ミッコが11月18日にフィンランドのベンチャースタートアップ・イベント「SLUSH」で「R.I.P Internet」と題して講演した。この「SLUSH」はフィンランド首相のスピーチで幕を開けているが、起業家、投資家、パートナー企業、アーティスト、メディアが出会える場所になるのを画策していて、日本からも楽天の三木谷氏や孫泰三氏などが参加している。
http://highway.slush.org/speakers/

  この「SLUSH」での講演の中で、ミッコは3年前の「Google Zeitgeist」での講演から続く重要なアップデートを行っている。 

http://blog.f-secure.jp/archives/50738846.html 

  2011年に行われた「Google Zeitgeist」での講演では、ミッコは警戒すべきサイバー攻撃者として、サイバー犯罪者、ハクティヴィスト、国家の3つのベクトルを挙げていた。

http://blog.f-secure.jp/archives/50630539.html 

  「SLUSH」での講演の中では、それらに加え、実際のテロリスト集団が第4のベクトルとしてサイバー攻撃者となりつつある可能性を挙げた。ミッコが例として挙げたのは、2011~2012年に多数あったハクティヴィストによるハッキング事件を起こしたグループの内の「TeaMp0isoN」の Abu Hussain Al Britani についてだった。

  この「TeaMp0isoN」という名前には私も聞き覚えがあった。「TeaMp0isoN」が主に活動していたのは「LulzSec」の活動が活発だった時期で、彼らはその2011年当時「@TeaMp0isoN」のTwitterアカウントで活動していたため、私も活動をモニターしていたからだ。
http://hackmageddon.com/2012/05/17/may-2012-cyber-attacks-timeline-part-i/#more-7199

  しかし「@TeaMp0isoN」の動きは、レイシスト・ミソジニスト的な発言が多いためフェミニストグループなどと対立するなど、LulzSecやAnonymous系のアカウントとは違っていたのが特徴的だった。また「TeaMp0isoN」が攻撃を仕掛けていた一つが、イギリスの移民排斥などを主張する極右グループ「English Defence League (EDL)」だったことは、「TeaMp0isoN」のメンバーが移民なのか何らかの民族的なバックグラウンドがあることがうかがえた。
http://en.wikipedia.org/wiki/TeaMp0isoN

  「SLUSH」での講演でミッコは、「TeaMp0isoN」の首謀者「TriCk」は Abu Hussain Al Britani という男性で、逮捕され裁判で刑期も決まったところ何者かが保釈金を出しその後行方不明になっていたが、彼は今年シリアで「ISIS」に参加しているのが判明した事と、「ISIS」が多数のハッカーをリクルートしている事に触れた。(注: 自称「Islamic State」というテロリスト集団の名前はそれ自体がプロバガンダのため、私は訳さずに「ISIS」と呼ぶ事にしている)

  数万人規模と云われる「ISIS」には、中東・アフリカからだけでなくヨーロッパからも多数の志願参加者が出ている。「ISIS」はイスラムの名を使っているが実体は油田や銀行を戦略的に襲い斬首を常套的に行う残虐なカルト的集団に見える(これは日本でのオウム真理教が仏教の一派を装っていたが教義はかなり独特なものだった事に似ている)。また「ISIS」の参加者の中には、イスラム式礼拝の際にメッカの方向に向けて礼拝することを知らない者が混じっているのが観察されたりしている。このISIS志願者の流れの中にハッキング能力を持った者が含まれているということだ。
WaPoSyria
http://www.washingtonpost.com/world/foreign-fighters-flow-to-syria/2014/10/11/3d2549fa-5195-11e4-8c24-487e92bc997b_graphic.html