当珍しいことに違いはない。
「……やっぱ、宝くじ買うか」
「あたんないとおもう……」
「まあ、うん」
気が向いたら買おう。





595 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:22:17 ID:mZ3ievxU0

2025年8月24日(日)

扉を開き、玄関フードを覗き見る。
炭酸水が届いていた。
本来、三箱届くはずのものが、一箱だけだ。
ダンボール箱を抱えて二階へ上がり、自室に戻る。
「あ、とどいた?」
「届いてた。でも、一箱だけだった」
「あとでくるのかなあ……」
「かもな」
別の宅配業者で届くのだろうか。
まさか、二度も三度も同じ人が来るわけではあるまい。
そんなことを考えながら昼が過ぎ、夜を迎え、ふと思い出した。
「……炭酸水、届いてなくないか?」
「とどいてるのかも」
「いや、届いたらメール来るようになってるから……」
「きてない?」
「一箱分は届いてる」
「にはこは……」
「来てない」
何かトラブルがあったのだろうか。
Amazonのサイトを開き、注文履歴を確認する。
「"遅延が発生、まだ出荷が完了してません"──だって」
「えー!」
「困る」
「こまる……」
俺とうにゅほは、炭酸水で水分を補給している。
水を飲めばそれで済む話なのだが、単純に、炭酸水のほうが美味い。
そのため、なるべく炭酸水を切らしたくないのだ。
「ひとはこでもとどいて、よかったね」
「残りの二箱が届くまで、なるべく持たせないとな……」
「うん」
いつ届くか、それが問題だ。
一週間くらいなら、節約すれば耐えられる。
だが、二週間ともなれば、そもそも次の定期おトク便が届いてしまう。
頑張れAmazon。
俺たちの水分補給のために。





596 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:22:41 ID:mZ3ievxU0

2025年8月25日(月)

うにゅほが炭酸水を飲んでいる。
「××、ちびちび飲むよなあ」
「うん」
「なんか可愛い」
「うへ」
「でも、それで水分補給できてるか……?」
「だって」
口を尖らせながら、うにゅほが答えた。
「いっきにのんだら、げっぷでる」
「あー」
そう言えば、うにゅほのげっぷってほとんど聞いた覚えないな。
「気にしてたんだ……」
「きにするよー」
「俺は気にしないのに」
「◯◯がげっぷするのは、わたしもきにしないけど、わたしがげっぷするのは、わたしがきにするの」
「なるほど……」
わからんでもない。
「炭酸水、その飲み方で美味しいか? ビールじゃないけど、のど越しを味わう部分もあると思うんだよな」
「ふつうのみずより、おいしいよ」
「それはそうだけどさ」
「げっぷ、したくない……」
「乙女だなあ……」
「おとめだよ」
「なんか、悪い気するな。××の前で炭酸水がぶ飲みするの」
「きにしないでいいよー……」
「気にするなってんなら、しないけどさ」
「うん。きにしないで」
「わかった」
うにゅほがそう言うのであれば、気にするほうが間違っている。
俺は、うにゅほが飲んでいたペットボトルを受け取り、そのままがぶがぶ飲み下した。
「げふ」
「げっぷでた」
「俺がいないときとか、こうやって飲んでみな。美味いから」
うにゅほが小首をかしげる。
「◯◯がいないとき……?」
「風呂入ってたりとか」
「あー」
せっかくだし、炭酸水の本当の美味しさを知ってもらいたいものな。
うにゅほのげっぷも聞いてみたいが、恐らく嫌がられるので我慢することにしよう。





597 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:22:58 ID:mZ3ievxU0

2025年8月26日(火)

シャワーを浴び終え、自室で髪を乾かす。
「あのさ」
「?」
「大したことじゃないんだけどさ」
「うん」
「二回、体洗った気がする……」
「にかい?」
「ああ」
「きたなかったの?」
「いや、途中で洗ったかどうだかわからなくなっちゃって」
「──…………」
俺の額に、うにゅほの手が当てられる。
「ねつない」
「風邪でぼーっとしてた、とかではなく」
「だいじょぶ……?」
「大丈夫だって」
変に心配を掛けてしまった。
「ほら。俺さ、風呂場で考え事するじゃん」
「いってたきーする」
「特に、目を閉じて体を洗ってるとき、いろんなアイディアが浮かぶんだよ」
「ふんふん」
「で、考え事にかまけてたら──」
「わすれちゃったんだ」
「そういうこと」
「なるほどー……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「びっくしした」
「すまん」
「そんなにしゅうちゅうするんだね」
「風呂場ではな」
「なんでだろ……」
「たぶん、目は閉じて情報をシャットアウト、かつ両手は半自動で体を洗うから、頭がぽっかり空くんだと思う」
「わたし、それなんないなー」
「人によるんだろうな」
「うん」
体を洗わずに出るより、二回洗って出るほうが衛生的だ。
こういうことは時折あるので、そのたび二回洗っている俺だった。





