以下の内容はhttp://blog.livedoor.jp/coleblog/archives/52205077.htmlより取得しました。

- 1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0
- うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます
- ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/
- 554 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:07:47 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月16日(水)
- 皮膚科へ行く予定だった。
- と言うのも、しばらく前から、両足の甲に斑点のようなものが浮かび上がっていたからだ。
- 午前八時に起床し、身支度を整える。
- 「ひふか、なんじからかな」
- 「たぶん九時とかじゃないか?」
- 「しんさつけん、どこ?」
- 「財布の中」
- うにゅほが俺の財布を調べ、皮膚科の診察券を取り出す。
- 「あ」
- 「どした?」
- 「すいよう、やすみ……」
- 「──…………」
- 着たばかりのシャツを脱ぎ捨てる。
- 「寝る……」
- 「おやすみー」
- そのまま就寝し、起きたときには正午だった。
- 「……──ふぁ、っふ」
- 「あくびー」
- 「眠い」
- 「かおあらお」
- 「はい」
- 素直に洗面台へと向かい、顔を洗って自室に戻る。
- 「おはよ」
- 「おはよう」
- 「よくねた?」
- 「まあまあ……」
- 「すわって、すわって」
- うにゅほに導かれるまま、パソコンチェアに腰を下ろす。
- 「よいしょ」
- 俺の膝に腰掛けたうにゅほが、PCのマウスを握った。
- 「いっしょにみよ」
- 「何を見るんだ?」
- 「まりおかーとのどうが」
- 「××、なんか好きだよな。Switch2とマリカワールド、欲しい?」
- 「べつに……」
- いらんのかい。
- うにゅほ歴十三年の大ベテランの俺にはわかる。
- この子、本当にさして欲しくない。
- 「動画で満足するタイプなのか……」
- 「みるのすき」
- 「まあ、わかるけど」
- Switch2は気になるが、特にプレイしたいソフトもないため、買うとしてもかなり後のことになるだろう。
- 転売ヤーのせいで高騰していなければいいのだが。
- 555 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:08:14 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月17日(木)
- 午前八時に起床し、あくび混じりに身支度を整える。
- 「ねっむ……」
- 「◯◯、おきるのはやかったね」
- 「なんか起きちゃった……」
- 皮膚科の診療時間は午前九時半からだ。
- 受付が早めに開くことを鑑みても、八時半に起きれば余裕だったのだが、目が覚めてしまったものは仕方がない。
- 「んー……」
- 軽く思案し、口を開く。
- 「早めに出るかあ」
- 「こんなに?」
- 「コンビニで朝メシ買おうかなって」
- 「あー」
- 「××は?」
- 「わたし、たべたよ」
- 「そっか」
- エアコンの修理を終えた愛車に乗り込み、皮膚科への道をひた走る。
- 途中、セブンイレブンで朝食をとり、無事に皮膚科に着いたのは午前八時四十分のことだった。
- 待合室を覗いたうにゅほが、俺にそっと話し掛ける。
- 「おきゃくさん、もういるね……」
- 「いるなあ……」
- さすがにまだ混み合ってこそいないが、待合室の席の半分ほどがもう埋まっていた。
- 病院は数多あれど、何故皮膚科はここまで盛況なのだろう。
- 謎だった。
- そのまま一時間以上待たされて、ようやく順番が回ってくる。
- ほんの五分で診察を終えて、俺とうにゅほは待合室へと戻ってきた。
- 「慢性色素性紫斑かあ……」
- 見た目が悪くなる以外、特に症状のない病気だ。
- 「ひどくなくて、よかったね」
- 「まあな」
- ただ、足の甲にできた紫色の斑点は、基本的に治ることがないらしい。
- 薬で色を薄くすることはできるが、完治ではない上に継続的に飲む必要があるらしく、何度も皮膚科に通いたくない俺としては不要な治療だった。
- 「帰るかー……」
- 「うん」
- 病院を出て、愛車の元へと向かう。
- 日向を歩いた瞬間、強烈な陽射しが俺たちに襲い掛かった。
- 「あッ、……づ!」
- 「あついー!」
- 取り急ぎ愛車に乗り込み、慌ててエンジンを掛ける。
- 七月も後半へと差し掛かり、本格的な夏が到来したようだ。
