RTL-SDR USBワンセグチューナーを使ったHF受信に関しまして、今までの記事をまとめてみました。
HFを受信するには、コンバーターを使う方法とRTL2832Uに搭載されているダイレクトサンプリングモード(direct sampling mode)を使う2つの手があります。
今回は、ダイレクトサンプリングモードを使用するためのUSBワンセグチューナーの改造方法をまとめてみます。
この改造は、インピーダンス50Ωの外部アンテナを使用するためのもので、ロングワイヤー等のHiインピーダンスアンテナを使用する場合は不要です。Hiインピーダンスアンテナを使用する場合は、I+またはQ+に接続してください、ノイズは覚悟です。

①回路図YU3MAさん公開の回路を使用します。
この回路図に間違いがあります。RTL2832UのQ+はピンNo4 Q-はピンNo5になります。ご注意ください!
ダイレクトサンプリング回路図
回路図を使用させていただきました。YU3MAさんに感謝申し上げます。
チューナーチップセットE4000 R820T FC1002 FC1003等は使用しません、壊れたドングル等を使用することで無駄なく使えます。

・ダイレクトサンプリングモードの最大の弱点は、感度です。チューナーチップを飛ばして直接電波を受信するのですからゲインなどありません・・・ですので、改造を行っても適当なアンテナでは受信できませんのでご注意ください、さっぱり受信しない・・・とおっしゃる方がいらっしゃいますが、ほとんどがHF用のアンテナを使用していないか、I branch/Q branchまたはI Input/Q Inputの設定に変更されていません・・・受信ソフトの設定を確認しましょう。次に、しっかりと受信するには、先に申し上げた通りHF用のアンテナが必要です。自作のマグネチックループアンテナ程度でも十分受信できます。欲を言えば本記事後半に出てくるLPF,BPFを使用することで受信性能が格段にUPします。これは極発の28.8MHzによるイメージ受信によるものを排除するものです。プリアンプ10~20dB程度を噛ませるとびっくりするほどの性能になります。お好みでどうぞ!では、本題へつづきます。

②準備するもの
USBワンセグチューナー(RTL2832U搭載のものに限る)
1μF 16Vタンタルコンデンサー(無しでも問題はありません)
FT37#43 フェライトコア
0.32ポリウレタン線(エナメル線)
2013/05/17追加情報:0.26mmポリウレタン線使用の方が感度が上がります。特にハイバンドに効果有り!
(小型のドングルに搭載する場合は、FT23#77でも感度は変わりません、最後に関連記事記載)
NEC_0420
③ポリウレタン線をよじります。
NEC_0421
④フェライトコアによじったポリウレタン線を巻き付けます。
5回巻き(5回巻きは、コアの内側を5回通すことです。外側は4回になります)
2013/02/12現在 コア10回巻を推奨!受信感度がUPします。
マッチングトランス10回巻FT37-43トリファイラ平行10回巻
RTL-SDR HFダイレクトサンプリング EzTV668にマッチングトランス10回巻搭載 感度良好!
RTL-SDR ダイレクトサンプリング マッチングトランスFT37-43トリファイラ並行10回巻で製作
を参照ください!
以降5回巻きで進めます。
NEC_0422
⑤よじった線をほぐします。
NEC_0423
⑥各線のペアを決めます。
NEC_0424
⑦ドングルに半田します。
左がチューナーチップ、右がRTL2832UとしてRTL2832Uの左上からC1 C2 C3 C4です。
C1がI+ C2がI- C3がQ+ C4がQ-となります。 (+がホット側 -がグランド側です。)
USBワンセグチューナー改造 C1~4
マッチングトランスの線の長さは、ドングルに合わせて調整しましょう。
各コンデンサーは、取り除いてください。後で元にもどすのであれば紛失に注意してください。
改造に使用したドングルはEzTV666です。改造内容は、EzTV666にマッチングトランスを内蔵することを前提にしています。ドングルに内蔵しない場合はポリウレタン線をしっかり固定してください、基板のパターンが弱いので、線が遊んでいると確実にパターンがはがれますのでご注意願います。
(今回自分のドングルで、何度も改造したためNo.1のランドを浮かせてしまいました。浮いたランドをカットしてパターンのレジストを削り半田しました・・・みなさんお気を付けください)