598 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:23:18 ID:mZ3ievxU0

2025年8月27日(水)

所用で外出した帰り道のこと、家の近所に見覚えのある看板が立っていることに気が付いた。
「あ!」
「丸亀製麺じゃん!」
「まるがめだ!」
「ここに丸亀できんのか……」
近所がどんどん豊かになっていく。
素晴らしいことだ。
店構えは既に堂々としているが、開店はまだ先のことらしい。
「たのしみだね!」
「何食おっかな……」
「きーはやいよー」
「ははっ」
車内でふたり、笑い合う。
仲良しだ。
帰りにコンビニへと立ち寄り、嫌と言うほどガリガリ君を購入して帰宅した。
車庫の冷蔵庫にガリガリ君を仕舞うため、隙間を通って車庫の裏側へと回り込む。
「……ん?」
庭と言えなくもないスペースに、大きめの枯れ葉が落ちていることに気が付いた。
枯れ葉。
まだ八月なのに?
そんなことを考えていると、うにゅほも枯れ葉に気が付いたらしい。
「?」
とててと近寄り、
「んぎゃ!」
悲鳴を上げた。
「どうした!」
うにゅほが俺の背後へと回り込む。
「が!」
「蛾!?」
あれが蛾だとしたら、片羽だけで10cmはあるぞ。
「……サッと片付けて、速攻で家入ろう」
「うん……!」
慌てながらも車庫の冷蔵庫にガリガリ君を押し込み、蛾のほうを見ないようにして家に入る。
「ふー」
「クッソでかかったな……」
「びっくし」
「俺も」
あんなでかい蛾、北海道にいるんだ。
そのわりに初めて見たのが不思議である。





599 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:23:35 ID:mZ3ievxU0

2025年8月28日(木)

昨日の蛾の正体がわかった。
クスサン。
今、北海道で大量発生しているのだそうだ。
「うー……」
うにゅほが不機嫌そうに唸る。
「てれびで、あっぷに、しないでほしい……」
「わかる」
それも、夕食時に。
マジで何を考えているんだ。
「……てことは、うちの近くでも発生はしてるんだな。一匹はいたんだし」
「うええ」
「俺だって嫌だよ……」
小さい蛾だって勘弁なのだ。
大きい蛾がうようよいようものなら、家から出られるはずもない。
「でも、敵のことは知らないとな」
「しらべるの?」
「調べたい、けど……」
Googleでクスサンについて調べたら、絶対に画像が表示される。
絶対にだ。
それが、たまらなく嫌だった。
「──よし、ChatGPTに頼もう。あれなら画像を見ずに情報収集できるはず」
「おー!」
タブに出しっぱなしのChatGPTを開き、クスサンについてGPT-5に尋ねる。
結果はすぐに出た。
「わ!」
「……GPT、お前もか」
親切のつもりなのだろう。
しっかりと、クスサンの画像が貼られていた。
無言で新しいチャットを開き、改めて指示を送る。
"現在、北海道で大量発生しているクスサンという蛾について調べてください。ただし、私は虫が苦手なので、画像は表示しないでください"
エンターキーを叩くと、クスサンの情報がずらりと列挙された。
「こういうの、できるんだ」
「便利だろ」
「べんり!」
クスサンは大型の蛾で、羽を広げると10cm以上にもなる。
昨日、俺とうにゅほが見たでかい蛾は、クスサンで間違いなさそうだ。
「またでるかな……」
「二度と会いたくない」
「わたしも」
本気で勘弁なのだった。





600 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:23:52 ID:mZ3ievxU0

2025年8月29日(金)