- ガリガリ君の消費量が激しくなる予感がするのだった。
- 556 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:08:36 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月18日(金)
- 所用のため、市役所の関連施設へと赴いた。
- 珍しく混んでおり、玄関前の駐車場が軒並み埋まっていたため、すこし離れた場所に駐車した。
- 「××、走るぞ!」
- 「うん!」
- 降りしきる雨の中を、傘を差さずに駆け抜ける。
- 後部座席を探せば傘くらい見つかりそうなものだが、そのときは頭から抜けていた。
- 「ふー……」
- 「どんくらい濡れた?」
- 「すこしかなあ」
- 髪を濡らした雨水を手で払いながら、うにゅほがそう答えた。
- 安心する。
- この程度ならば、風邪を引くこともないだろう。
- ふたりで窓口へと向かい、手続きを済ませる。
- 職員が書類をコピーするために席を外した際、うにゅほが備え付けの老眼鏡を手に取った。
- 「ろうがんきょう」
- 「ああ」
- 「◯◯、かけてみて」
- 「ええ……」
- なんだか恥ずかしい。
- それに、もしも早めに老眼が来ていたら、ショックだ。
- 「かけてかけて」
- うにゅほが、手にした老眼鏡を俺の顔に近付けてくるので、仕方なくそれを受け入れた。
- 「──…………」
- よかった。
- ちゃんと見えにくい。
- 老眼ではなさそうだった。
- 「みえる?」
- 「見えない。××の顔もぼやけてる」
- 「ふうん……」
- 俺の老眼鏡を外し、今度は自分で装着する。
- 「わ」
- 「見えないだろ」
- 「◯◯のめがね、かけたときみたい」
- 「懐かしいな……」
- 俺は重度の近眼である。
- 眼鏡を掛けずにいられているのは、ICL手術のおかげだ。
- だが、いずれは老眼鏡の世話になる日が来るのだろう。
- 嫌だなあ。
- もう二度と眼鏡なんて掛けたくない。
- 「?」
- そんな気持ちが顔に出ていたのか、うにゅほが小首をかしげてみせた。
- 視力いい子ちゃんめ。
- 557 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:08:51 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月19日(土)
- 「──◯◯、◯◯!」
- 「お」
- 「きて!」
- 部屋へ戻ってくるなり、うにゅほが俺の手を引いた。
- 「なんだなんだ」
- 「うへー」
- そのまま連れ込まれたのは、両親の寝室だった。
- 「みて!」
- うにゅほが窓の外を指差す。
- 眼下の公園では、明日の夏祭りの準備が行われていた。
- 「あした、おまつりやる!」
- 「よかった……」
- 思わず胸を撫で下ろす。
- 夏祭りの予定は二週間ほど前に知らされていたが、天気予報で雨だ雨だとさんざん言われていたからだ。
- 俺も、うにゅほも、この町内会の小さなお祭りを、本当に楽しみにしている。
- だから、準備が粛々と進められている様子を見て、思わず安堵したのだった。
- 「たのしみ……」
- 「だな」
- べつに、夏祭りに参加するわけではない。
- 買うとしても焼き鳥程度で、それ以外は家にいながらにして祭りの空気を楽しむだけだ。
- だが、それがいい。
- それでいい。
- 俺たちが楽しんでいるのだから、誰にも文句は言わせない。
- 「××、浴衣は?」
- 「きるよー」
- 「よし」
- 「うへへ、たのしみ?」
- 「楽しみに決まってるだろ。××の浴衣姿なんて、年に一度しか見られないんだし……」
- 「わたしも!」
- 「そっか」
- 「◯◯は、さむえ?」
- 「作務衣だな。まあ、いつも通りだ」
- 「いっつもさむえだもんね」
- 「楽なんだよな……」
- ずっとパジャマ姿でいるよりは、まだ恰好がつくだろう。
- 「でも、あれくさ、だんぞくてきにあめっていってた」
- 「言ってたな。大丈夫なのかな」
- 「わかんないけど……」
- 断続的に雨。
- どの程度の雨足かはわからないが、小雨程度に治めてほしいところではある。
- 俺たちには、せいぜい祈ることしかできないのだった。
- 558 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:09:08 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月20日(日)
- 「──◯◯」
- 「んが」
- 優しい声で目を覚ます。
- 「おはよ」
- 「──…………」
- そこにいたのは、浴衣姿のうにゅほだった。
- くるりと回り、うへーと笑う。