2013/05/03現在 カップリングコンデンサ接続で受信感度がUPします。
ダイレクトサンプリング感度UPの方法へおいでください!
Direct Sampling Coupling capacitor 詳細

USBコネクターの根本にタンタルコンデンサを適当な長さで半田します。このピンの基板部分は、スルーホールのため半田が基板の裏側に流れてしまう場合があります。短時間で半田しましょう。

画像には、RTL2832U用にヒートシンクが搭載されています。
LEDが眩しいので、半透明拡散キャップを被せています。(抵抗変えた方がいいかも、やっぱり眩しい)
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⑧お約束の放熱穴、放熱に貢献しています。
NEC_0426
⑨外したFT23#77のマッチングトランスを処分するにはもったいないので、実験用としてQ+、Q-につないでみました。
実際に受信してみましたが、FT37#43とFT23#77の受信感度はほとんど変化ありません、ドングル内部に搭載するのであればFT23-77の方が良いかもしれません、一応FT37#43を推奨しますが自己判断におまかせします。
Q+側をロングワイヤー用として使うのも有り!かもしれませんね、ノイズは覚悟ですが・・・
NEC_0427
⑩以前改造したFT23#77のマッチングトランスのみ搭載した時の画像です。
FT23#77のフェライトコアに0.18mmのポリウレタン線を巻いたもので、コアの巻き方は、トリファイラ巻きです。
中波、短波であればFT37#43と大差ありませんので、小型のドングルに搭載するのであればこちらをお勧めします。
NEC_0418

2013/10/14最新ダイレクトサンプリング改造の記事
TV28T v2 DVB-T USB Stick (R820T)チューナー/ダイレクトサンプリング搭載でオールバンド受信機完成!

コア内蔵

RTL-SDR/TV28T v2 DVB-T USB Stick (R820T)を0~30MHz受信専用に改造する(direct sampling mode/既製品のマッチングトランス使用で改造作業を簡略化)
IMG_0516

⑪受信してみましょう。
受信するためには、SDR#Sharp)を使用します。現時点でダイレクトサンプリングに対応しているのは、SDR#のみです。
(HDSDRも使用可能です。ExtIO_RTL.dllを組み込むことで使用可能になります)
SDR#は、最新版を使用してください。
以前のバージョンには、Direct samplingモードがありません!
通常の起動方法で起動させてください。(RTL-SDR/TCPは使用できません)
基本的に操作は同じですが、RTL-SDR Controllerの設定が変わります。
1,Sampling ModeをDirect sampling(I branch)を選択(Q側に回路を接続した場合は(Q branch)を選択します。
2,RTL AGCにチェック(高感度アンテナ、アクティブアンテナを使用している場合はチェックを外します)
3,Close
4,Startで受信開始!(出来るだけ高感度のアンテナが必要です)
RTL-SDR HF Controller
SDR#(Sharp)で中波放送を受信してみました。
アンテナは、ΔLoop9ですので、高感度です。(簡易LPF使用)
見ての通り9Hzステップでキャリアが並んでいます。大変良く聞こえます。ただ、1000KHz近辺でFMの不正受信がありますのでLPFは必須です。
ダイレクトサンプリング中波放送
⑫簡易ローパスフィルターを入れてみましょう。
実際に受信してみるとやはり混変調が・・・どうもFM局が被ってきます。
ちなみにFMの混変調ですが、1MHz近辺 4.6MHz近辺 24MHz近辺 27MHz近辺 29MHz近辺に出没します。特に困ったのが、1MHz近辺のもので、地元の中波局に完全に被ってしまって音声が出ません・・
(中波の周波数帯約2MHzが27MHz近辺と29MHz近辺に現れます。ラジオ日経も22MHz近辺 24MHz近辺に現れます。これは、イメージ受信のためで14.4MHzを中心に上下逆の周波数が受信できてしまうものです。残念ながらフィルターで対策する以外に改善する方法はありません・・・)