配達遅延していた炭酸水二箱が、ようやく届いた。
ヒイコラとダンボール箱を自室に運び込み、炭酸水を冷蔵庫に詰めていく。
「おそかったねー……」
「本来、日曜日に届くはずだったものだからな。五日遅れだ」
「こまる」
「本当にそう」
二日ほど水を飲んでやり過ごしたが、やはり炭酸水が恋しかった。
あふ、とあくびが漏れる。
「ねむい?」
「なーんか、えらい眠いんだよな……」
「ねてる?」
「……寝てる」
一瞬の沈黙を見破られたのか、うにゅほが俺のiPhoneを手に取る。
画面を俺の顔に突きつけることでFaceIDを突破し、問答無用で睡眠管理アプリを開いた。
「よじかん!」
「あ、はい……」
「ねてない!」
「最低限は……」
「さいていげんは、ろくじかん!」
「はい……」
うにゅほが、俺の手を引いていく。
「ねましょう」
「はい」
「わたしも、おひるねのじかんだから」
遅寝早起きのうにゅほは、昼寝で睡眠時間を稼いでいる。
俺は、自分のベッドに潜り込み、CPAPを装着して目を閉じた。
気絶するように意識を失い、気付けば二時間ほどが経過していた。
「おはよー」
「おはよう……」
先に起きていたうにゅほが、自室の書斎側からこちらを覗き込む。
「××、いつ起きた?」
「さんじっぷんくらいまえだよ」
「そっか」
書斎側へ向かい、うにゅほのiPhoneを手に取る。
そして、当然のように知っているパスコードを入力し、睡眠管理アプリを開いた。
「昼寝と合わせて五時間じゃん……」
「……うへー」
「はい、まだ寝る」
「ねむくない……」
「寝る」
「はい……」
どうにも睡眠時間が短くなりがちなふたりだった。





601 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:24:11 ID:mZ3ievxU0

2025年8月30日(土)

ガリガリ君コーラ味を食べていて気が付いた。
「お、当たりだ」
「みしてみして」
「ほい」
うにゅほに、アイスがまだ残っている当たり棒を差し出す。
しゃくっ。
ひとくち食べられた。
「コラ」
「うへー……」
「コーラだけに」
「こら」
「……言って後悔した」
「おもしろいよ?」
「慰めるな!」
「えー」
適当な会話を交わしながら、ガリガリ君を食べ終える。
「んじゃ、洗ってくるか」
「わたし、あらってくるね」
当たり棒を奪い去り、うにゅほがてててと部屋を出て行く。
それくらい、自分でやるのにな。
そんなことを思っていると、うにゅほが戻ってきた。
「ただいまー」
「おかえり、さんきゅー」
「あとよんほん、だね」
「当たりが出たらもう一本、じゃなくて、ある程度まとめて何かと交換する銀のエンゼル方式にしてくれたらいいのにな」
「そのほう、うれしい」
実際、交換する人のほうが明確に少数派なのだろうし。
十本当てたらガリガリ君のアイスの形をしたクッションなんてどうだろう。
赤城乳業さん、どすか。
「あと四本で、ようやく夏も終わるのかもしれないな」
「くがつも、まだ、なつ?」
「まだ夏だろ」
「そか!」
すこしずつ夏が遠ざかっていく。
この時期は、いつも切ない。





602 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:24:35 ID:mZ3ievxU0

2025年8月31日(日)

「八月が終わるうー……」
ごろんごろん。
ベッドの上で転がる。
「くがつ、なるねえ」
「××、知ってるか。九月になると、あと四ヶ月で2025年が終わるんだぞ」
「はやい」
「早い。一年が早すぎる。このままじゃすぐ死ぬ」
「しなないで……」
「体感の問題だ、体感の」
どちらにせよ、あまり長生きできる気はしていないけれど。
「夏が終わる前に、するべきことはしないとな」
「がりがりくん?」
「最初は絶対無理な目標だと思ってたけど、案外行けそうだもんな。達成できるもんなら達成したい」
「わかる」
「××は、何かあるか?」
「んー」
うにゅほが小首をかしげる。
「……んー……?」
そのまま、首の角度が大きくなっていく。
「ないー……、かも」
「ないんかい」
「おもいつかない……」
「猛暑日が来たら、部屋が何℃まで暑くなるか試せたんだけどな」
「あ、それ」
「九月に入ったら、さすがにもうないだろ」
「ざんねん……」
「また来年だな。覚えてたら。あと、来年も猛暑だったら」
「ことし、あちかったねえ」
「七月が暑すぎて、本来暑いはずの真夏日が涼しく感じたけど」
「ほんしゅう、すごかった」
「ニュースで見てるだけだと、毎日猛暑日の印象があったな。実際は各地でバラバラなんだろうけどさ」
「まいにち、もうしょびだったら、しぬ」
「死ぬなあ……」
慣れるものなのだろうか。
「あきも、たのしみ」
「秋が来たら、そろそろエアコンともおさらばか」
「あと、たんじょうび……」
「大丈夫、忘れないよ」
「うへ」
うにゅほの誕生日は10月15日だ。
誕生日プレゼント、早めに買っておかないとな。






603 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/09/01(月) 20:25:17 ID:mZ3ievxU0

以上、十三年九ヶ月め 後半でした

引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
 



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