- 「……にあう?」
- 「ああ、似合うよ。最高」
- 「ふふ」
- 浴衣の袖口で口元を隠し、うにゅほが微笑んだ。
- 普段と違う雰囲気に、なんだかどきどきする。
- 「けん、こうかんしにいこ」
- 我が家は公園の真ん前にあるため、焼き鳥やおでんなどの無料券を何枚かいただいている。
- ベッドを下り、時刻を確認すると、まだ正午を迎えていなかった。
- 「祭りの開始って、十二時じゃなかったか?」
- 「こうかん、もうしてるよ」
- 「そうなんだ」
- 慌てて身支度を整え、家を出る。
- 「あッッッ!」
- 暑い。
- あまりにも、暑い。
- 今年いちばんの暑さではあるまいか。
- 断続的に雨という予報であったにも関わらず、中天には太陽が輝いていた。
- 「はちーねえ……」
- 「さっさと交換して、戻ろう」
- 「うん」
- 逃げ場のない猛暑。
- 鳥串豚串を焼き続けている町内会の人に心の中で敬礼しながら、無料券を交換し自宅に戻る。
- 「部屋戻るぞ!」
- 「うん!」
- 駆け足で自室へ戻ると、エアコンで冷え切った空気が俺たちを出迎えてくれた。
- 「はー……」
- 「ふぶふぃー……」
- 「みんな、よく外にいられるな!」
- 「すごい」
- 俺たちにとっての夏祭りとは、自室でのんびり雰囲気だけを楽しむものだ。
- 交換してきた豚串を頬張りながら、そっと耳を澄ます。
- がやがやとした人混みの音。
- 明らかに音質の悪い、適当なBGM。
- 「祭りだなあ……」
- 「うん!」
- 俺も、うにゅほも、この空気がたまらなく好きなのだった。
- その後、幾度か公園に下りては、さほど美味しくもない食べ物を仕入れ自室で楽しんだ。
- 日が沈み、人々が解散したころ、うにゅほが言った。
- 「またらいねん、だね」
- 「楽しみだな」
- 「うへー……」
- 来年も、なんだかんだと晴れてくれればいいのだが。
- 559 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:09:27 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月21日(月)
- 「◯◯、とどいたー」
- 「おー!」
- うにゅほから包みを受け取り、開封する。
- Vulcan II TKL Proの箱が、そこにあった。
- 「これ、あたらしいきーぼーど?」
- 「そうそう。やーっと届いたか……」
- 購入してから届くまでに、実に一週間も待たされてしまった。
- 箱を開き、本体を取り出すと、うにゅほが目を輝かせた。
- 「わ、なんかきれい!」
- 「デザインいいだろ」
- 「うん!」
- 高級感のある金属製のボディに、白いキーキャップが映える。
- REALFORCE GX1の代わりにVulcan II TKL Proを置くと、シックにまとめたデスクの上で多少浮くほど美しかった。
- 「これ、ひかるの?」
- 「光る光る。いま繋げるから」
- USBハブにコードを繋いだ瞬間、Vulcan II TKL Proが虹色に輝き始めた。
- 「おー……」
- 「うーん、ゲーミング」
- ごく個人的には、虹色に光る必要はない。
- だが、部屋を暗くしていてもキーが打てるという利便性は無視できないだろう。
- 「きれいだねえ」
- 「綺麗だけど、重要なのはそこじゃない。打鍵感だ」
- 「うちやすいかな」
- 「どうかな」
- 適当にメモ帳を新規で開き、うにゅほの本名をタイピングする。
- 「どう?」
- 「……ん?」
- すこし引っ掛かる部分があった。
- 「だめ?」
- 「打鍵感自体は、まあ、悪くない。Keychronほどじゃないけど許容範囲。ただ──」
- 「ただ」
- 「このキーキャップ、カドが尖り過ぎてる。指が引っ掛かると痛い」
- 「そんなことあるんだ……」
- 「××、適当にキー押してみ」
- 「?」
- うにゅほがエンターキーに指を置く。
- 改行を続けるメモ帳を無視し、俺は、うにゅほの指を取って左下へと滑らせた。
- 「た!」
- 「こうなるんだよ……」
- 「なるほど……」
- このキーボードは、デザイン性を高めるために、薄いキーキャップを採用している。
- その薄さがあだとなり、タイプ後すこしでも指を滑らせると、隣のキーキャップのカドが指の腹に突き刺さるのだ。
- 「これ、作ってて気付かなかったのかな。わりと致命的だと思うんだけど」
- Vulcan II TKL Proを紹介していたガジェット系YouTuberも、この点については何も言及していなかった。
- 「へんぴんする……?」
- 「……あー」
- どうしようか。
- こちらが慣れれば指が引っ掛かることも少なくはなると思うが、それはそれでどうなのだろう。
- 「キーキャップ、交換してみるか」
- 「こうかんできるの?」