そして、被って来るFMの周波数は81MHzと85MHzです。中波に出現するのが85MHzで4.6と24MHzで出てくるのが81MHzです。(コメントに記載した内容と同じです
と、言うことで、個々ではこのFM局の被りを何とかしましょう。

JA5FNX田村OMよりご教授しただき、http://www17.plala.or.jp/i-lab/index.htmを紹介いただきました。
便利なページです。簡単に設計できます。
さて、手持ちのコンデンサーが150pFのチップだったので、周波数を30MHzして設計すると何とか150pFになりました。2段のLPFを作れそうです。
LPF 1段
上図は、http://www1.sphere.ne.jp/i-lab/ilab/tool/LPF_B.htmの画像を加工させていただきました。
さて、やっつけで空芯コイルを作ります。とりあえず出てきたLの値375nHを元に加工します。
手持ちの0.32ポリウレタン線を10回Φ4のドライバーにきっちり巻きます。(Φ3なら13回巻き)
始めに紙やすりで剥離しておかないと後々大変ですのでご注意を!(とにかく超簡易です。多少のことは気にしない・・・)
で、小さく切った基板に半田付けします。出来上がり!
NEC_0428
フィルターの設計は、http://www1.sphere.ne.jp/i-lab/ilab/tool/tool.htmのページでLPF、BPF、HPFを選択して指示に従い数値を入力すれば計算結果が表示されます。便利です。
フィルター設計
空芯コイルの設計は、http://shimaden.homelinux.net/~shimaden/software/CoilMaster/CoilMaster-006.zipをDLして解凍してください!CoilMasterを起動すればOK!直感的に使用できます。自分は、0.32mmのポリウレタン線を3mmまたは5mmのドライバーにまきつけて製作しています。ただし、5mmのコイルを作る場合は、巻いた後に戻ってしまい外形がかなり太くなります。外形6mmとして算出すると良いと思います。
注意:計算結果のインダクタンスの単位をnHにすることを忘れずに!
CoilMaste
実際にEzTV666 HF改に接続しSDR#で中波を受信してみるとぉ・・・
まずは、LPFなしです。センターに出ているのが、地元のAM局です。ここにFM局の電波が被っています。
受信すると完全に音割れして何がなんだかわかりません・・・
SDR# LPF前

LPF接続して同じ周波数を受信!見ての通り!ウォーターフォールを見れば一目瞭然ですね、余計なものをしっかり減衰させています。1段のLPFそれもやっつけで作ったのですが、効果があります。それに今まで占有していた部分が消えたためこの部分に存在した放送局も受信できるようになっています。
ただ、完全に消えたわけではありません、上の周波数に行くとやはり被っています。しかしかなり減衰しているので、今までよりも占有する幅が減少しています。特にこの画像の様に中波に関しましては、今まで放送内容が全く聞き取れなかったものが、しっかりと聞こえるように改善されました。ただ、中波の被りは、上の方に出てしまいます。短波中心ならBPFを使用しましょう。
LPFは、2段~3段程度使うと良い結果が出ると思いまので、時間を見つけて作ってみたいと思います。
SDR# LPF
以上が、USBワンセグチューナーのHF化改造のまとめです。
感度不足は、ご存じの通りですので、それなりのアンテナが必要になると思います。
2013/02/12現在 YU3MA氏よりマッチングトランス10回巻が有効との記事掲載されています。実際に検証してみましたが大変有効です。関連記事は次のリンク参照ください!

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2015/03/31
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