- 「いちおう、できるらしい。三千円くらいで売ってたし、試してみるのもアリだろ」
- 「おかね、どんどんへる」
- 「TURTLE BEACHに言ってくれ……」
- まさか、こんな落とし穴が待っているとは思わなかった。
- テンキーレスサイズのKeychronが欲しい。
- 思わずそんなことを願うのだった。
- 560 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:09:52 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月22日(火)
- 今日は、月に一度の定期受診の日だった。
- 早めに家を出て、早めに診察を終えることには成功したのだが──
- 「……もう、三十分は経ってるぞ」
- 「そだねー……」
- 病院ではなく、薬局がすこぶる混んでいた。
- どれほど混んでいるかと言えば、この真夏日の最中、外で待たざるを得ない人がいるくらいだ。
- 俺たちもそのたぐいなのだが、エアコンの効いた車内にいるので、まだましである。
- 「今日、なんでこんなに混んでるんだろ」
- 「びょういん、こんでたっけ」
- 「混んではいたけど、ここまでは。この人たち、どっから湧いたんだ……」
- 謎である。
- 車内で三十分以上待ち、受付で薬を受け取ったあと、俺たちは帰途についた。
- 「今日すごいな。洒落にならないくらい暑い」
- 「あした、もっとすごいよ……」
- 「マジで」
- 「よんじゅうどのとこ、あるって」
- 「……北海道で?」
- 「ほっかいどうで」
- 「うへえ……」
- 酷暑日なんて概念は、北海道とは縁遠いものだと思っていた。
- 「ガリガリ君買って帰るか……」
- 「わたし、はんぶんだすね」
- 「さんきゅー」
- セイコーマートへと立ち寄り、ガリガリ君のソーダ味、コーラ味、そしてBLACKアイスを、それぞれ十本ずつ購入した。
- 帰宅し、アイスでパンパンの袋を車庫の冷凍庫に突っ込んだあと、ガリガリ君を一本ずつ携えて自室に戻る。
- 「あちー」
- 「えあこん、えあこん」
- うにゅほがエアコンの電源を入れる。
- しばらくすれば、サーキュレーターによって掻き混ぜられた冷風が、書斎側にも届くだろう。
- ガリガリ君コーラ味の包装を解き、囓りつく。
- 口内に広がる酸味と甘さ、そして冷たさがたまらない。
- 「うめえー……」
- 「ほいひー……」
- しゃくしゃくとソーダ味を囓りながら、うにゅほが頷く。
- やはり、猛暑にはガリガリ君なのだ。
- ガツンとみかんも美味しいのだが、コストパフォーマンスの面から見てガリガリ君の圧勝である。
- 「──あ、当たった」
- 「え!」
- 「ほら」
- 「ほんとだ……」
- 「幸先いいなあ」
- 「こうかん、する?」
- 「しないよ。××、いるか?」
- 「いる!」
- うにゅほに当たり棒を渡す。
- 恐らく、しっかりと洗ったあと、うにゅ箱に仕舞い込むのだろう。
- 宝物としては少々子供っぽいが、コンビニで交換するのも恥ずかしいし、捨てるのももったいないので、当たり棒の行き場としてはちょうどいいのかもしれない。
- 561 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:10:12 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月23日(水)
- 新しいスリッパがAmazonから届いた。
- 歩くたびに何かが落ちるような死んだスリッパを、今の今まで履き続けてきたからだ。
- 「でか!」
- 包装を開封したうにゅほが、自分の顔とスリッパを比べる。
- 「どっちでかい?」
- 「スリッパのがでかい」
- 「えっくす、えっくす、える、だって」
- 「そんくらいじゃないと入らないんだよな……」
- 「◯◯、あしでかい」
- 「無駄にな」
- うにゅほからスリッパを受け取り、観察する。
- 足の裏との接地面に、細長いハニカム構造のような層がある。
- 恐らく、足が蒸れないようになっているのだろう。
- 「ね、はいて!」
- 「はいはい」
- スリッパを履き、立ち上がる。
- 「どう?」
- 「んー……」
- 「はきごこち、いい?」
- 「……ちょっと悪い」
- 「わるいんかい」
- 「蒸れないのはいいけど、肌触りが悪いな。痛いってほどではないけど……」
- 「そなんだ……」
- 「まあ、慣れかな」
- 「なれる?」
- 「慣れる慣れる。どうせ、またスリッパが死ぬまで履くんだし」
- 「わたしのすりっぱ、まだいきてる」
- 「たしか、同じタイミングで買ったよな」
- 「うん」
- 「体重の差かなあ……」
- 俺とうにゅほとでは、体重に二倍以上もの差がある。
- スリッパの寿命が異なるのも、むべなるかなといったところだ。
- 「しんだすりっぱ、すてる?」
- 「捨てるだろ。再利用の方法もないし」
- 「そだね……」
- 物を大事にしようという心根は立派だが、それが高じるとゴミ屋敷になってしまう。
- うにゅほもそれをわかっている。
- だからこそ、スリッパを捨てることに消極的同意をしているのだ。
- とてもえらいのだった。
- 562 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:10:33 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月24日(木)
- 今日は、大学病院の受診日だった。
- 午前七時過ぎには家を出て、途中ファミマで朝食をとると、朝のラッシュアワーに巻き込まれた。
- 「やべ、悠長に食べてる暇なかったかも」
- 「すーごいこんでる……」
- 午前八時には採血をしなければならないのに、ようやく駐車場に辿り着く頃には、既に八時十分を過ぎていた。
- 「◯◯、いそご!」
- 「いいよ、べつに。そこまで急がんでも」
- 「えー……?」
- 「だって、診察は九時だし、実際はそこから三十分は待たされるんだ。早く採血したって無駄無駄」
- 「そだけど」
- 「十五分程度遅れたって、誰にも迷惑かからないよ」
- 「そかな」
- 「そうだよ」
- 「ならいいか……」
- 走る体勢に入っていたうにゅほが、俺の隣を歩き出す。
- 「……しかし、戻ってきたときヤバそうだな」
- 「あー」
- 俺が愛車を振り返って呟くと、うにゅほにも意図が伝わったようだった。
- 今日の予想最高気温は35℃。
- 猛暑日になる予定である。
- だだっ広い駐車場に日陰は数えるほどしかないし、解放される時刻次第では、俺たちは車内で蒸し焼きになる。
- 「はやくおわったらいいね」
- 「マジでな……」
- 採血をし、診察を終え、薬局へ寄り、すべてから解放されたのは午前十時のことだった。
- 「よかった、早めに終わったな」
- 「ねー」
- 直射日光は厳しいが、まだまだピークを迎えてはいない。
- 今のうちにサッと帰宅してしまおう。
- そんなことを考えながら、愛車に乗り込む。
- ──ムワッ!
- 「あッッッ」
- 「あっつい!」
- 車内がサウナになっていた。
- 「エンジン、エアコン!」
- 「かけてー!」
- エンジンを掛け、エアコンを最大にし、慌てて車を降りる。
- 「とんでもねえ……」
- 「すごかった……」
- 「……これ、午後だとどうなってたんだ?」
- 「くるまのどっか、とけるかも」
- 「あり得そうで怖い」
- 五分ほどしてから愛車に乗り込むと、快適な温度になっていた。
- 今年の夏は、すごい。
- 俺は改めてそう思うのだった。
- 563 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:10:51 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月25日(金)
- キーキャップが届いたのだった。
- うにゅほが包みを我が物顔で開封していく。
- 「わ、たーくさん!」
- 「わりと高級感あるな」
- 今回購入したのは、Keychronの交換用キーキャップである。
- PBT素材でできているため、文字が消えることも、表面がツルツルになることもないだろう。
- 「──さて、交換してくか」
- 「わたし、ぬいていい?」
- 「いいぞ」
- 「やた!」
- うにゅほにキープラーを渡す。
- キーキャップをひとつひとつ抜き取っていくのは、地味に手間だしストレスだ。
- それを楽しんでやってくれるのだから、とてもありがたい。
- 「でーきた」
- 「さんきゅーな」
- 「うへー」
- うにゅほの頭を軽く撫で、今度は新しいキーキャップを嵌めていく。
- まずはエンターキーを取り付け、タンッとタイプしてみる。
- 「……お?」
- 「?」
- 次のキー、その次のキーと装着していき、疑念が確信へと変わる。
- 「××」
- 「はい」
- 「このキーキャップ、めっちゃいい。打ち心地が一段階上がった感じ」
- 「おおー!」
- ぱちぱちと、うにゅほが拍手を送ってくれる。
- 「やっぱ、Keychron製ってのがいいのかな。K2 HEも打ち心地はすこぶるよかったし、普通のキーキャップだと微妙だった可能性はある」
- 「きーくろん、すごい?」
- 「ああ、すごい。日本語配列さえしっかりしてくれたら、他のキーボードいらないかも……」
- 「そんなに」
- 「そんなに」
- 「かってほしい?」
- 「……誕生日?」
- 「うん」
- 「欲しい、なあ……」
- 「うんうん」
- うにゅほが満足げに頷く。
- 「でも、その前に××の誕生日だからな。プレゼント、決めてあるんだ」
- 「え、なに?」
- 「それは当日までの秘密」
- 「なんだろ……」
- 楽しんでくれているようで何よりだ。
- きっと、うにゅほなら喜んでくれるはずである。
- 564 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:11:13 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月26日(土)
- 「今日、わりと涼しいな」
- 「ねー」
- 窓の外を見やると、小雨が降っていた。
- 「雨のおかげか……」
- 「いままでが、おかしかった」
- 「その通り」
- 北海道全土がおかしかった。
- 猛暑日であればまだしも、酷暑日まで記録したのだ。
- 外気温40℃なんて、正直想像がつかない。
- 「本州はまだ暑いんだっけ」
- 「うん、あつい。あついとこ、あついよ」
- 「大変だなあ……」
- 「ねー」
- 所詮は他人事とばかりに頷き合い、エアコンの効いた自室でガリガリ君を頬張る。
- 至福の時だ。
- 「来週はどうなんだろう」
- 「うーと、たしか、そんなでもなかったきーする」
- 「どのくらい?」
- 「さんじゅういちどとか、にどとか」
- 「あー、そんくらいか」
- そう口にし、ふと気付く。
- 「……30℃超えたら真夏日だよな」
- 「うん」
- 「感覚麻痺してるな、俺たち」
- 「してる……」
- 最高気温が30℃を超えたら、暑い。
- そのはずなのに、とてもそうとは思えない。
- 酷暑が俺たちの感覚を破壊していったに違いない。
- 「──でも、考えてみれば、俺たちの部屋って五月六月くらいから30℃になってたよな」
- 「なってた」
- 「麻痺してるの、夏のせいじゃないわ。俺たちの部屋がおかしい」
- 「そだね……」
- 「猛暑日の日にエアコン切って出掛けたら、どうなるかな」
- 「……きになる」
- 「気になるよなあ!」
- 実験大好き俺とうにゅほである。
- 「もうしょびのとき、でかけてみる……?」
- 「出掛けてみるか……」
- 「うへー」
- と言うわけで、次の猛暑日にエアコンを切って出掛けることになってしまった。
- 室温がどれほど上がるのか、すこしわくわくしている自分がいるのだった。
- 565 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:11:41 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月27日(日)
- 「♪~」
- 俺の膝に腰掛けたうにゅほが、機嫌よくiPadをいじっている。
- Kindleで漫画を読んでいるようだった。
- 俺は俺で、ヘッドホンを着け、のんびりとYouTubeを眺めている。
- 至福の時間だ。
- 「……?」
- ふと足元に視線をやって、気が付いた。
- 何か小さなものが落ちている。
- 黒いし、ゴマか何かだろうか。
- ゴマにしては大きいような気もするが──
- 「悪い、××」
- 「?」
- うにゅほに謝り、右手を床に伸ばす。
- だが、届かない。
- うにゅほを膝に乗せた状態では、さすがに届かないようだった。
- 「どしたの?」
- 「ほら、ゴミ落ちてる」
- 「ほんとだ」
- あっさりと膝から下り、うにゅほがゴミを拾い上げた。
- 「それ、なんだ?」
- 「うと」
- うにゅほが目を細める。
- 「ぎゃ!」
- そして、慌ててゴミ箱に捨てた。
- 「むし!」
- 「マジで」
- キンチョールを手、ゴミ箱へと向かう。
- 「あ、だいじょぶ。しんでた……」
- 「死体か」
- 「うん」
- ふと、疑問が浮かぶ。
- 「……死ぬにしたって、こんなとこで死ぬか?」
- 自然死ならば餓死だと思うのだが、それならば部屋の片隅で死んでいそうなものだ。
- 「ふんづけたとか……」
- 「潰れてた?」
- 「わかんない」
- 「わかんないか」
- 俺も確認したくない。
- 「てーあらってくるー……」
- 「あいよ」
- まあ、死体でまだよかった。
- 殺す手間が省けた。
- そんなサイコパスのようなことを思うのだった。
- 566 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:12:04 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月28日(月)
- 今日は、所用で銀行へと赴いた。
- 番号札を取り、背もたれのない席へと腰掛ける。
- 「……こんでるね」
- 「混んでるな」
- 「なんばん?」
- 番号札をうにゅほに見せる。
- 117番だ。
- 「いま、ひゃくはちばん……」
- 「九人分は待たないと」
- 「ひえー」
- 待ち時間を潰すのは、病院で慣れている。
- うにゅほといれば苦ではない。
- だが、俺が通っている幾つかの病院とは、すこし空気が異なっていた。
- 待合室が狭いのだ。
- その上、混雑もしているものだから、利用客同士の物理的な距離が近く、いまいち会話がしにくい。
- 「──…………」
- 「──……」
- なんとなく無言で時間を過ごす。
- 「ひまだね……」
- 「ああ……」
- 何かないかとポケットを漁ると、ワイヤレスイヤホンが出てきた。
- こんなこともあろうかと、いちおう持ってきたものだ。
- 「音楽聴く?」
- 「あ、いいね」
- 「何がいい?」
- 「なにかなー……」
- 俺は右耳に、うにゅほは左耳にワイヤレスイヤホンを装着し、iPhoneでYouTube Musicを開く。
- そして、それをうにゅほに手渡した。
- 「好きなの流していいよ」
- 「ありがと」
- しばしの逡巡ののち、イヤホンから流れ出したのは、サカナクションのライトダンスだった。
- なかなかいい選曲だ。
- それを視線で伝えると、うにゅほがそっと微笑んだ。
- 三十分は余裕で待たされたが、やはり苦ではなかった。
- うにゅほといれば、時間はすぐに経つ。
- 567 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:12:22 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月29日(火)
- 「──よし、いらんもの売ろう!」
- 「おー」
- 膝の上のうにゅほが、ぱちぱちと拍手する。
- 「なにうるの?」
- 「サウンドバーとかいらんよなって」
- 「さうんどばーって、これ?」
- うにゅほが、メインディスプレイの下に設置されている横長のスピーカーをぽんぽんと叩く。
- 「正直、使わん」
- 「つかわんね……」
- 「音楽聴くかなって思って買ったんだけど、スピーカーで聴く機会もなかったし、なんならアレクサにお株を奪われた」
- 「あれくさはつかうね」
- 「言うだけで好きな曲かけてくれるの、便利が過ぎる」
- 「わかる」
- 「てなわけで、買ったはいいけどまったく使わなかったサウンドバーくんはボッシュートです」
- 「でも、これ、おっきいよ?」
- 「炭酸水のダンボール箱を組み合わせれば、なんとか」
- 「あ、いけるかも」
- 「他にもいろいろあって──」
- と、次々と候補を挙げていく。
- 「まだまだあるねー……」
- 「あと、漫画も売ろうかなって」
- 「まんがも?」
- 「買ったり貰ったりでいろいろあるけど、もう読まないし読む気もない漫画けっこうあるじゃん」
- 「もったいないきーするけど……」
- 「××、いったん立って」
- 「はい」
- うにゅほを膝から下ろし、本棚の前に立つ。
- 「じゃあ、これ読む?」
- そう言って、とある青年漫画を一冊手に取った。
- 具体的な名前は伏せる。
- 「……よまない」
- 「読まないよなあ」
- 「そういうの、うるの?」
- 「そういうこと。まあ、本棚の棚卸しみたいなもんだよ」
- 「そか」
- うにゅほが頷く。
- 売る本に関しては、うにゅほの同意が取れたものに限ることにした。
- 駿河屋に見積もりを依頼したが、さて、いくらになることやら。
- 568 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:12:38 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月30日(水)
- 今日もまた、のんびりとした日々を過ごしていた。
- 膝の上のうにゅほと、なんてことのない会話を楽しむ。
- 「サボテン水やった?」
- 「まだー」
- 「半月に一度だから、明日くらいかな」
- 「やりすぎ、だめだからね」
- 「根腐れするって言うからなあ」
- 「くさらないでほしい……」
- 「それはそう」
- あのバニーカクタスは、うにゅほの宝物だ。
- 是非、末永く、元気でいてほしい。
- 「そう言えば、たまに虫入ってるのってさあ」
- 「うん?」
- 「やっぱ、エアコンから入ってきてるのかな。室外機からさ」
- 「ほかにないもんね……」
- 「網はあるんだろうけど、小さい虫なら遮れないし」
- 「ちいちゃいのなら、まだ──」
- その瞬間、俺たちの視界を横切るものがあった。
- 「!」
- 「やべ、キンチョール!」
- 「はい!」
- 即座に膝から下りたうにゅほが、俺にキンチョールを手渡してくれる。
- 敵は羽虫だ。
- 親指の爪くらいの大きさで、決して脅威ではないのだが、安全圏である自室に出くさったことは万死に値する。
- 「おらッ!」
- ぷしゅーッ!
- 飛んでいる羽虫にキンチョールの一撃を浴びせる。
- その瞬間、羽虫の高度が一気に下がった。
- しかし、まだ飛んでいる。
- 「がんばって!」
- 「ああ!」
- うにゅほの声援に後押しされ、ついにフローリングに落下した羽虫に、嫌と言うほどキンチョールをぶっかける。
- やがて羽虫は動かなくなった。
- 「勝利!」
- 「やた!」
- うにゅほが俺に抱き着く。
- それを抱き上げ、くるりと回ったあと、ティッシュで羽虫の死骸を包んで捨てた。
- さようなら、羽虫。
- 二度と生まれ変わってくるんじゃねえぞ。
- 569 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:13:00 ID:dbl3plnQ0
- 2025年7月31日(木)
- 駿河屋から見積もりが届いた。
- 「おお、六万……」
- 「わ」
- 「そこそこの収入になるな」
- 「すごいね!」
- さて、駿河屋に物を送りつけるとなれば、必要となるのは梱包である。
- 「サウンドバーとヘッドホンは、炭酸水のダン箱を二箱繋げるとして──」
- 軽く試算してみる。
- 「まあ、三箱もあれば入るか」
- 「え、はいる?」
- 「入らない?」
- 「はいんないきーする……」
- 「マジか」
- ともあれ、試してみないことには始まらない。
- 「まず、ぶりーち、いれてみよ」
- 「ああ」
- 既に読み通したBLEACH全74巻を、余った炭酸水のダンボール箱に詰めていく。
- 「──あ、これBLEACHしか入んねえ!」
- 「でしょ」
- どうやら、かなり甘めに見積もっていたらしい。
- 「どうする? 備蓄の炭酸水全部空けて、もう一箱作る?」
- 「するしかないきーする」
- 「そうだな。それ以外だと、明日スーパー行って箱もらってくるしか……」
- 「それでもいいけど……」
- 「めんどい」
- 「そかー」
- 十五本の炭酸水を部屋の隅に並べ、新たに一箱追加する。
- そして、売却する予定の本を次々と詰めていった。
- 途中で気付く。
- 「やべ……」
- 「はいんないね……」
- 「どうしよう」
- 「あした、スーパーいく?」
- 「いや、めんどい」
- 「そかー」
- 「まだ資源ゴミに出してないダンボール箱、車庫にないかな」
- いそいそと車庫へと向かい、探してみると、潰して平らになったダンボール箱が幾つか見つかった。
- 「よし、これを組み立てれば!」
- 「いけるかも」
- 布テープでダンボール箱を組み上げ、売却物を詰めていく。
- 「あ、やべ」
- 「もうひとはこ!」
- そして、最終的に、荷物は六箱に膨れ上がった。
- 「……俺、よく三箱で収まると思ったな」
- 「さんぱこはむりだとおもった……」
- 「正解」
- 「でも、ろっぱこになるとおもわなかった……」
- 「わかる」
- 物を売るのは大変だ。
- だが、これが六万円になるのなら、安いものである。
- 570 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/08/01(金) 04:13:47 ID:dbl3plnQ0
- 以上、十三年八ヶ月め 後半でした
- 引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
-
- タグ :
- うにゅほとの生活を書き連ねた日記
以上の内容はhttp://blog.livedoor.jp/coleblog/archives/52205077.htmlより取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます
不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14